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1年生チームから半年で選手権3位、高校選抜候補。矢板中央GK藤井陽登は進化続けて「昨年以上」へ

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1年生で早くも選手権準決勝や日本高校選抜候補合宿を経験した矢板中央高GK藤井陽登。2年目の今年はさらなる飛躍へ。

[2020シーズンへ向けて](※矢板中央高の協力により、アンケート形式で取材をさせて頂いています)

 2019年度は青森出身の1年生守護神にとって、文字通り目まぐるしい一年だった。青森県南部、十和田市の十和田中から栃木の強豪、矢板中央高へ進学。9月7日に1年生チームの一員としてルーキーリーグ関東の全国プレーオフに出場していたGK藤井陽登(現2年)は、その一週間後の9月14日に開催されたプリンスリーグ関東・桐生一高戦でAチームの公式戦デビューを果たす。シュートストップや得意のキックでゴールを演出するなど勝利に貢献。本人がベストゲームに挙げるこの試合をきっかけにAチームのレギュラーとなり、全国高校選手権準決勝まで堅守・矢板中央のゴールを守り続けた。

 藤井は「1年間、あっという間だったというのがあります。(入学前に)思い描いていたものよりは遥かに上で自分的にも(気持ちが)追いつかないくらい。(経験のない)大会に向けていくというのは難しかったです」と振り返る。

 選手権栃木県予選決勝(対佐野日大高)のPK戦で2本止めてチームを全国大会へ導いたが、常に自分のミスで負けてしまうかもしれないという重圧を感じていた。全国大会を控えた12月の練習試合で藤井は敗戦に繋がるミス。さすがに、その時は弱気になってしまったという。

 だが、「先輩たちと話をして良い方向に気持ちが向かっていったと思います。『1年生なんだから、失敗もあるんだからどんどん思い切ってやっていけ』と言われて、それが自分にとってとても良い言葉でした」と藤井。全国大会では、ポジショニングや判断のミスがあったものの、その都度先輩たちにカバーしてもらい、また藤井も好守を何度も見せて準決勝進出、3位に大きく貢献した。

 そして、選手権の大会優秀選手に選出され、1年生ながら日本高校選抜候補合宿も経験。「最初は自分よりも良い選手がいっぱいいるじゃんと思ったんですけれども、段々選抜の合宿が近くなってくるにつれて、自覚が出てきて、『1年だけどやってやるぞ』と思っていました」という合宿で高校トップクラスのGKたちとともにプレーをした。

 矢板中央の1年生チームのGKから、わずか半年間で日本高校選抜候補へ大躍進。だが、同合宿では自分らしく思い切り良くプレーしたものの、ビルドアップなどで苦戦し、「NEXT GENERATION MATCH」のメンバーに残ることはできなかった。それでも、「(高校選抜候補合宿では)プロの練習会に行っている松原(颯汰、流通経済大柏高)さんとかも近くで見れて刺激になったので、来年はヨーロッパに行けるようにという目標ができました」。はっきりとした目標を持って2年目のシーズンをスタートさせている。

 現在は我慢の日々だ。高校選抜候補合宿、栃木県新人戦後に左手首の骨折が判明。実は昨年9月のAチームデビュー戦前日に怪我した箇所なのだという。痛みがあったり、なかったりという状況だったため、トレーニング・試合を継続しながら回復を目指していた。だが、どこかで悪化したか、骨折と診断されたことで完全にGK練習を停止。その後はスクワットや腹筋、体幹トレーニングを行いながら、来月の復帰を目指している。

 この1年間ではキックの部分が飛躍的に成長。ゴールキック、FKを何度も蹴り込むことでフォームの改善、またインパクトの感覚を掴み、木村大地GKコーチから滞空時間の長いパントキックを学んでレベルアップさせた。特にキックの飛距離は、全国大会でも一発で局面を変えるような武器に。加えて、クロスの対応などでも進化を実感している。

 まだまだ課題があることも確かだが、金子文三コーチは「(現在身長182cmの藤井は)かなりの将来性があります。注目して欲しいのが、バネとスピードなど抜群の身体能力です。そして、何よりチームで一番遠くにボールを蹴れるキック力。是非一度、プロのスカウトには見て欲しい逸材です」と推薦する。

 選手権の活躍によって、家族や地元の友人、お世話になった人たちを驚かすことができた。だが、藤井の目標は矢板中央から直接プロ入りすること。そして、日本一だ。「青森からそれなりの覚悟を持って来ている。去年以上に気持ちを入れて、選手権では去年以上の成績を残せるように頑張っていきたい」。選手権後に感謝の言葉を掛けてくれた2学年上の先輩たちのためにも日本一を勝ち取り、自身もより上のステージへ羽ばたく。

(取材・文 吉田太郎)
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