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支えとなった“ぐっぴー”さんの背中…2年半出場ゼロだった千葉GK大野哲煥、今こそ開花のとき

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3試合連続先発出場を続けるジェフユナイテッド千葉GK大野哲煥(左上)

[9.16 J2第33節 千葉3-3福岡 フクアリ]

 プロとなって2年半もの時が経っていた。その間、公式戦に出場したことはないが、ジェフユナイテッド千葉GK大野哲煥は腐らなかった。それは、“ぐっぴー”さんの背中を見ていたからだった――。

 16年、城西国際大から千葉に加入した大野。しかし、ピッチに立つ機会は訪れない。当時のチームにはGK佐藤優也、GK岡本昌弘、GK藤嶋栄介がおり、ベンチ入りすることなくシーズンを終えた。GKの入れ替えもあった翌シーズンこそ、6試合でベンチ入りしたものの、プロデビューを果たすことはできない。本人も「出られない時間は長かった」と振り返ったように、苦しい時期を過ごしていた。

 だが、ここで腐ることはなかった。それは一人の先輩の背中を見ていたからだった。その男こそ、93年生まれの大野よりも10歳年上となる岡本(愛称・ぐっぴー)だ。02年に千葉の下部組織からトップチームに昇格した岡本は08年から出場機会を増やし、長らく千葉のゴールマウスを託されてきたが、15年以降は出場機会を減らし、昨季は一度もベンチ入りすることなく、今季は出場機会を求めて愛媛に期限付き移籍した。

 大野とともに過ごした2年間、岡本がピッチに立つ機会は限られた。だが、15年以上をプロサッカー選手として過ごしてきた男は、練習から常に100パーセントで取り組み、来るべき出場機会に備えて調整を進めていた。大野は、その背中を見て育った。

「出られない時期は長かったけど、ぐっぴーさんや先輩の背中を見てきて、自分がここで腐っていたらダメだと感じた。ぐっぴーさんは試合に出られないときも下を向くことは一切なかったし、ネガティブな感じにはならずに練習から100パーセントでやっていた。GKなら続けて取り組むしかないと思った」

 歩むスピードは遅かったのかもしれない。しかし、コツコツと積み上げてきたものがある。そして3年目を迎えた今季、大きなチャンスが巡ってきた。一度もベンチ入りすることなく迎えた第31節山口戦で先発に抜擢。チームは1分3敗と苦しい時期を過ごしていたが、「チームの状況もあったけど、自分としては初めてで最大のチャンスだったので、つかみ取らないといけないと思った。ここでダメなら、俺はダメだという覚悟を持って挑んだ」とピッチに立つと、4-0の完封勝利へと導き、5試合ぶりの白星をチームにもたらした。

 さらに翌節岡山戦(○2-0)でも先発出場を果たすと、今節福岡戦(△3-3)でもゴールマウスを託された。3試合連続での先発フル出場。チームは2勝1分と負けなしだ。今こそが、大野のサッカー人生にとって、大きな分岐点となるだろう。それは本人も自覚しており、「自分が良いパフォーマンスさえできれば、ゲームに勝つことはできるはず。勝利に貢献し続けられるように、今後もトレーニングから100パーセントで取り組みたい」と力を込める。

 背中で示し続けた“ぐっぴー”こと岡本は、愛媛で全33試合に先発フル出場中と、再び守護神の座を手に入れた。そして、その背中を見て育った24歳の若武者が今、人生を大きく変えようとしている。

(取材・文 折戸岳彦)
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