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後半ラストプレーの決勝点で清水桜が丘撃破!パス繋ぐ藤枝東は「緊張感が楽しいに変わるか」

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後半アディショナルタイム、藤枝東高MF原聖瑠(7番)が左足で決勝ゴール

[9.12 スーパープリンスリーグ東海第2節 藤枝東高 2-1 清水桜が丘高 藤枝東高G] 

 高円宮杯JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ2020 東海は12日、第2節を行い、グループBでは藤枝東高(静岡)と清水桜が丘高(静岡)が激突。藤枝東が交代出場MF原聖瑠(3年)の決勝点によって、2-1で逆転勝ちした。

 全国高校選手権優勝4回の藤枝東と同3回の清水商の伝統を受け継ぐ清水桜が丘との好勝負は、後半アディショナルタイム5分に決勝点が生まれた。ロングボールのセカンドを藤枝東MF宇留間力(2年)が拾うと、その直後、PAへのこぼれ球に原が反応。左中間を縦へ仕掛けて放った左足シュートがゴールを破る。殊勲の背番号7の下へ走り寄る藤色のユニフォーム。これと同時に試合終了の笛が鳴り、ホームの藤枝東が劇的勝利を果たした。

 試合は前半、新人戦静岡王者の藤枝東が1年生レフティーMF出水志耀や金沢内定CB稲葉楽主将(3年)を中心にボールを握るが、大事に繋ぐ意識が強すぎたか、消極的なパスも多く、リズムが停滞してしまう。

 一方、清水桜が丘は左サイドの2年生コンビが存在感。MF深澤空(2年)が推進力のある動きや跳躍力を活かしたヘッドを見せれば、期待の早生まれ左SB塩崎俊輔(2年)が利き足と逆の左足クロスやポゼッション、またインターセプトからの力強いドリブルシュートでポテンシャルの高さを印象づけた。

 昨夏のインターハイで優勝校・桐光学園高(神奈川)をPK戦まで追い詰めている清水桜が丘は、当時からのレギュラー・MF宇山翔太主将(3年)がセカンドボールの攻防での強さ、相手を剥がす巧さも見せる。また、日本代表FWと同姓同名の右MF鈴木武蔵(3年)の力強い突破なども含めた攻撃を展開した。34分には深澤の折り返しのこぼれを拾った宇山が、DFをかわして左足ミドル。これは藤枝東GK西川幸之介(3年)のファインセーブに阻まれたものの、直後に先制点を奪った。

 35分、左のエンドライン際で粘った深澤が、DFの股間を通すパス。これを受けた塩澤が正確な横パスを右中間へ通すと、鈴木の絶妙な落としから10番FW岡本航貴(3年)がダイレクトで右足を振り抜く。鮮やかな1タッチプレーの連続によるゴールでリードを得た。

 一方の藤枝東は前島ツインズの兄・FW前島新汰(2年)の1タッチパスやMF恒岡大雄(2年)のスルーパス、そして金沢練習参加によって攻守両面でプレーに余裕を感じさせる稲葉の左足フィードなどで攻撃に変化を加える。中でも目立ったのが、19年国体優勝メンバー・左SB鈴木登偉(3年)の突破力。迫力のある攻撃参加とパワフルなクロスで相手の脅威となっていた。

 そして前半アディショナルタイム、藤枝東が同点に追いつく。左サイドのMF川口大介(2年)からのパスを受けたMF前島陵汰(2年)が、絶妙なファーストタッチでDFを外してPAへ侵入。そのまま、角度の無い位置からニア上へ左足シュートを叩き込んだ。小林公平監督が「ああいうのをたまに決めるんです」と説明する名門の10番・前島陵のスーパーゴールでスコアは1-1となった。

 藤枝東は後半開始から1人、15分と22分にそれぞれ2人を入れ替え、その攻撃に推進力が加わる。右の俊足SB杉村駿(3年)の攻め上がりなどチャレンジするプレー、パスが増え、“藤枝東らしく”ショートパスを8本、9本と繋いでシュートまで持ち込むシーンもあった。

 小林監督は「ウチなんか(ボールを)持ちたいので、緊張感が楽しいに変わるかどうかで結果は大分変わってくる。持つことにストレス感じちゃったのが前半で、後半は本人たちも『楽しく出来ました』と言っていた。(スーパープリンスリーグは)貴重な公式戦なので、緊張感のある中で何ができるかやること。フィジカルのところだと負けるところがまだある。こだわってやらないといけない」。31分には宇留間のスルーパスからFW小島涼平(2年)が決定機を迎えたが、清水桜が丘はこの日ファインセーブを連発していた藤枝東FC Jrユース出身のGK岡村伸之佑(3年)が立ちはだかる。

 岡村やCB加藤俊介(3年)中心に踏ん張る清水桜が丘は、宇山の好守などからしたたかにカウンター攻撃。チャンスになりかけたシーンもあったが、ゴール方向へ向かうよりもサイドへ展開するシーンが増えるなど、仕留めに行く姿勢が不足して攻め切れない。この日セカンドチームが静岡県Bリーグ(2部リーグ)を戦った清水桜が丘はサブ組の多くが不在で、後半はシュート2本。ラストプレーの失点によって競り負けた。それでも、片瀬晴城監督は「(例年プリンスリーグ東海開幕時の内容は悪いが)先週よりはできたから」。昨年から大きくメンバーが変わり、勝つ術を構築するまではまだ時間が必要。だが、宇山や塩澤ら力のある選手たちを中心に、選手権で飛躍する可能性は十分にある。

 一方の藤枝東は計6人を入れ替えたが、「途中から出る選手もやってくれる」と小林監督が信頼するように、交代組が質を維持。そして、先発同等の力を持つ原の決勝点によって白星を収めた。

 今年は新人戦準決勝で選手権王者・静岡学園高に快勝するなど強さを見せつけ、前評判の高い藤枝東だが、新型コロナウイルスの影響によって約2か月間グラウンドを使用できなかった。まだ新人戦時のレベルを取り戻している最中だ。今は公式戦でチャレンジしながら、小林監督の言う「緊張感が楽しいに変わる」へ。稲葉は「チャレンジしてそのミスを受け止めれれば、他の選手もできると思うので、そういうチーム作りしていきたい」と力を込めた。

 加えて、長期離脱中のFW山田怜於(3年)やFW見崎莉也(3年)が復帰すれば、チーム力はさらに向上する。稲葉は「(選手権に行くためには) 勝負強さが必要になってくると思うけれど、ウチらしくやるのが一番だと思います」。どんな相手でも自分たちのサッカーを貫くこと。そして、15年度以来となる選手権への切符をつかみ取り、今年度は名門・藤枝東が全国で輝く。

(取材・文 吉田太郎)
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