[関東2部]“デフサッカー”日本代表、難聴FW岡田侑也が奮闘2戦連発「手本となれるように」
[4.28 関東大学L2部 東京農業大1-2東海大 立正大熊谷C]
「侑也、打っちゃえ!」
スタンドからの声援に後押しされるように、FW岡田侑也(4年=東海大高輪台高)がペナルティエリア左外で右足を振り抜いた。
「ファーを狙った」という強烈なシュートは、GKの手を弾いてニアに方向を変え、ポストに当たってそのままゴールイン。岡田の2試合連続ゴールは、東海大待望の先制点となった。
岡田は重度の聴覚障がい(難聴)を持っている。プレーぶりからは想像できないが、試合中はもちろん、ふだんも補聴器が手放せない。東海大でサッカーをする一方で、聴覚障がい者のサッカー、“デフサッカー”の日本代表としての顔も持つ。2016年にイタリアで行われたデフサッカーW杯で代表デビューをはたし、昨年は聴覚障がい者のオリンピックといわれる、デフリンピック・トルコ大会にも出場した。
だが、今年は「大学最後の年、お世話になった大学のスタッフに恩返しをしたい」との決意から、代表を辞退して大学サッカーに専念することにした。その強い思いが2試合連続ゴール、そして東海大の連勝を引き寄せた。
東海大といえば、伝統的に堅固な守備をベースにカウンターでゴールを狙うサッカーが特徴だった。しかし今年の戦いぶりは少し違う。「去年は前に足の速い選手がいたので、それを活かすことを考えた。今年はそこまで足の速い選手はいない。だから前に人をかけるサッカーになっている」と後藤太郎監督は言う。その前線を活性化させるのが、岡田の突破力だ。
166センチの小兵だが、ゴリゴリと抜いていくだけのタイプではなく、ドリブルで仕掛けながら、相手の裏を取ってゴールを狙うクレバーさを併せ持つ。この試合でも前半から鋭いドリブルで相手陣内を切り裂いたが、「前半は様子見というか、自分の力がどこまで相手に通用するか試していた感じ」と冷静な目で試合の流れを見極め、そして後半28分、本人は「本当はカーブを狙ったのに、たまたま弾丸シュートみたいになってしまった」と笑うが、相手のマークを外して放った一撃必殺のシュートでゴールネットを揺らした。
ただ自己評価は「70点」とやや厳し目だ。「まだチームのみんなに頼っているところがある。苦しいときに、自分の力だけで決められるようになりたい」。 そう自らに課すのは「大学を卒業しても、サッカー選手としての活動は続けていくつもり」だから。「今の状況をキープするだけではなく、体力や技術をもっと向上させたい」という。
「自分と同じように、障がいをもっていても大学でサッカーをしている人は、全国にたくさんいる。そういう人の手本となれるように、今後も自分に厳しくやっていきたい」
“これから”の自分のサッカーのために、そしてチームのために。岡田侑也が大学サッカー最後の年に挑む。
(取材・文 飯嶋玲子)
●第92回関東大学L特集
「侑也、打っちゃえ!」
スタンドからの声援に後押しされるように、FW岡田侑也(4年=東海大高輪台高)がペナルティエリア左外で右足を振り抜いた。
「ファーを狙った」という強烈なシュートは、GKの手を弾いてニアに方向を変え、ポストに当たってそのままゴールイン。岡田の2試合連続ゴールは、東海大待望の先制点となった。
岡田は重度の聴覚障がい(難聴)を持っている。プレーぶりからは想像できないが、試合中はもちろん、ふだんも補聴器が手放せない。東海大でサッカーをする一方で、聴覚障がい者のサッカー、“デフサッカー”の日本代表としての顔も持つ。2016年にイタリアで行われたデフサッカーW杯で代表デビューをはたし、昨年は聴覚障がい者のオリンピックといわれる、デフリンピック・トルコ大会にも出場した。
だが、今年は「大学最後の年、お世話になった大学のスタッフに恩返しをしたい」との決意から、代表を辞退して大学サッカーに専念することにした。その強い思いが2試合連続ゴール、そして東海大の連勝を引き寄せた。
東海大といえば、伝統的に堅固な守備をベースにカウンターでゴールを狙うサッカーが特徴だった。しかし今年の戦いぶりは少し違う。「去年は前に足の速い選手がいたので、それを活かすことを考えた。今年はそこまで足の速い選手はいない。だから前に人をかけるサッカーになっている」と後藤太郎監督は言う。その前線を活性化させるのが、岡田の突破力だ。
166センチの小兵だが、ゴリゴリと抜いていくだけのタイプではなく、ドリブルで仕掛けながら、相手の裏を取ってゴールを狙うクレバーさを併せ持つ。この試合でも前半から鋭いドリブルで相手陣内を切り裂いたが、「前半は様子見というか、自分の力がどこまで相手に通用するか試していた感じ」と冷静な目で試合の流れを見極め、そして後半28分、本人は「本当はカーブを狙ったのに、たまたま弾丸シュートみたいになってしまった」と笑うが、相手のマークを外して放った一撃必殺のシュートでゴールネットを揺らした。
ただ自己評価は「70点」とやや厳し目だ。「まだチームのみんなに頼っているところがある。苦しいときに、自分の力だけで決められるようになりたい」。 そう自らに課すのは「大学を卒業しても、サッカー選手としての活動は続けていくつもり」だから。「今の状況をキープするだけではなく、体力や技術をもっと向上させたい」という。
「自分と同じように、障がいをもっていても大学でサッカーをしている人は、全国にたくさんいる。そういう人の手本となれるように、今後も自分に厳しくやっていきたい」
“これから”の自分のサッカーのために、そしてチームのために。岡田侑也が大学サッカー最後の年に挑む。
(取材・文 飯嶋玲子)
●第92回関東大学L特集