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「優勝した代よりも個の力はある」富山一、後半の失速を謙虚に受け止めて決勝へ:富山

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ハットトリックを達成した富山一高FW大竹将吾(9番)をFW坪井清志郎(10番)が祝福

[11.3 選手権富山県予選準決勝 富山一高 4-1 富山国際大付高 高岡スポーツコア]

 第96回全国高校サッカー選手権富山県予選の準決勝が3日に行われ、3連覇を狙う富山一高富山国際大付高に4-1で勝利した。富山一は11月5日の決勝で水橋高と対戦する。

 準決勝までの3試合で46得点を奪った富山一の攻撃力は、この日も健在。キックオフとともに徳島入団内定のFW坪井清志郎(3年)が相手ゴール前まで飛び出すなど、立ち上がりから相手を押し込んだ。

 試合の主役となったのは、坪井とFW大竹将吾(3年)の2トップ。DF高浪陸(3年)とDF橋爪晃広(2年)の両ウイングバックによる仕掛けから、積極的に2人にボールを預けると、「セットプレーで点が獲れるかなと思っていた」という大塚一朗監督の読み通り、7分にはMF多賀啓志朗(3年)の左CKを大竹が頭で合わせて、富山一が試合を動かした。

 13分には相手エリア右でFKを獲得。多賀がゴール前に入れたクロスを坪井が頭で合わせて、2点目を奪った。だが、ここからは「普段、練習で使っている人工芝と天然芝の違いに慣れず、ボールを速く動かすことができなかった」(大塚監督)と攻撃のテンポが上がらず、チャンスで決めきれない場面が続いた。

 それでも、37分にはMF前田拓哉(3年)、MF高縁海(3年)と中央を繋いで再びチャンスを作ると、最後は大竹が決めて、3点目をマーク。39分には、坪井が左サイドから力強い突破で4人をかわし、バランスを崩したタイミングでゴール前にスルーパスを入れると、フリーでパスを受けた大竹が冷静に仕留め、ハットトリックを達成した。

 後半開始とともに、準々決勝で警告を受けていた坪井を下げ、「速くしっかりとパスを回すため」(大塚監督)MF小森飛絢(2年)を投入。指揮官の狙い通り、高い位置でボールが動く回数が増えた一方で、前半で勝負が決したことによる気の緩みからボールロストも増え始めた。

 守備の時間が続いた富山国際大付もカウンターからゴールを狙う回数が増え、後半7分には自陣右でボールを奪ったDF高田凌汰(3年)が前方にロングボールを入れる。一度は、相手DFに渡ったが、高い位置でFW脇碧唯(3年)が奪い、左MF笠間玄隼(3年)にパス。笠間が中に入れたパスを脇が合わせ、1点を返した。

 さらに23分には、DF竹森大翔(1年)がセンターサークル付近からゴール右上を突くロングシュートを狙うなど富山国際大付は最後まで粘りを見せたが、追加点は奪えず。富山一も、31分に前田の放ったミドルシュートがクロスバーに嫌われるなど5点目は生まれず、4-1でタイムアップを迎えた。

 3年連続での決勝進出を果たした富山一だが、目標にしていた無失点優勝は果たせず。多賀が「前半はしっかり点が獲れて、良いサッカーができたと思うけど、後半だけで見れば0-1で負けている」と口にしたように、快勝にも満足した様子は見られなかった。大塚監督も「ちょっとしたミスで失点するし、リズムを失う。色んな課題が出たことをプラスに変えていかないといけない。日本一を目指すなら、こんな試合ではダメ」と苦言を呈する試合内容となった。

 ただ、監督が厳しい言葉を選ぶのも期待の表れだろう。「国立で優勝した先輩たちを見て、富一を選んだ」と話す多賀を筆頭に、個性派が多く揃う今年は、「優勝した代よりも個の力はある」と大塚監督が期待を寄せる世代だ。

 2度目の日本一を獲るため、プレーの質を高めるとともに大事にしてきたのが、謙虚な気持ち。「いくら強いチームでも謙虚さがないと成長が止まり、負けてしまう。謙虚さを持って、自分たちを振り返ることで、何が出来ていないかを考え、ドンドン成長していこう」(多賀)との意味を込め、富山一の伝統である、選手自身が9つの行動指針を決めるダイヤモンドナインの中心に“謙虚”の言葉を置いた。決勝まで中1日と日はないが、この日の失速も謙虚に受け止め、全国行きに繋げるはずだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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