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「エコパでの借りをエコパで返す」浜松開誠館が雪辱の舞台へ一歩前進:静岡

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後半11分、浜松開誠館高はMF市川侑生が右足シュートを決めて2-0

[11.3 選手権静岡県予選決勝T1回戦 加藤学園高 0-2 浜松開誠館高 草薙球技場]
 
 3日、第96回全国高校サッカー選手権静岡県予選は決勝トーナメント1回戦8試合を行い、草薙球技場の第2試合では悲願の初優勝を狙う浜松開誠館高が加藤学園高に2-0で勝利。浜松開誠館は4日の準々決勝で清水東高と対戦する。

 エコパでの借りをエコパで返す。浜松開誠館は昨年度のインターハイ予選決勝で静岡学園高に0-1で惜敗。同年の選手権予選決勝でも藤枝明誠高に2-3で逆転負けを喫し、全国大会初出場を果たすことができなかった。

 夏冬ともにエコパスタジアムで涙を飲んだ浜松開誠館イレブン。元清水FWの青嶋文明監督を父に持つGK青嶋佑弥主将(3年)は「先輩たちの思いを晴らさないといけない。エコパの借りをエコパで返さないといけないという思いがある」と力を込める。その浜松開誠館が雪辱の舞台へ一歩前進した。

 前半、浜松開誠館は意図的にロングボールを増やして相手を押し込むことを選択。前線や2列目の選手たちが動き出しを繰り返し、そこへのロングボールで起点を作ると、クロスなどから加藤学園ゴールを目指した。

 対する加藤学園は押し込まれながらもCB内村峡大朗(3年)やGK山崎拓磨(3年)を中心に相手の攻撃を跳ね返していく。積極的にクロス、ミドルシュートを打ち込んでくる相手にその本数を増やさせてしまっていたものの、ゴール前で譲らず、0-0のまま試合を進める。

 そして28分には1チャンスを決定機に結びつける。カウンターから左サイドを突いたFW二村岬輝(3年)が、スピードを活かしてDFの前に入り込み、シュート。浜松開誠館はGK青嶋のビッグセーブに救われたものの、冷や汗をかかされた。

 後半、青嶋監督から「攻撃のスイッチを入れる場所はどこか」指示を受けた浜松開誠館が連続ゴールを奪う。6分、FW弓場堅真(2年)の左クロスをファーサイドのMF三浦倭(3年)が頭で折り返す。狙い通りに相手の守りを広げると、最後は中央のスペースを突いたMF川畑陸(2年)が右足ダイレクトでゴールへ突き刺して先制点を奪った。

 さらに11分には弓場のスルーパスでMF市川侑生(2年)が抜け出す。加藤学園GK山崎が先に触ったものの、わずかにこぼれたボールを拾い、体勢を立て直した市川が右足シュートを決めて2-0と突き放した。浜松開誠館は後半、ボールを保持する時間を伸ばし、人数を掛けての崩し、相手の重心の逆を取ることにもチャレンジ。3点目こそ奪うことはできなかったものの、CB山田梨功(2年)やCB高岡廉(3年)を中心に加藤学園をシュート計3本に封じて2-0で勝利した。

 浜松開誠館の青嶋監督は今年のチームについて問われると、苦笑いし、厳しい戦いになることを予想する。そして「リーダーもいないですし、流れを読める選手もいない。(悪い状況で判断できずに)道なき道を歩いてしまうような選手が多い」と苦言も。それでも、自分のこと以上に仲間のために頑張ることのできる選手たちが揃っていることは強みだ。スタンドでは控え部員たちが全国トップクラスと言えるような一体感ある応援を繰り広げ、登録選手の中にはコーチングスタッフから実力以上に日常生活やトレーニングへの姿勢を認められてメンバー入りした選手もいるという。一体感ではどこにも負けない。

 青嶋主将は「去年はインターハイも、選手権も決勝で負けてしまって、応援に来てくれている人に最後笑顔で帰ってもらうことができなかった。気迫や頑張っている姿を見てもらうことはできたんですけれども、最後結果で感謝の気持ちを応援してくれる親や同級生に伝えられなかった。応援してくれる人のためにやることでモチベーションはさらに上がるし、自分のためだけにサッカーをやらないことでビビることもなくなるので気迫を全面に出してやれると思います」と自分のこと以上に、仲間のことを思って戦うことへの効果を口にする。

 激戦区・静岡を勝ち抜くことの難しさは分かっているが、今年は必ず、チームメートや同級生たちにエコパから笑って帰ってもらう。決勝は11月18日。開誠館に新たな歴史を築くためにも、選手たちは仲間のために最後まで諦めずに戦い、壁を破る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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