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「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第66回:「異」風堂々(浦和西高MF重信圭佑)

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リードされていても、笑顔でプレーし続けた浦和西高MF重信圭佑

“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」

 青いユニフォームの7番は、笑っていた。12日、埼玉県の新人大会2回戦を取材した。2、3月は、年末年始に行われた全国高校選手権が終わって現3年生が引退した後、次の世代が試合を行っている時期だ。どんなチームがあるのか、どんな選手がいるのかが、気になる。浦和西高の左MFは、大きな体に丸坊主で目立った。しかも、スピードと左足のパワーを兼ね備えており、アタックに迫力がある。写真を撮るためにレンズを覗くと笑顔が見えた。メンバー表を確認する。浦和西の重信圭佑だ。試合は、西武台高に前半で2点を奪われる苦しい展開だったが、重信は笑っていた。プレーで沸かせると、チラッと応援団を見る。盛り上がりを見て、一緒に楽しんでいた。

「サッカーが好きっていうより、強い相手とやれるのが好きなので、楽しかったです。縦の突破? いや、ゴールが前にあるから近道したかっただけです」

 随分と純粋な答えだった。試合は、0-4で敗退したが、スコアが彼から笑顔を奪うことはなかった。後半のアディショナルタイム、右サイドでCKを得ると、重信は逆サイドから笑顔で全力疾走した。時間が惜しかったのかと聞くと「チャンスが来たら走ろうと思っていたのに来なくて、体力が余っちゃったんですよ。あとは、ベンチが盛り上がるかなと思って」と拍子抜けする答えが返って来た。

 市原雄心監督は、チームの両翼に自信を示していたが、重信については「昨季は、ずっとメンバーに入れませんでしたが、能力は高いんです。笑っていた? 試合に出られるのが嬉しくて、何も考えていないのかも……。ちょっと、ああいう奴なんで」と掴みどころのなさを感じていることをほのめかした。

 普段は、左DF。重信は、相手の主力アタッカーを止めるのが楽しいという。「プロからスカウト? それ、ないです!」と言い切るほどサッカー選手としての自己評価は低い。しかし、将来の夢を聞くと「日本を変える人になりたいです。日本が世界の中心になれるような力をもたらしたい」と大きく出た。下の名前が同じプロ選手のように、規格外な雰囲気を持っていて、楽しい選手だ。

 昨季、浦和西は、高校選手権の埼玉県大会で準優勝。昌平高に一歩及ばずに敗れた。今季は、県のタイトルを取りに行く。重信は「できるだけ強い相手とやるために勝ちたいですね」とまた笑った。悲願を達成するとすれば、威風堂々、いや異風堂々の男が一仕事をしたときだろう。

■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」

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