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[早慶戦]鮮やかヒールでダメ押し弾!早稲田大DF井上純平が“仲間たちの希望”に

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井上が右足ヒールでダメ押しの5点目

[7.15 第68回早慶サッカー定期戦 早稲田大5-1慶應義塾大 等々力]

 自分のためだけでなく、『早慶戦』という68回目を数える伝統の舞台を目指す仲間たちを想ってプレーした。早稲田大のDF井上純平(3年=早稲田実高)は右足ヒールで鮮やかにゴールネットを揺らし、ダメ押しの5点目。大学3年目でようやく早慶戦のピッチへ立てたこともあり、その喜びはひとしおだった。

 早稲田実高出身の井上にとって、高校時代から早慶戦が「憧れの舞台」。過去の2012年、2014年と早慶戦でMVPに輝いた高校の先輩でもあるFW上形洋介(栃木)の活躍をみては、「いつか自分も」と胸高鳴らせていたという。

 しかし、大学1年時は運営補助へ回り、試合を見ることさえもできず。昨年はベンチ入りできずにスタンド観戦。それでも大学3年目で迎えたこの日、ようやく憧れの舞台に立つことになったのだ。

 1万3880人もの観客が入った等々力陸上競技場での一戦。「緊張しました」と苦笑するが「高校の先輩でもある上形くんがMVPを獲っていたのは憧れで、自分たちの希望でもあった。今度は自分がそういう存在になりたいと思って、今日の試合に臨みました」。

 主将のDF鈴木準弥(4年=清水ユース)が不在の状況。DF大桃海斗(2年=帝京長岡高)とCBコンビを組み、最小失点に留めた。そして守備だけでなく、攻撃でも結果を出した。

 4-1の後半44分、MF相馬勇紀(3年=三菱養和ユース)の左CKはニアへいた相手MFの背後、ゴール正面へ落ちる。ゴールへ背を向ける体勢だった井上だが、瞬間的に右足ヒールでボールを蹴り入れ、これが意表を突く形でネットを揺らした。

 「ボールは見えていたので当たれ!という感じでいいところに当たりました。咄嗟に出たら入ってしまったという感じです」とはにかみながら振り返る。

 この日の早慶戦ではピッチ上のみならず、会場や会場周辺で多くの両校部員が各々の仕事に奮闘していた。1万3千人を超える等々力での試合を見ることも許されず、近隣の駅から競技場への道中へ案内係として配置された選手、各コンコースや入り口付近などで観客応対する選手もいた。皆が伝統の一戦でピッチに立つことを目指す中、試合も見れない場所にいた彼らの胸中は複雑なものだったかもしれない。

 そんな“仲間”たちを想い、井上は言う。「去年の早慶戦はスタンドで見ていて、一昨年は試合さえも見れない状態で、すごく悔しい思いをしていました。逆にそういう人の想いも知っているので、今日はそういう人たちの分まで頑張ろうと思っていました」。

 チームのサポートとはいえ、一人のプレイヤーとしては悔しい過去二度の早慶戦を乗り越え、井上はピッチで輝きを放った。その背中に多くの選手が勇気づけられたはずだ。

(取材・文 片岡涼)

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