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[デフサッカー全日本選手権]東日本が4連覇。決勝ゴールを奪った日本代表・原口を成長させた意外な理由

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優勝カップを掲げる原口凌輔(左)

[11.18 第15回全日本ろう者サッカー選手権大会決勝 東日本 3-1 九州 浦安市総合公園球技場]

 歓喜の瞬間、涙をこらえるように右手で顔を覆った。1-1で迎えた後半5分、東日本の主将で日本代表の右SB原口凌輔が左からのクロスにドンピシャで右足をあわせ、勝ち越しの2点目を奪う。手の親指と人差し指でVの字を作り、顔の半分を覆い隠す独特のゴールパフォーマンス。イタリアの名門ユベントスに在籍するアルゼンチン代表FWパウロ・ディバラが「自分に運をもたらしてくれる」と続けているゴールパフォーマンスをまねて、原口も幸運に感謝した。

「リバラ選手のゴールパフォーマンスに、原口の『原』をかけて、お腹を触りました(笑)。いいクロスがきたので、あとは押し込むだけでした」

 聞こえづらい世界でプレーする選手たちへの配慮と尊敬からか、デフサッカーのピッチに響く音はボールを蹴る音が大半だ。選手同士やベンチやGKからの指示の大きな声も、必要な時以外はあまり聞かれない。相手のファウルをやじる罵声もよほどのことがない限り飛ばない。だからこそ、東日本の勝利が見えた2点目が決まった瞬間の歓声は、浦安市総合公園球戯場をを包み込むように、ひと際大きく響き渡った。

原口が見せた通称”ディバラマスク”

 原口は生まれつき、聴覚障がいがある。社会人1年目の今年、健常者の社会人チームに在籍しながら、デフサッカーのチームでもボールを蹴る。社会人チームでは、周りの選手は声を頼りに先のプレーを選択するが、原口はそれができないため、隣の選手に身振り手振りを交えてコミュニケーションをとっている。

 大会を視察したデフサッカー男子日本代表の植松隼人監督が明かす。

「5年前に代表候補に呼ばれたときから彼を知っていますが、編成上の理由で代表から外れてしまったこともあり、苦労しているんです。原口は以前、ボランチやCBもこなして自分の強みがはっきりしなかったんですが、今はコミュニケーションが活発になってきて、リーダーシップがとれるようになってきた。それは、手話を覚えたのが大きい。彼は高校までは普通学校にいて手話ができなかったんです。手話は英語と同じで言語の一種ですから。今、チームにどういう空気が流れているのか、それを察知して落ち着かせることができるのが原口の強みの一つです」

 この試合でも3-1と東日本がリードした後半35分過ぎ、相手選手が東日本の選手を激しく突き飛ばし、退場に発展した。空気が騒然としたとき、原口は自陣のゴール前付近から真っ先に主審と相手選手のもとに駆け寄り、一触即発のムードを鎮静化させた。そのリーダーシップは国際舞台でも生きるはずだ。

「2021年のデフリンピックで優勝したいです」

 自らの努力で対話の手段を広げた原口は、夢も大きく広がる。

(取材・文 林健太郎)

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