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長崎U-18、C大阪と激闘ドローもGL敗退…指揮官「本当に“夢がある”クラブ」

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悔しい敗戦を喫したV・ファーレン長崎

[7.24 日本クラブユース選手権U-18大会G組第3節 長崎U-18 1-1 C大阪U-18 前橋フD]

 日本クラブユース選手権(U-18)大会は24日、グループリーグ第3節が行われ、セレッソ大阪U-18(関西3)とV・ファーレン長崎U-18(九州1)が対戦した。決勝トーナメント進出のためにはC大阪が引き分け以上、長崎が勝利を義務付けられる中、1-1のドローで終了。攻守に奮闘した長崎は先制したものの、主力陣を投入したC大阪の勢いに屈した。

 MF松本凪生(3年)、FW藤尾翔太(3年)、MF近藤蔵波(2年)ら世代別代表経験を持つ選手たちをベンチに残したC大阪に対し、主導権を握ったのは九州王者の長崎。GK朝長心優(3年)を有効に使ったビルドアップでボールを回すと、前半12分にはDF郡司島樹(3年)のドリブル突破、同13分にはFW浦道翔(3年)の高速クロスで立て続けにチャンスをつくった。

 長崎は前半18分、さらに圧巻の攻撃を披露した。相手のハイプレスに対して朝長が左サイドにピタリとフィードを通すと、C大阪U-15和歌山出身で古巣対戦となったDF西山太規(3年)が縦パスを送り、MF長尾泰成(3年)が敵陣へ突破。最後は浦道のキックがGK折口輝樹(3年)に阻まれたが、自陣からしっかり攻撃を組み立てる意識が結実した場面だった。

 もっとも、その後はC大阪も徐々に盛り返し、前半24分には左サイドを駆け上がったDF下川太陽(3年)のクロスにMF吉田有志(2年)が反応。こぼれ球に反応したMF奥村仁(3年)が狙い、長崎守備陣を強襲した。同27分には吉田のパスからMF桃李理永(3年)がシュートを放ったが枠を外れ、前半はスコアレスのまま終わった。

「それを外したら田舎のチームは戦えない」という北内耕成監督の言葉どおり、35.5℃の気温下でもハードワークをしっかり続けていた長崎。後半も何度も波状攻撃で相手ゴールに迫ると、12分に待望の初ゴールが生まれた。ハイプレスからMF五月田星矢(2年)がボールを奪うと、FW中山大輔(3年)が繋いで最後は長尾。落ち着いたシュートで先制点を奪った。

 このまま終われば長崎は勝ち点4。同時刻に行われている同組の札幌(勝ち点2)対柏(勝ち点3)はその時点で1-1という情報が入り、長崎は柏を得失点差で上回っているため、グループリーグ突破の望みが出てきた。一方、他会場の結果次第では敗退の可能性も出てきたC大阪は藤尾、松本、近藤の3人を立て続けに投入し、攻勢に打って出た。

 その後も他会場に関して「たびたび情報を入れていた」(北内監督)という長崎だが、後半24分に札幌がゴールを決めて勝ち越し。こうなると札幌の勝ち点が長崎を上回ってしまうため、長崎は3点差以上で勝利し、C大阪を得失点差で上回る必要が出てくる。そこで長崎は攻めに出た。選手交代も有効に使い、アグレッシブなサイド攻撃が効力を増していった。

 ところがフレッシュな有力選手が登場していたC大阪が一枚上手だった。後半33分、藤尾のポストプレーから長崎の布陣を大きく押し下げると、トランジションの連続から近藤が左サイドを切り裂き、最後は桃李が右足シュート。これがネットに吸い込まれ、土壇場で同点に追いついた。

 後がない長崎は後半アディショナルタイム、先制点を決めた長尾に代わって186cmのFW藤本翔(2年)を投入。パワープレーを試みると、同アディショナルタイム2分にはFW斎藤遼太(2年)とのワンツーから浦道が左サイドを駆け上がり、中央にクロスを送り込む。だが、藤本のヘッドは枠外。このまま試合は終わり、長崎のグループリーグ突破はならなかった。

「持っているもの、準備しているものは出たかなと思う」。試合後、そう口にした北内監督だが表情は悔しさにあふれていた。「勝たせてあげられなかったのは自分の力不足。彼らは力を出してくれた。勝ち切れない、持っていけないのは自分たちの弱さ。自分もそこは反省しないといけない」と唇を噛んだ。

 都会の強豪クラブに比べれば、大舞台の経験が足りないのは織り込み済み。それでも「何とか食らいついていきたい」と考えるのは、変革期を迎えているクラブの育成への熱意を肌で感じているからだ。指揮官は「チーム自体、会社自体もジャパネットが入ってきて変わってきている。すごくバックアップしてくれている」と感謝を口にする。

 今回の遠征には試合の登録メンバーを上回る25人が帯同。勝敗が決する前から延泊でのトレーニングマッチが企画され、それが終われば海外遠征も控えている。また、大会への出発前も「トップチームのバスで空港まで送ってくれて、トップの選手・スタッフが見送ってくれた」(朝長)と全国に挑む選手たちを感激させる粋な演出も行われていたという。

 そうした姿勢は会社のトップも同じ。「ジャパネットがすごいですよね。息子の旭人社長(ジャパネットたかたの高田旭人社長)は育成にすごく力を入れてくれる。また明社長(V・ファーレン長崎社長)も育成が大好きで、昨日は試合がないのに電話で『勝ったかー!!』って(笑)。『ないです、明日です』ってオチもあったんですけど(笑)」。そうした暖かい光景が目に浮かぶエピソードだが、現場はその期待に応えないわけにはいかない。

「これからグラウンドも4面作ってもらえて、トップチームはスタジアムを作ることが決まっていて、本当に『夢がある』クラブですよね。この日本の中でそんなことができるクラブがどこにあるんだという。彼らがそこにいられて、そこを目指すことができて、一歩一歩近づけていると思います」(北内監督)。名勝負を演じた長崎の挑戦はまだ始まったばかりだ。

(取材・文 竹内達也)
●第43回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会

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