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JFA独自の緊急融資計2.5億超え…埼玉のプロ多数輩出クラブもコロナ禍直撃「支援ありがたい」

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 日本サッカー協会(JFA)は今月、新型コロナウイルスの影響で経済的な打撃を受けたサッカーファミリーを救うべく、独自の財政支援制度をスタートさせた。それも自己財源で直接融資・給付を行うという異例の枠組み。第一次支援では、街クラブとスクールを対象に無利子・無担保の緊急融資を実施しており、27日までに合計2億5908万円が143団体に貸与されている。

 埼玉県北部地域に拠点を持つ3種(中学年代)の強豪クラブチーム『FCコルージャ』を運営する『NPO法人ゴールドルーツスポーツクラブ』も融資を申し込んだ団体の一つだ。


 同団体はFCコルージャをはじめ、女子チームの『FCシュエット』、4種(小学年代)の『FCチベッタ』、東京都の『両国FC』を傘下に持つ総合型スポーツクラブ。合わせて500人以上が在籍している。FCコルージャの前身から数えると創設35年を迎え、栗原圭介氏(神戸強化部長)、樹森大介氏(水戸ユース監督)、DF小林祐三(鳥栖)、GK新井章太(千葉)、MF内田航平(徳島)、FWオナイウ阿道(横浜FM)ら数多くのJリーガーを輩出したことでも知られている。

 栗原氏と同期にあたる竹田申クラブマネジャーは『ゲキサカ』のオンライン取材に対し、次のようにクラブを紹介する。

「地元の子たちが多いんですが、埼玉県北部という地域からさまざまな選手が頑張ってくれています。そういった選手を励みに目標に向かって頑張れるような、彼らを追いかけられるようなチームを目指してやっていきたいと思ってやっています。またチーム活動だけでなくスクール活動も行っており、強化も普及もやっています。幼稚園や保育園での巡回指導も年間100回ほど続けていて、初めてボールに触る子から競技力志向の人まで、自分の競技レベルによって自分に合わせたカテゴリーを実行できるクラブになれたらと思っています」。

竹田申クラブマネジャー

 そうした地域密着のクラブチームも今回、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた。

 チームでは4月上旬に発令された緊急事態宣言を受け、トレーニングや練習試合などの活動をすべて自粛。これに伴って月会費の徴収を停止した。もっとも、指導者ら40〜50人の専属職員には給与の支払いを続行。そのため、昨年度から繰り越した預金を切り崩す状況が続いている。また経済産業省の持続化給付金(上限200万円)の受給資格もあるが、給付時期の遅れが見込まれていたことから、6月以降の運営資金が不足する懸念が生じていた。

「大変なのはクラブも他の企業も同じですから、できる限りは現状のような形でやろうと考えていました。ただ、どういうやり方が正しいのかはいまも分かっていません。運営費として会費をいただいたほうがいいのか、という部分もあります。ただここまで活動再開が長引くと思わなかったのが正直なところですが、団体としても早く元に戻って欲しいという思いもあり、活動ができない間は会費を頂かないという形としました。できる限りは現状の形でやって、どうしてもできなくなったらお願いしようと……」(竹田クラブマネジャー)。

 そこで飛び込んできたのが、JFAによる新たな財政支援制度の知らせだった。

 JFAは今月7日、街クラブとスクールを対象とした第一次支援の枠組みを公表。その日のうちに仮申請をスタートさせた。「なんとか5月の給料日(25日)までに振り込みをしたい」(田嶋幸三会長)というスピード感のもと、14日に理事会での承認を得ると、15日には第1回審査委員会を開催。給料日を控えた22日、融資を希望した71団体に計1億2788万円が振り込まれた。FCコルージャもこの日、308万円の融資を確保した。

「かなり早いタイミング、それも国民一人が10万円いただけるという特別定額給付金よりも早くいただけたので感謝しています。申請の際も入力したらすぐに担当者の方から連絡をいただいて、素早く話を勧められた。手続きも銀行の融資や政府の持続化給付金よりすごく簡素でした」(竹田クラブマネジャー)。これにより、6月以降の運用資金に一定の目処が立った。

