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勝者から学ぶ矢板中央が8強入り。彼らを日常から変えた“青森山田基準の厳しさ”

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日常から礼儀を大切に、そして緊張感を増して取り組んできた矢板中央高が8強入り

[1.3 全国高校選手権3回戦 神村学園高 0-1 矢板中央高 浦和駒場]

 北関東の強豪、矢板中央高(栃木)は、清水内定MF高橋大悟主将(3年)擁する神村学園高(鹿児島)の攻撃を80分間跳ね返し、11年度以来6年ぶりに8強入りを果たした。

 いずれも優勝候補筆頭に挙げられながら関東大会予選で初戦敗退し、インターハイ予選準決勝で敗れるなど結果が出なかったチームが変わったのは、ピッチ上の部分だけではない。

 U-17日本代表MF松井蓮之(3年)は「練習の雰囲気だったり、私生活の挨拶、返事とか行動とか、一つひとつのことを変えてきたことが強みになっている。新しいコーチが来て、指摘されて、みんなが変わったと思います。今は言われる前にやっていますし、挨拶・行動をテキパキしたり、違うチームの人が来たら率先して挨拶したりするようになりました」と語っていた。

 これらは少し前までチームに欠けていた部分。それは青森山田高出身の木村大地GKコーチ(現帝京大2年。2年前の青森山田選手権メンバー)が昨年2月に加わってから変わってきたのだという。この日、決勝点をアシストしたCB高島祐樹(3年)も「(木村GKコーチが加わったことで)シンプルに厳しくなりました。普段も今まではルーズな部分がありましたけれど、急に変わりましたね」と説明。普段、そして大会期間中も礼儀を欠かさず、緊張感を持って日々を送れていることがチームの結果にも繋がっているようだ。
 
 木村GKコーチがまずチームに指摘したのは「挨拶と礼儀」。そして周囲に気を配ることだ。当初、矢板中央のそれは自分が過ごしてきた高校時代と異なるものだったという。青森山田で指導されてきたことをそのまま当てはめている訳ではないが、選手たちがその重要さを知っていれば、心がけ一つで変えることができる。高橋健二監督も「規律などを加えてくれている」と信頼する中、木村GKコーチはチームのプラスになればという思いで“青森山田基準”の厳しさを持って選手たちと接するようになり、それをMF稲見哲行主将(3年)と松井が中心になってチームに浸透させてきた。

「僕が教えてもらったことを還元できればと。それが山田で育ててもらったことへの少しの恩返しにもなる」と木村GKコーチ。日常から少しでも緊張感を持つこと、そして日々少しでも成長を目指すこと。その少しを求め続けることがチームの結果を変えると感じている。

 前日の2回戦で矢板中央は3点を奪いながら、守備に隙を見せて3-2で辛勝。一方で青森山田や前橋育英高(群馬)は大量得点を奪う一方、無失点で試合を終えている。「しっかりやらないと昨日みたいなゲームになってしまいます。きょう1-0で勝ったことは良かったですけれども、(より意識高いチームであれば)2-0、3-0を求めると思う」と指摘。松井は「(木村GKコーチからは)山田魂しか注入されていないですね」と微笑んでいたが、3年生たちと2歳差の“兄貴分”は、選手たちに「まだまだ」と言い続けながら、勝つチームに変化中のチームをサポートし続ける。

 矢板中央は帝京高(東京)に数々の全国タイトルをもたらした名将・古沼貞雄アドバイザーもベンチ入り。この日は古沼アドバイザーの普段のアドバイス通り、ダイレクトプレーから稲見の決勝点が生まれた。高橋監督は古沼アドバイザーから「まだまだ甘い。選手も甘いし、指導者も甘い」と言われているという。歴史を築いた名門から学ぶ矢板中央が、ベスト8進出した結果にも、日常にも満足することなく、よりできることを求め、その積み重ねをこれから3試合の白星に繋げる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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