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メッシの影響で「左」へ。“代表予備軍”京都橘GK前田宙杜は希少な左利きの大型守護神

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京都橘高GK前田宙杜は、ナショナルGKキャンプメンバーにも選出されている左利きの大型守護神

[2020シーズンへ向けて](※京都橘高の協力により、アンケート形式で取材をさせて頂いています)

 190cm近い長身で左利きという希少価値のあるGKだ。京都橘高(京都)のGK前田宙杜(3年)は国体京都府選抜で先発を務め、ナショナルGKキャンプメンバーにも選出されている「大器」。昨年のインターハイ優秀選手であるGK中村青(3年)やC大阪西U-15出身のGK郷田凪砂(3年)らとの熾烈なチーム内競争の中で「(同学年に4人GKがいて)練習から意識してやり合えるというのは刺激にもなる」と意識高く力を磨き、プロ入りという目標にチャレンジしている。

 入学当初はサイズに見合ったプレーができていなかったというが、徐々にハイボールに対する自信が向上。昨年、プリンスリーグ関西で8試合に先発したり、「ベストゲーム」だという船橋招待大会(3月)の東福岡高(福岡)戦で好守を見せて勝利に貢献したりするなど経験を重ねてきた。その前田は、関西トレセンやナショナルGKキャンプでの学びも活かし、できるプレーが着実に増えてきている。

「あと1年でもっと強みにもって行ければ」という今年。現在、新型コロナウィルスの影響で京都橘が休校となり、練習は自主練に限られているが、「焦る部分はありますけれども、今焦らずに自分に目を向ける時間やと思ったらやることはたくさんあるし、練習に戻った時に少しでもみんなとの差をつけられたら良いと思っています」と前向きに捉えている。

 自宅では、京都橘がトレーニングに取り入れているピラティスや体幹、筋トレ、またバスケットボールプレーヤーの弟2人に協力してもらう形で可能な範囲でボールトレーニングも実施。5月6日までの休校期間がブランクにならないように意識して、逆に周囲との差をつける期間にする考えだ。

 自分がチーム内、全国のライバルたちに負けていないという武器は左足のキック。「やっぱり左足のキックですね。パントキックとか自信があります」と強みにしている。経験を重ね、試合の中でその武器をより活かせるようになってきた実感も。珍しい左利きの大型GKだが、元々利き手、利き足は右だったのだという。

「元々右でプレーしていたんですけれども、小さい時にフィールドやっている時があって、メッシに憧れて無理矢理左に直して、足は全部左になって、他も大体左利きになってしまった。ちっちゃい時に左に直しているから(右から左利きになったことを)難しいと思ったことがない」と前田は言う。当初はキックだけ左にしていたつもりが、無意識のうちにボールを投げるのも、字を書くのも左に。家族も驚き、字を書くのは右に戻したが、その他は左のままにしている。

 メッシをマネているうちに“なってしまった”左利き。それを本人はプラスに捉えている。「左利きのGKというだけで周りの目を引く部分があって、注目を浴びるところがありますし、注目を浴びるところをどれだけ利用できるかというのがカギやと思うし、プレーの中でも右を切られていても左で対応できたりするので活きてきているなと思います。今でもあそこで左に直して良かったなと思います」。より注目されるだろう今年、ピッチで左利きの大型守護神という特長をアピールするつもりだ。

 ナショナルGKキャンプでともにトレーニングしたGK神田涉馬(松本山雅FC U-18)が今月、松本トップチームに2種登録。自分もプロに近い位置にいることを再確認した一方、「何がダメなのかというと課題を修正できていないから、自分はまだなのだと思う」と冷静に分析する。

 ポジショニングなどまだまだ改善していかなければならない。また、同じ関西からGK田川知樹(興國高)が横浜FM入りを決めたことも刺激に。焦るつもりはないが、彼らに負けられないという気持ちは持ち続けて「ミスしたらニュースになるくらい安定感がある。身長高いですけれどもそれ以上に大きく見えるプレー、安定したセービングができている」というGKヤン・オブラク(アトレティコ・マドリー)のようなGKになることを目指す。

 今年の目標について、前田は「個人としてはプロに行く気持ちで練習に取り組みながら、その中でも落ち着いて結果を残し続けられるようになりたいです。チームとしては京都3冠を通過点として全国で結果を残すことができれば良いなと思います」。今の時間を大事に過ごし、目標達成のための礎を築く。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2020

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