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無念の選手権後に「変化」したMF上野一心。帝京長岡屈指の突破力とクロスでゴールもたらす

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帝京長岡高MF上野一心(左)は昨冬の悔しさも胸に成長を遂げる

[2020シーズンへ向けて](※帝京長岡高の協力により、アンケート形式で取材をさせて頂いています)

「責任感が出てきた」「変化してくれた部分がある」。全国高校選手権3位・帝京長岡高(新潟)の古沢徹監督と谷口哲朗総監督はともに、MF上野一心(3年)の「選手権後」の変化について口にする。

 東京の強豪街クラブ・FCトリプレッタジュニアユース時代は、毎試合のように独力で何本もシュートを撃ち込んでいたような強力アタッカー。昨年はチャンスを与えられた選手権予選の初戦、第2戦で連続ゴールを決め、自身のベストゲームに挙げる準々決勝・新潟工高戦も「クロスから左足で理想のゴールを取れた」と3戦連発を記録した。

 そして、プレミアリーグプレーオフ1回戦(対横浜FMユース)では後半開始から右SBに入ると、思い切りよく攻め上がり、守備でも奮闘。だが、地元での活躍を期していたであろう選手権全国大会は、3試合でベンチ入りしながら一度も出番を掴むことができなかった。

 MF谷内田哲平主将(現京都)やFW晴山岬(現町田)、DF吉田晴稀(現愛媛)ら先輩たちは、テクニカルかつ多彩な攻撃と粘り強い守備によって新潟県勢初のベスト4。上野の選手権は自分の現状を目の当たりにして終焉した。だが、その無念が「アタックのパワーはチームの中でも上の方」(谷口総監督)の上野が変わるきっかけになったことは間違いない。コーチ陣の目にも明らかに映るような変化とともに、高校3年目をスタートしている。

 上野はこの1年で「クロス、コンビネーションでの崩しは自信が持てるようになりました。いいポジショニングを取り続けることや、危機察知能力がこの一年で伸びたと思います」と振り返る。試合終盤のスプリントの部分など課題があることも確かだが、谷口総監督は「身体能力が上がった。守備もできるようになりました」と評価。そして、姿勢の部分から変わった上野は今年、左右のSB、またSHで主軸としての働きを期待されている。

 上野にとってのライバルは仇敵の一員だ。帝京長岡が敗れた選手権準決勝にも出場していた青森山田高のMF安斎颯馬(3年)は「幼稚園、小学校のサッカーチームが同じで、1番近くで意識してきた人だからです。今は山田の主軸としてやっていて負けたくない気持ちが強いです。特に山田ということもあって、絶対負けたくないです」という存在。オフ・ザ・ボールの動き出し、ピンポイントクロス、そしてハーフボレーに自信を持つ上野は全国でライバルからのリベンジのゴール、白星を狙う。

 新型コロナウイルスによる活動休止期間はラダートレーニング、チューブトレーニング、筋力トレーニング、そして食事の管理を徹底することを心掛けてきたという。公式戦、チーム練習が十分にできていないことが「一番の悩み」と語るが、悔しさを持って一年をスタートしている上野は努力を惜しまない。

 今年の目標は「自分自身の目標は、怪我をせずに毎試合毎試合ベストパフォーマンスを出すことです。チームとしての目標は日本一!」。ピッチに立つことができなかった選手権の舞台に必ず戻り、昨冬の分も込めて地元で大暴れする。
 
(取材・文 吉田太郎)
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