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広島入団内定の昌平高MF松本泰志、広島開催の高校総体に「運があった」

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広島加入が内定した昌平高MF松本泰志(中央)、左は昌平高の藤島監督、右は広島の足立強化部長

 巡って来た運をつかみ取った。J1広島への来季入団が内定した昌平高のMF松本泰志が3日、記者会見に臨み「少しでも早く試合に出られるように頑張りたい。将来は広島の顔、日本代表の顔となる選手になりたい」と意気込みを語った。昌平高サッカー部からは初のJリーガー誕生となる。藤島崇之監督は「プロの世界は、甘くない。厳しい現状を目の当たりにすることもあると思うが、確固たる自分を持っていることが大事。その資質は持っていると思う。高みを目指して頑張ってもらいたい」とエールを送った。

 松本は今夏、広島県で行われた全国高校総体で活躍。初出場のチームが4強入りする原動力となった。スカウトを担当した広島の村山哲也強化担当は「初めて見たのは、彼が1年生のときの全国高校選手権。昨年もプリンスリーグ関東の試合を見た時に得点を決めて印象に残っていたが、当時はまだ複数候補の一人だった。今年、高校総体の2、3回戦を見て、これはいけると確信した。大会が広島開催だったので、翌日からは強化部長にも見てもらい、大会を終えた翌日からは、うちの練習に参加してもらった」と地元・広島での活躍が獲得までのスムーズな流れにつながった背景を説明した。

 やや緊張した様子だった松本は、記者会見を終えると「広島開催で運がありましたね」と笑顔を見せた。松本は1年次からチームの主力として活躍していたが、昌平高は埼玉県の新鋭で2年前の高校選手権が初の全国大会出場。全国的には無名に近い存在だった。しかし、今年の全国高校総体では4強に進出しただけでなく、2回戦で連覇を狙っていた東福岡高を破って名を挙げた。広島の村山強化担当は「特に決め手になったのは、2回戦の東福岡高戦。高円宮杯U-18プレミアリーグWESTでうちのユースが対戦しているチームなので、力があるのは分かっている。その相手に対してどれくらいできるのかが分かり、確実な指標になった」と組み合わせの妙も獲得へ動く一つのきっかけになっていたことを認めた。

 しかし、運をつかみ取ったのは、松本の実力だ。高校総体で結果を残しただけではない。松本は総体後、すぐに広島の練習に参加。一度埼玉に戻ったが、再び広島に入り、8月14日に行われたJサテライトリーグ湘南戦に途中出場した。広島の足立修強化部長は「試合で見たかったので、もう一度来てもらったのだけど、途中出場でアシストをした。飄々としているが、プレーの選択は大胆不敵。度胸もあって面白い」と評価。松本はトータルで3週間近く広島の練習に参加したが、クラブが獲得に迷っていたわけではなかった。村山強化担当は「練習に長く参加してもらうのには、2つの理由がある。1つは、練習を経て成長する伸びしろがあるかどうかを見させてもらう。うちのトップの練習に高校生を入れると、理解が追いつかずに最初は練習の流れが変わったり、止まったりしてしまう。ある程度、仕方がないことだけど、それが改善されていくかどうか。ただ、松本君の場合は澱みがなかった。練習参加の期間が長いもう1つの理由は、うちの選手としての育成が始まっているということ。トップのサッカーを理解してもらい、来季のイメージをもってもらうため。だから長くなった」と高く評価したからこそ、可能な限りの練習参加を求めたことを明かした。

 サンフレッチェのお膝元である広島での全国大会出場、そして優勝候補との対戦。高校総体で2つの運をつかみ取ったが、まだ昌平高での松本の戦いは終わっていない。月末からは、全国高校選手権の埼玉県予選が始まる(3回戦から登場)。松本は「高校生活で掲げた日本一という目標をまだ達成できていないので、練習に励んでいきたい」と抱負を語った。プロ内定選手として見られることになり、注目度も緊張度も高まる中で、どんなプレーを見せるのか楽しみだ。

(取材・文 平野貴也)

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