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PK戦にもつれる熱戦で両守護神が奮闘…初出場・桐横大が立命大下す:総理大臣杯

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[8.10 総理大臣杯準々決勝 桐蔭横浜大0-0(6PK5)立命館大 ヤンマースタジアム長居]

 第40回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントは10日に準々決勝を行い、桐蔭横浜大(関東1)と立命館大(関西3)が対戦。両者、譲らずPK戦までもつれた一戦は7人目のキックをGK田中雄大(3年=青森山田高)が阻止した桐蔭横浜大が勝利し、4強入りを手にした。

 激戦区・関東を首位で通過した実力派は伊達ではない。この日も2試合で6得点を奪った攻撃陣が力を発揮。前半13分には右サイドを破ったMF石川大地(3年=水戸啓明高)がゴール前に速いボールを展開し、観客を沸かせると直後の14分にもDF池田壮磨(3年=前橋育英高)の左クロスからFW鈴木国友(3年=相洋高)がヘディングシュートをお見舞いするなど、序盤から立命大ゴールに襲い掛かった。

 だが、「立ち上がりに点を獲っていれば、もうちょっと良かった」と八城修監督が振り返ったようにチャンスを決めきれずにいると、延長戦までもつれた2回戦・常葉大浜松戦の疲労もあり、攻撃陣の活動量が低下。加えて、「相手は後ろからFW目掛けて蹴るのが分かっていたので、攻守の切り替えやポゼッションで対抗して、カウンターをできない時間を作りたかった」(MF國分伸太郎)という立命大のボール回しに翻弄され、疲労の色合いが濃くなっていく。

 後半に入ってからも苦しい流れは変わらない。後半10分には自陣からのロングボールが前線に渡ると、鈴木がドリブルでDFをかわしフリーでシュートを狙ったが枠を捕えることができない。12分にはPA内でのボール回しをFW佐當慧(3年=清風高)に奪われるなど危ない場面も散見したことで、「昨年はあと一歩ってところで全国に行けなくて、悔しい想いをしていた。獲られるくらいなら、大きくクリアしちゃった方が良いのかなって繋げる場面でも全部蹴っちゃった上に、セカンドボールも拾えなかった」(DF佐々木俊輝)と攻撃の勢いを失ってしまう。

 それでも、「一回仕掛けた時に行けるなと思った」と後半になって頻度が増した佐々木のオーバーラップなどから見せ場を作ったが得点は奪えず、試合は延長戦へと突入した。

 延長戦に入ってからもう一度、攻撃の勢いを取り戻した桐蔭横浜大は延長後半7分に決定機が演出。ロングボールが前線に入ると、鈴木が強引な突破からPA左まで持ち込みシュートを狙ったが、GK白坂楓馬(2年=桐光学園高)に弾かれ、CKに。7分にはゴール前に入った右CKが石川の胸に当たり、ボールは立命大の不意を突く形でゴールに向かったが、またしても白坂の壁を破れずに勝負の行方はPK戦に委ねられることになった。

 これまでPKの練習はしてこなかったという桐蔭横浜大だが、佐々木が「予選も準決勝、決勝全てPKで勝ってきたり今年はまだPK戦で負けていない。今日も自信はあったので、負ける気がしなかった。PK戦に入った瞬間は正直、ホッとした」と振り返ったように動じる様子は見られない。両者1本ずつ失敗し、5人での決着はつかなかったが、先行・桐蔭横浜大の7番手MFイサカ・ゼイン(1年=桐光学園高)のキックがゴールネットを揺らすと、後攻・立命大FW佐々木宏太(3年=作陽高)のキックを田中が防ぎ、勝利を手にした。

 2回戦に続き、90分を超える激闘を制しての4強入り。「何もしていない私ですら疲れる」と八城監督が苦笑いしたように、ターンオーバーを採用してはいるものの、チームに疲労の色は隠せない。それでも、指揮官が「ホテル暮らしが続いたり、コンディションとしてはかなりハードだと思うけど、それが悪さではなくこの大会の良さであり、そこにトライしていくことで後期に向けての成長に繋がる。むしろ、僕らは全部18時キックオフなのは(他のチームより)有利だと思う」と続けるようにネガティブな要素ばかりではない。

 苦しい試合を物にすることで、チーム内に自信が生まれているのも確かだ。準決勝で対戦するのは「一番やりたくないチーム」(八城監督)である明治大。「素晴らしい選手が多いので大変な試合になると思う。耐える展開が続くと思うけど、苦手意識はない。胸を借りるつもりで、試合に挑みたい」と八城監督は話すように、次も苦しい試合をきっちり物にするつもりだ。

(取材・文 森田将義)
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