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秋田の歴史、勢力図を変えるという挑戦心。3年ぶり全国王手の新屋は内容と結果にこだわる

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新屋高が3年ぶりの全国大会出場へ王手をかけた

[10.26 選手権秋田県予選準決勝 新屋高 2-0 秋田工高 八橋陸上競技場]

 第96回全国高校サッカー選手権秋田県予選準決勝が26日に行われ、県新人戦優勝の新屋高と同準優勝の秋田工高との一戦は新屋が2-0で勝利。新屋は3年ぶり2回目となる全国大会出場を懸けて、28日の決勝戦で秋田商高と戦う。

 新屋は前半10分、抜け出したFW安田怜史(3年)が右足シュート。秋田工GK渡辺空斗(3年)が反応良く弾いたが、こぼれ球をMF保坂広太(2年)が冷静に決めて先制点を奪う。

 リードした新屋は慌てずにボールを保持し、後方からパスを繋いでゲームをコントロール。秋田工も奪ったボールを後方から繋いで攻め返そうとしたが、新屋の積極的なプレッシングにハマってボールを失い、MF松橋拓磨(2年)やMF佐々木達樹(2年)に決定的なシュートを打たれてしまう。

 主導権を握って試合を進める新屋も佐々木の右足ミドルが左ポストを叩くなど、なかなか2点目を奪うことができなかった。それでも中盤で存在感放つ松橋やMF大山悠斗(3年)が狭いDF間を射抜くパスを通してアタッカー陣が抜け出したほか、サイドからの仕掛けを見せ続けると、後半5分に追加点を奪った。

 左サイドからオーバーラップしたSB佐藤瑞起(2年)が左足でクロスボール。DFのクリアが小さく、ファーサイドでコントロールした保坂がすぐさま右足を振り抜く。この一撃がゴール左隅へ突き刺さった。ベンチ前に駆け寄った保坂中心にエンジのユニフォームが喜びを爆発。新屋が勝利に大きく近づいた。

 秋田工は2年生の10番MF石井俊輔が相手の逆を取るドリブルで再三局面を突破し。守備面でも奮闘していた。また、MF夏井秀人(3年)らが何とかハイサイドまでボールを運ぼうとする。そしてFW稲垣颯(3年)のロングスローなどをゴール前に入れたが、新屋は「今年、ボールが変わって伸びが違った。でも、日々練習してきたので落下地点がわかっていた。身体を張ったディフェンスをして、後ろから一番見えているのが自分なので、しっかり周りを見て、コーチングという面をやっていきたい」という182cmCB石山大道主将(3年)がハイボールをことごとく跳ね返して見せる。

 新屋は攻撃面でも左SH熊谷拓巳(3年)や交代出場した10番FW門間陸(3年)が積極的な仕掛けを繰り返して相手の守りを押し下げて見せる。追加点こそ奪うことはできなかったものの、新屋は秋田工をシュート3本に封じて2-0で快勝。全国に王手をかけた。

 新屋は楢岡直志監督が「新屋はこうだ、と積み重ねていきたい。ブレずに頑張っていきたい」と説明するように、技術力と判断力を磨いて勝負するパススタイルのサッカーを貫いている。2年生ゲームメーカー、MF松橋は「パスサッカーに憧れていて、秋田と言えば、新屋高校が一番パスサッカーが上手いと思った。(秋田商などの)強いところを倒して全国へ行きたいと思ってきました」と語っていたが、新屋の選手たちはそのサッカーへの憧れと、伝統校を倒すという挑戦心を持って進学してきている。

 3年前に選手権初出場し、個人、チームが表現しているサッカーも年々向上。それでも、最近2年間はいずれも秋田商に選手権出場を許している。それだけに、石山は「毎年、秋商が優勝しているという歴史があって、自分たちがそれを変えたいという気持ちが凄くあるので、今年は自分たちが全国へ行って、全国で1勝でも多く勝てたらいいと思っています」と意気込んだ。

 秋田商と戦う決勝戦へ向けて楢岡監督は「今シーズン、一番強いチーム。チャレンジしてぶつかっていく。求められる結果を出したい」ときっぱり。そして、石山は「決勝という舞台は簡単ではないのは分かっているので、技術だけで勝とうとしないで気持ちを全員で出していきたい」と誓った。内容と結果、両方を求めて、2冠を達成し、秋田商や西目高が中心だった秋田の勢力図を変える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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