「会社として継続してやりたい思いもあるし、今までやってきたことをなくしてはならないという思いがありました。そこではどうしてもお金は切っても切り離せないものですから、融資いただけるのはありがたい話ですし、そういったところに目をつけていただいたのはありがたかったです」。取材日は融資から週末を挟んだ5月25日。竹田クラブマネジャーは率直にJFAへの感謝を語った。

 奇しくも同日には、埼玉県を含む1道1都3県で緊急事態宣言が解除され、サッカー活動再開に向けての期待が高まった。チームは普段、埼玉工業大、正智深谷高、上里中など地元の学校施設をトレーニングに使用しており、再開許可が出るまでにはもう少し時間がかかるため、「自分たちの活動も大事だけど、周りに配慮していくのが大事」と焦るつもりはない。だが、クラブ職員らは再開後のガイドラインを制定するなど、再開に向けた準備は着実に進んでいる。

 チームのトレーニングが中断している間、クラブはFacebookなどのSNSを活用し、選手たちが公園などで一人で取り組める練習法などを動画で共有する取り組みを続けている。もっとも、感情表現や意思表示を重視するサッカーというチームスポーツにおいて、遠隔的なコミュニケーションには限界もある。竹田クラブマネジャーは選手たちとピッチで再開できる日を心待ちにしている。

「仕事であったり学校の授業であったり事務的なところでは慣れてくれば差し支えなくクリアできるものもあると思いますが、われわれの子どもたちは育成年代の多感期なので顔を合わせないと感じられない部分もあるんじゃないかと思っています。だからこそ早く顔を合わせられるようにというのを望んでいます。何より顔を合わせられないとわれわれも寂しいですし、そこはリモートワークでは解決できない部分じゃないですかね」。


 また、さまざまな形で交流を持ってきたサッカーファミリーの現状にも思いを寄せ、再びサッカーのある日常が戻ってくることを願った。

「1985年の設立から長い年数、いろんな方に支えられて、いろんな仲間が増えてきました。再開後、どんなふうになっているかは見えない部分があるのも正直なところです。ただ、今までやってきた形に早く戻りたいし、支えていただいた方とお会いする機会も断たれているものですから、いろんなチームとの交流もできるようになってほしい。今回のコロナウイルスは人と人とのコミュニケーションを断たれることが大きいじゃないですか。だからこそ、感染を防ぐことは大事ですが、よりコミュニケーションは大事にしていきたいです」

「長くチームをやらせていただいて、いろんなサッカーの仲間たちがどうなのかな、大丈夫なのかなと心配にしている部分もあります。コミュニケーションを取ったほうがいいのかなと思いながらも連絡を控えている部分もありまして。長期休暇には大規模なフェスティバルもやっていて、他のチームの指導者と会えるのも楽しみにしていました。それがいまはできないので、それができるようになってようやくサッカーに関わる仲間が笑顔になれる日が来るのかなと思っています」。

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 JFAは6月末まで、公式サイトに設置した特設ページ(https://www.jfa.jp/ffsupport/)で、第一次支援にあたる融資の申し込みを受け付けている。

 対象はサッカー、フットサル、ビーチサッカーのクラブチーム・スクールで、法人格の有無は問わない。返済期限は最長10年。初回返済は2023年まで延長することができる。利息、担保は必要ない。融資額は法人が最大500万円、任意団体は最大200万円。クラブ規模に応じて基準額が定められている。

 申請条件は以下の①〜④をすべて満たすこと。

①活動実績:2019年の活動実績があること
②クラブ規模:以下のA〜Dの「いずれか」に該当すること
A.有給コーチが少なくとも1名以上いる
B.アルバイトコーチが5名以上いる
C.自己占有しているホームグラウンドを有する
D)毎月の固定的なキャッシュアウトが100万円を超える
③収入減少:4月か5月の月次収入が対前年度同月比で半分以上減少していること
④環境維持:指導者の雇用などのクラブ環境の維持に最大限努めること

 今後は第二次支援、第三次支援として給付制度も検討されている。JFAは今後の持続可能な支援体制の構築に向け、支援金を募集中。JFAへの支援金は特定公益増進法人に対する寄付金となり、税制上の優遇措置が適用される。口座番号は以下のとおり。

銀行名:みずほ銀行(001)
支店名:渋谷支店(210)
預金種目:普通預金
口座番号:3079244
名称:公益財団法人日本サッカー協会 新型コロナウィルス感染症対策支援金口

(取材・文 竹内達也)

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