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[MOM3025]佐賀北FW宮崎友伸(3年)_仲間の引退で芽生えた“気持ち”。開花中の184cmが「予想外」2発

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2点目を決めて祝福を受ける佐賀北高FW宮崎知伸(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.3 高校選手権佐賀県予選準決勝 佐賀北高4-1鹿島実・鹿島(新)高 鹿島市陸]

 指揮官が「予想外ですよ」と冗談まじりに述べれば、本人も「自分でもこんなに決められるとは思っていなかった」と素直に頬を緩ませる。佐賀北高を決勝戦に導くヒーローになったのはFW宮崎友伸(3年)。今春にセンターバックからコンバートされ、夏までは試合に絡むことさえ少なかった長身ストライカーだ。

「ずっと学年で一番背が高かった」という身長は順調に伸び、いまや184cm。それでもサッカーという競技において、長身という個性はメリットばかりではない。とりわけ育成年代において、筋肉の成長が長い骨を動かすほどには追いつかず、プレーにムラが出てしまうことも珍しくないからだ。

 昨季までセンターバックを務めていた宮崎も、まさにそういった特徴の選手だったという。前線へのコンバートに踏み切った小比賀徹二監督は「使いにくいから試合に出るところがなく、ミスがあっても一番被害の少ないFWに置いた」と語り、宮崎自身も「高さも活かせていなくて、難しい部分があった」と振り返る。

 それでも全国1回戦でPK負けを喫したインハイ終了後、突如として素質が花を開かせるようになってきた。指揮官が要因に挙げたのは「夏ごろに怪我気味だったが、FWとしての動きを覚えたこと」。セカンドボールへの対応、ハイボールに対する入り方、そういった部分の成長は本人も認めるところだ。

 しかし、最大の変化は「やってやろうという気持ち」(宮崎)にあったという。多くの生徒が進学を目指す佐賀北において、夏の総体というのは一つの分岐点。レギュラーメンバーの中にも、そのタイミングでサッカーを辞める選択をする選手もおり、宮崎のように出場機会の少ない選手であればなおさら悩みどころとなる。

 ただ、宮崎を引き止めたのはチームメートの活躍によって見た全国大会の景色だった。「県大会で優勝して全国に出た嬉しさで、チームの残ろうと決めた」。そんな迷えるFWにはいち早く選手権挑戦を決めていた仲間からも熱い勧誘があり、夢に向かう進路を模索しながらサッカーを続ける道を選んだ。

 そうと決まれば、やるしかない。「インハイまではあまり試合に出ていなくて悔しい思いをしたけど、インハイで勉強とかで3年生の選手が辞めていったこともあって、自分がやんなきゃなという気持ちの変化があった」。そんな経緯を宮崎は「いつも間にかやってやろうという気持ちになっていた」とさらりと表現する。

 殻を破りつつあるストライカーは準決勝の鹿島実・鹿島(新)高戦、チームを勝利に導く2得点を挙げた。それもいずれも前後半立ち上がりという「良い時間」(宮崎)。互いにリスクを負わずに勢いで攻め込みたい時間帯において、混戦からのシュートで持ち前の迫力を活かした形だった。

 宮崎は高校生活を最後に、サッカー競技の第一線からは離れる予定。「映画とかで見た憧れもあって、ずっと海外に関わるような仕事がしたかった」ために関西の語学系専門学校への進学がすでに決まっており、「(アマチュアチームなど)違う形でサッカーと関わりたくなるかも」と余地を残しつつも、夢を追うことを決めた身だ。

 そのため「やってやろうという気持ち」はこの選手権に全てぶつけていく構えだ。「高さはあるので前で収めたり、ヘディングなどクロスに対して強く行きたい」という自らの持ち味に自信を深めつつある17歳は「全国というものをもう一回見たい。チームメートがすごく良いので、もう一回全員で全国に行って勝ちたい」と2週間後の決勝戦へ意気込んだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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