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「熱い」「覚悟が違う」男、流経大柏FW松浦陸翔。日本一のプレス実現して消防士へ

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流通経済大柏高FW松浦陸翔は日本一のプレスを実現して、消防士へ

「自分はこのトップチームで一番下手くそ」と自認するFWが、名門・流通経済大柏高(千葉)にとって欠かせない存在になってきている。

 FW松浦陸翔(3年)は9月13日のプレミアリーグ関東・柏U-18戦で初先発し、同リーグ3試合で計197分間に出場。エースFW森山一斗(3年)や2年生の大器、FW川畑優翔のような打開力やアイディア、決定力はないかもしれない。だが、Bチームにいる頃から「チームに貢献できることを全力でやる」ということにこだわり、チームのために走る、戦うことで評価を高めてきた。そして現在、そのハードワークによってAチームの先発に名を連ね続けている。

 ピッチで最もスライディングしているのが、松浦。前線からパワーを持って相手を追い回し、一歩でも相手にプレッシャーをかけてその精度を乱そうとする。競り合いで接触することも、ユニフォームを汚すことも、仲間の分まで走ることも全く厭わない。

「自分がチームに何をもたらせるかを考えた時に、エノさん(榎本雅大監督)からも『オマエはチームの中で勇気をみんなに与えられるプレーヤーになって欲しい』と言われたことがあって。それが本当に自分の中で心に残っていて、常に『勇気を与えられるプレーヤー』になることを意識して自分はいつもプレーしています」

 榎本監督はその松浦について、「アイツは気持ち良いですよ。他の選手と覚悟が違う」と説明する。松浦の夢は消防士になること。本格的にサッカーをするのは高校までと決めている。流経大柏は“プロ予備軍”とも言える強豪校。千葉内定GK松原颯汰(3年)のように流経大柏から直接プロ入りする選手もいれば、多くの選手は大学を経由してのプロ入りを目指している。その中で「高校まで」と決めている松浦は異質の存在だ。

「自分は大学でサッカーはしないので。ここで区切りをつけてサッカーは辞めるということを決めているので、この高校サッカーで全てを出し切って日本一になります」。大好きなサッカーだが、本気のサッカーは高校まで。その期間が残りわずかだからこそ、大好きなサッカーに全力で取り組むことができる。

 集大成の大会となる選手権(24日に千葉県予選初戦)がまもなくスタートする。その中で松浦が目指しているのは「日本一のプレス」だ。「『日本一のプレス』というのが自分のサッカー人生の中でも目標なので、『日本一のプレス』を実現できたらと思っています」。自分が強い気持ちを持ってその姿で発信して行くこと、チームの勝利に貢献すること、そしてチームで日本一になること。できることを全てやる覚悟だ。

 斉藤礼音コーチは松浦の「サッカーノートがめちゃくちゃ熱い」と教えてくれた。その松浦は、「自分はほとんどメンタルノートみたいになっていますね(笑)。『とにかく自分がチームに貢献しなければいけない』と書いたり、『日本一のプレスをするためにはもっとプレスを進化させないといけない』とか、エノさんに言われた『勇気を与えられるプレーヤーに』というのも毎回ノートに書いていて、そういうプレーヤーにならないといけないと思う」。熱い思いや決意、選手権への覚悟をサッカーノートから表現し続けている。

 流経大柏系列のクラブ・ドラゴンズ柏出身の松浦は、先輩たちが選手権で輝く姿を見てきた。「昔から見ていた流経で、自分が試合に出てあのピッチに立つことは夢だったので。その中でも日本一を取りたいですね。(選手権は)自分たちの最後の大会なので、悔いなく、みんなで笑って終われるような大会にしたいです」。全国決勝まで最大で10試合。もちろん、激しいチーム内競争を勝ち抜かなければならないが、どのような立場になっても松浦はチームに勇気を与え続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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