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今季4度目の0-0→PK戦…冬の徳島市立も必勝パターン炸裂! 指揮官「でも1点取ってほしい」

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PK戦での勝利に沸く徳島市立高の選手たち

[1.2 全国高校選手権2回戦 尚志高0-0(PK3-4)徳島市立高 駒沢]

 第98回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦を各地で行い、駒沢陸上競技場の第2試合は尚志高(福島)と徳島市立高(徳島)が対戦した。規定の80分間を0-0で終えて迎えたPK戦は徳島市立が4-3で勝利。筑陽学園高(福岡)との3回戦に歩みを進めた。

 夏のインターハイ4強の尚志と、同8強の徳島市立による強豪対決。互いに初戦となったビッグマッチを制したのは夏の“勝ちパターン”を継続させた徳島市立だった。インハイでは1回戦から3回戦まで、全て0-0で迎えたPK戦を3連勝。そんな勝負強さを冬の大舞台でも発揮し、エースFW染野唯月(3年)を負傷で欠いた尚志を初戦敗退に追いやった。

 試合はボールを握る尚志に対し、ロングボールを有効に使ってカウンターを狙う徳島市立という構図。そこでやや優勢を保った徳島市立は前半36分、右サイドを崩したMF大野龍功(2年)を起点にDF川人太陽(3年)が惜しいシュート。またこのプレーで得た右CKから、DF渡邉浩章(3年)のヘディングシュートも尚志ゴールを襲った。

 一方、丁寧にボールをつなぐも危険なプレーが繰り出せない尚志は後半6分、トップ下のMF松島武虎(3年)に代わり、染野の9番を受け継ぐFW阿部要門(2年)を投入。すると9分、インハイ得点王のFW山内大空(3年)が敵陣の混戦の中でタメをつくり、MF今井聖士(3年)の惜しい左足シュートにつなげた。

 徐々に主導権を奪った尚志は後半13分にMF黒田陸斗(2年)、20分にDFチェイス・アンリ(1年)も起用し、さらにギアを上げていく。22分には、MF小池陸斗(3年)のFKがこぼれたところにDF五十嵐聖己(2年)が反応。強烈なシュートが徳島市立ゴールを襲ったが、距離を詰めていた守備陣の身体に当たってボールは枠を外れた。

 GK中川真(3年)、DF田内悠貴(3年)らを中心にしぶとく守る徳島市立は後半34分、平の突破で作ったチャンスに阿部がミドルシュートで仕上げを試みるも、左足はミートせず大きく枠外。そのままスコアは動かず、アディショナルタイムには中川に代わってGK米田世波(3年)を投入し、インハイ3連勝と無類の強さを誇るPK戦に持ち込んだ。

 先攻は尚志。1人目の山内、2人目の吉田奨(3年)が揃って成功し、徳島市立にプレッシャーをかける。一方、徳島市立は1人目のMF阿部夏己(3年)が成功したものの、2人目に立った川人のキックがGK鈴木康洋(3年)に止められ窮地に。そこで輝きを放ったのがインハイでも輝いた“PK専用GK”だった。

 米田は止めることができなかった3人目までキックも、全てボールと同じ方向に反応。その読みを活かすと、4人目と5人目のキックを立て続けにセーブ。3人目と4人目が読まれながらも成功していた徳島市立は最後に田内が落ち着いて決め、今年度全国大会でのPK戦成績を驚異の4勝無敗とし、過去最高タイ3回戦進出を決めた。

 試合後、徳島市立の河野博幸監督は「運がいいだけ。練習もしていない。夏はあれだけPKをさせていただいたので、その経験が活きていると思う。あんなに緊張感がある中で何回も蹴ることないんでね」と苦笑い。「でも1点取って欲しいです。そのために練習しているので…」と0-0という試合運びには満足していない様子を見せる。

 5-4-1の固い守備ブロック戦術が「どんなにいい試合をしても負けたら次がない」というトーナメント仕様であることはたしかだ。しかし、普段のトレーニングで取り組んでいるのは「ボールを奪ってからもう一本前に」という攻撃の出方。指揮官は「この子たちも次のステージで戦うのが目標なので……」と述べつつも、規定の80分間での勝利を求めている。

 なにより駆け引きを擁するPK戦では、キッカーが数をこなすほど対策されるという難しさもある。実際、この日も指揮官はそうした兆候を感じ取っていた様子。「相手も研究されていたのでね。ベンチからも指示が出ていたし、3回もPKやっていれば見られている」(河野監督)。キッカーが「読まれていてもバチッと蹴ってくれた」ことで事なきを得たが、できれば80分間での勝利に近づきたいところだ。

 そんな徳島市立の目標は史上最高のベスト8。OBの河野監督が在籍中には高円宮杯全日本ユース選手権で日本一に輝くなど黄金世代が続いていたが、選手権ではいずれも3回戦敗退。「まだ選手権でエイトがない。僕らの時も3年連続3回戦だったので、次の時も粘ってナンボで行きたい」。今後も無失点は継続しつつ、次戦こそは得点を奪っての勝利を目指す。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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