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松山工が2年ぶり6度目V!「献身性」光る見事な逆転劇で“東予の雄”今治東を下す:愛媛

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2年ぶり6回目の優勝を果たした松山工高

[11.11 選手権愛媛県予選決勝 今治東中等教育学校1-2松山工高 西条市]

 第96回全国高校サッカー選手権愛媛県予選は11日、西条市ひうち陸上競技場で決勝を行い、初優勝を狙った今治東中等教育学校を2-1で下した松山工高が2年ぶり6度目の全国大会出場を決めた。

「やってきたことが間違いじゃないという証明になった」。試合後、そう胸を張った松山工の坂本哲也監督は、勝因を「真摯に、謙虚に、サッカーに取り組んできたこと」と述べた。とりわけ重視してきたのは「チームのために」という精神。事前に用意してきた策がうまくいかず、序盤に先行される展開となったこの一戦で、そんな選手たちの献身性が試合をひっくり返した。

 松山工はこの日、序盤の10分間で“オプション”的な戦術を採用。「今治東さんは技術が高く、押し込まれる時間が長くなるので、ロングボールを使って相手の起点を低いところにつくらせようとした」(坂本監督)。ところが、決勝の雰囲気に包まれた高揚感のせいか、過度に前のめりになってしまい、セカンドボールを拾えず、相手の攻撃を受ける形が続いた。

 そんな勢いを押し返せないまま前半11分、今治東MF伊藤綾我(高3)のドリブルを食い止められず、左サイド深くでFKを与えてしまう。そして同12分、角度の小さい位置からMF田坂潤(高3)が放ったFKがゴールへと向かったが、クロスが来ると読んでいたGK伊藤元太(2年)は相手FWへとアプローチ。慌てて戻って足を伸ばしたが、ボールはそのままゴールネットに吸い込まれ、痛い失点を喫してしまった。

 それでも「先制されるのは想定内。このチームは2点は取れる自信があるので、いつも『前半の0-1はオーケー』と話している」(坂本監督)という松山工は焦らなかった。主将のDF志摩奎人(3年)が「自分たちのサッカー」と評するパスワークを徹底する方針で意思統一し、徐々にペースを奪い返し始める。

 そして前半24分、松山工が同点に追いつく。敵陣に攻め込んだ左サイドMF芳之内啓(3年)がFW向井和哉(2年)に斜めのパスを送ると、ダイレクトで出されたリターンパスがPA左に抜け出した芳之内のもとへ。GK貴田大祐(高3)が飛び出してきたのを冷静に見て左足ループで狙い、「思い通り」(芳之内)の軌道を描いたボールがファーのサイドネットを揺らした。

 見事なファインゴールに指揮官は「和哉のボールも良かったし、芳之内のシュートも良かった。滅多に入らんのですよ(笑)」とうれしい驚き。それでも「前半のうちに1点を返せたので、後半に向けたプランも組めて、選手たちのメンタルも少し落ち着いた。あの1点がすごく大きかった」と勝負どころで決め切った選手たちを手放しで称えた。

 1-1で迎えた後半は一進一退の攻防となったが、これまで積み重ねてきた献身性が生きた。なかでも、指揮官が名指しで褒めたのはFW石井隆之介(3年)。「攻撃が大好きなんですけど、以前は守備で頑張れず、攻撃でもすぐに倒れていた。それがこの日は相手に身体をぶつけ、チームのためにがんばって、セカンドボールを取ってくれた」。

 そんな石井が見せ場をつくったのは後半19分、味方のクリアボールに反応して相手DFに猛ダッシュで詰め寄り、空中戦での競り合いから最終ライン裏にボールを流す。右サイドの角度のないところで再びボールを拾い、無人のゴールを狙ったシュートは惜しくも枠を外れたが、「この大会では石井が一番成長した」(坂本監督)という姿を発揮した象徴的なシーンだった。

 すると後半23分、ついに松山工が均衡を破る。左サイドで再三鋭い攻め上がりを見せていたDF上野竜馬(3年)から芳之内にパスが送られると、献身的な動き出しを見せた2トップをおとりに猛スピードでカットイン。目の前では3人のDFがブロックを試みたが、そのまま迷わず右足を振り抜き、クロスバーに当てながらゴールマウスへとねじ込んだ。

 リードした後は「ちょっと満足してしまう場面があった」(坂本監督)とペースが落ち、今治東がボールを握る展開となる。それでもサイドからのクロスやロングボールを志摩、DF河本竜弥(2年)のCB2枚が跳ね返し続け、決定的なチャンスをつくらせない。一方、後半34分にはカウンターから単独突破した石井がシュートを放つなど、最後まで要所で迫力を見せた松山工が2-1のまま歓喜の瞬間を迎えることとなった。

 もっとも、堂々とした試合運びを見せたようにも思われる松山工だが、「修正すべき点はたくさんあった」と坂本監督。「ボールを受ける前に、周りの状況や相手の立ち位置に対して準備するのが遅い。そこで準備をしないから余裕がなくなり、前掛かりになったところでミスが発生し、横パスを奪われてボールを運ばれた」と冷静に課題を分析する。

 一方で「できなかったことを修正して、改善していけば、勝ちを2つ、3つとつなげていく手応えは見えた」という自信を獲得したのも事実だ。全国大会で目指すところは、2年前の出場時(3回戦敗退)に達成できなかったベスト8。「常連校の仲間入りができる大会になるように、(全国大会までの)1か月半で改善して練習していきたい」と、さらなる進歩を遂げて冬の大舞台に臨もうとしている。

(取材・文 竹内達也)
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