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[MOM2621]興國FW中川裕仁(3年)_大暴れの愛媛内定アタッカー、「典型的な使われるFW」からの脱却

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2ゴール1アシストの興國高FW中川裕仁(3年=右)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
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 与えられた時間は後半の40分間だけだった。さらに、前半途中から降り出した豪雨の影響でピッチ状態は劣悪。しかし、来季の愛媛内定が発表されている興國高FW中川裕仁(3年)は、そんな環境を物ともせず。“違い”を見せ続けて、後半に生まれた4ゴールすべてに絡む驚異的なパフォーマンスを披露した。

 まずは前半を1-0と折り返して迎えた後半9分、PA内で突破を図ってクロスを上げると、DF佐藤海斗(3年)がつないだボールをFW杉浦力斗(1年)が蹴り込んでチーム2点目が生まれる。ここからは、「スピードと左足のシュートが武器」という中川の独壇場だった。50メートルを5秒9で駆け抜ける快足で清水桜が丘守備網を切り裂き、左足から繰り出される強烈、そして正確なキックで相手の脅威となり続ける。

 後半18分にはPA内でボールを受けると鋭い反転から放った左足シュートが、相手GKに触れられながらもネットを揺らし、同29分には右サイドから一気に中央に切れ込むと、寄せてくる相手を次々と置き去りにして再び左足のシュートでゴールを陥れた。さらに同40分には左サイドをえぐってMF古川大樹(3年)の得点をお膳立てし、40分間のゴールショーの主役となった。

 セレッソ大阪 和歌山U-15からC大阪U-18へと進み、昨年から登録変更して興國でプレー。加入当初は「自分で抜けるよりも背後へのパスに抜け出して決める典型的な使われるFW。1対1で抜きに行くような選手ではなかった」(内野智章監督)ようだが、指揮官の「ドリブルを徹底しろ」との指導の下、少しずつその能力が開花。そして、この日の自身2点目となったドリブルシュートを「自分の得意な形」と胸を張るほどの武器として育て上げた。

 高校選手権の舞台は「夢」だった。「セレッソ和歌山からユースに上がったけど、中学のときから選手権に出たいという夢があった。今は興國でサッカーができていて、選手権に向けて『やるしかない』という気持ち」と力を込めると、ラストチャンスで夢を叶えるためには「120パーセントの力が必要」と続けた。

「1試合1試合を100パーセントでやっても足りないくらい。120パーセントの力を出していかないといけないし、全国に出て監督に恩返しをしたい気持ちが強い。一日一日を大切にしてレベルアップして、今年こそは必ず行きたい」

 選手権にあこがれ、興國で進化を遂げた男の“高校最終章”が今、幕を開けようとしている。

(取材・文 折戸岳彦)
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