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アンプティワールドカップが開幕!日本代表の大黒柱・エンヒッキを支えた「皇居ラン」

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ゴールを決めた直後、ベンチ前の仲間のもとになだれ込むエンヒッキ松茂良ジアス(右から3人目)

[日本時間10.29 アンプティサッカーW杯C組 日本代表 1-0 コスタリカ代表]
 我慢に我慢を重ねて、ようやくもぎとった。0-0のまま迎えた後半15分、右サイドの星川誠から逆サイドに走りこむエンヒッキ松茂良ジアスに、1本の長いスルーパスが通る。背後をとられてあわてた相手DFやGKをかわし、左足がシュートがネットを揺らす。エンヒッキはベンチにいる仲間のもとへ全力で走り、体ごと芝生の上に飛び込んだ瞬間、仲間が次々と乗っかってきた。手荒い祝福が、最高に心地よかった。

「思った以上に相手(の守り)が固かった。最初は焦りもありましたが、無事に先制点を決めれて、勝利できてよかったです。次の試合も厳しいと思うので、この勝ち点3はまだ取っていないのも同じことだと思い、引き続き頑張りたい」

 試合後、安堵の表情を浮かべたブラジル生まれのエンヒッキにとって、今回が通算5度目のW杯。仕事の都合で19歳のときに来日後、ずっと勤務後に練習を積んできた。それは他の選手も同じで、W杯にむけて代表合宿を組めたのも2度しかない。外資系銀行につとめるエンヒッキの心身を支えたのは、約3か月前から仕事の後に取り組んできた”皇居ラン”だった。

「戦術的なことはSNSとかで共有できるけど、フィジカル面は個人でやるしかない。僕は仕事の後、会社の同僚と一緒に定期的に皇居(5㎞)を1周を走り続けてきました。それをあえて自主的にSNSに投稿して『僕もこれぐらいやっているから、みんなもやろうぜ』みたいなノリを作りたかったんです」

 5歳の頃に交通事故で右足を失ったエンヒッキは杖を使い、普通に走る同僚の隣で並走する。1㌔7分を切るペースで、約35分で戻ってくる。一般ランナーに置き換えても結構早いペース。普段は千葉の富里市役所につとめる主将の古城暁博も大いに刺激を受けた。

「私が彼と一緒に走ったとしても、追いつかない。私が仮に5㌔走る場合でも1㌔8分後半ぐらいのペースで走っていますから。日本で走れる部類の選手は、1試合トータル3~4㎞ぐらい走る。試合以上の距離を走ることで自分を鍛えているんでしょうし、その姿はほかの選手への刺激にもなっていると思います」


 日本にアンプティサッカーという競技自体がなかった頃から、エンヒッキと一緒にアンプティの普及活動から一緒にやってきた日本代表・杉野正幸監督も初戦を勝利で終え、胸をなでおろした。

「我々がやりたいサッカーをなかなかさせてもらえなかった。マークがきつかったり、球際が強かったりして苦労した。コスタリカに勝ったというよりも、このW杯の初戦に勝てたという思いの方が強い。この勝利を弾みに、明日のコロンビア戦も全力で戦いたい」

 実力的には格下の相手を振り切った日本代表は、「産みの苦しみ」を30日のコロンビア代表戦以降への勢いに変える。

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