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力まず創造性とテクニック発揮した専修大松戸が夏の千葉王者・日体大柏を延長撃破!

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延長後半9分、専修大松戸高FW稲葉俊介が決勝点

[11.10 選手権千葉県予選準々決勝 日体大柏高 1-2(延長)専修大松戸高 柏の葉]

 選手権も楽しんで戦う専大松戸が、夏の千葉王者撃破! 10日、第98回全国高校サッカー選手権千葉県予選準々決勝が行われ、インターハイ予選優勝校の日体大柏高と関東大会予選準優勝の専修大松戸高が激突。延長後半9分にFW稲葉俊介(3年)が決めた決勝点によって、専大松戸が2-1で勝った。専大松戸は92年度以来27年ぶりの4強入り。準決勝では市立船橋高と戦う。

「打倒・日体大柏」「負けたら敗退」「学校の歴史を変える」といった思いや悲壮感は、ほぼ無かったと言っていい。それよりも自分たちのやってきたサッカーを楽しく、伸び伸びと表現すること。野村太祐監督も「サッカーは創造性のスポーツだと思うので、それを発揮できるようにみんなで良いゲームをしようと言って。いつも通りにやって良く表現してくれたなと思います」と頷いていたように、普段の練習でのミニゲーム同様に創造性とテクニックを発揮した専大松戸が、見事に夏の王者を打ち倒した。

 立ち上がり、やや硬さもあった専大松戸に対し、日体大柏はDF伊藤夕真(3年)やDF吉沢友万(2年)のロングスローでプレッシャーをかける。7分には右ロングスローのこぼれ球をFW耕野祥護(3年)が決定的な右足シュート。だが、専大松戸はDFがブロックして得点を許さない。

 専大松戸のエースFW吉川秀斗(3年)は「きょうみんなと話したのは、『デカイ舞台だけどミニゲームをやっている感じでやろう』と。まず“良いサッカー”をして、結果は次と思っていました」と説明する。

 その専大松戸は“良いサッカー”をするために声を掛け合い、ボールを大事にしながら自分たちのリズムを取り戻す。そして徐々に狭い局面をワンツーやワンツースリーのパスワークで打開するようなシーンを増加。23分には右ショートコーナーから吉川が、直後にも左SB 遠藤太一(3年)が個人技で右サイドを攻略して決定機を作り出した。

「創造性を大事にしろと言われていて、パッと浮かんだことをやるようにしています」というMF山下晶大(2年)やMF小山蒼太(3年)らがセカンドボールを拾い、また巧さも発揮する専大松戸は中盤の攻防などで主導権を獲得。アタックする回数を増やすと38分、左サイドの吉川がシザースを交えたドリブルで縦へ切れ込み、ラストパスを入れる。これが日体大柏DFのハンドを誘い、PKに。キッカーの吉川が冷静に決めて先制点を奪った。

 日体大柏の失点はアンラッキーだったが、気持ちもやや空回りしてリズムを崩しているように映った。後半は前に出て反撃。5分にFW佐藤大斗(3年)の放った右足FKはクロスバーを直撃したが、それでも10分に10番FW長崎陸(3年)を投入すると、その4分後にエースが期待に応える。カウンターから右WB粕加屋光(3年)がハイサイドへ縦パスを入れると、これで快足FW耕野が抜け出してグラウンダークロス。フリーで走り込んだ長崎が1タッチでゴールに沈めた。

 追いつかれた専大松戸だが、後半も変わらず局面に人数をかけた崩しにチャレンジ。また吉川が抜群のキープ力を見せるなど攻めたが、日体大柏の守りは堅く、なかなか崩し切ることができない。逆に日体大柏は右サイドのスペースを狙う耕野を活用したカウンターやサイド攻撃から耕野や粕加屋がクロス。そして長崎がシュートに持ち込むなど得点機を作り出した。
 
 互いに足を攣らせる選手が出るなど総力戦となった。専大松戸は後半終了間際に山下がチャンスを迎えたが左足シュートは日体大柏DF陣が執念のブロック。1-1のまま突入した延長戦で互いに決定機を作ったが決めることができない。それでも、PK戦決着かと思われた延長後半終了間際に専大松戸がスコアを動かす。

 右中間から左前方へボールを運んだMF西野峻平(1年)がMF内田龍馬(1年)へパス。内田が左足を振り抜いてPAにこぼれたボールを西野が素早く回収する。そして中央へ折り返すと、最後は稲葉が左足でゴールに押し込んだ。右手を突き上げた稲葉を中心に緑のユニフォームがスタンドの控え選手たちの下へ。笑顔で勝ち越し点を喜びあったあとも、専大松戸は攻撃姿勢を貫いて3点目を奪いに行く。そして、吉川が決定的なシュートへ持ち込むなど攻め続けた専大松戸が劇的な勝利を果たした。

 基本技術をしっかりと身につけるというベースはあるものの、専大松戸には特別な決まりごとも、指導者や先輩に“やらされる”ということもない。野村監督は「ウチはちょっと変わっているかもしれないですね。オフもたくさん取るし。“やらされる”のを一切なくそうと言って、勝手に伸び伸びとやっているだけです」。周りから見ると異質かもしれないが、ただ楽しく、自分たちの好きなサッカーを磨いてきただけ。その成果が27年ぶりの4強入りにも繋がった。
 
 準決勝の対戦相手は全国有数の名門・市立船橋。山下は「慢心するのではなくて、市船はもっと上手いと思うので、まだまだ上手くなりたい」と語り、吉川も「今のままじゃダメだと思うのでもっと上手くやってやれば、良い感じになると思います」。もっと上手くなりたい、どんな相手でも“良いサッカー”がしたいという野心は持っている。準決勝までの2週間までにもっと上手くなって、この日よりもさらに増えるだろう観衆の前で自分たちのサッカーを楽しむ。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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