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“強く&愛されるチーム”目指す札幌大谷、終盤猛攻も一歩及ばず…DF登録の主将FW伊東「来年リベンジしてほしい」

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札幌大谷高FW伊東涼哉(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[12.31 選手権1回戦 札幌大谷高 0-1 大手前高松高 味フィ西]

 後半は試合を優勢に進めた札幌大谷高だったが、最後まで1点が遠かった。かつてFC東京の育成組織でコーチを務め、東京のサッカー聖地・西が丘のテクニカルエリアに立った田部学監督は「もう一つ手が届かなかった」と悔やんだ。

 予選出場のなかった長身ストライカーを先発起用するという大手前高松高の奇策に圧され、前半24分にセットプレーから先制された札幌大谷。「最終ラインが高いか低いかで配球を整理したつもりだったが、ピッチに入ると受けに回ってしまった。背の高い選手に引っ張られてバタバタし、相手のラインが低かったが難しいところに放り込んでしまった」(田部監督)。前半40分間はそう悔やむしかない内容に終わったものの、後半は見事な修正力を見せた。

「相手のボランチとセンターバックが空いている」という狙いをもとに、積み上げてきた技術を活かしたポゼッション攻撃を展開。ダブルボランチのMF岡本大地(2年)、MF高山大樹(3年)、左サイドハーフのFW佐野宏太(3年)が絡んで何度も局面を打開し、DF登録のFW伊東涼哉(3年)、FW高橋颯汰(1年)のシュートにつなげる場面もつくった。

 しかし、最後の一発が決まらなかった。「後半は自分たちの形を通して、中盤で前を向いて決定機をつくったが、自分も含めて決めきれなかったところが敗因」。そう悔やんだ伊東も後半26分の1対1でシュートを打ちきれず。「懐に止めて、流し込めば1点に繋がるチャンスだった。GKも良かったけど、自分のミスだった」と厳しい表情で振り返った。

 それでも5年ぶり3度目の全国舞台、2009年創部の札幌大谷にとっては価値ある財産となった。「全体としてゲームを持っていけなかったことも含め、メンタル的な経験の差。起用も守備的な部分が多かったと反省している」と語った田部監督は「内容は悪くなかったし、十分に渡り合えたと思う。スキのなさ、した高さを積み上げる意味ではいい経験になっている」と先を見据えた。

 伊東の起用法にも、学校の歴史の上で新たなトライがあったという。最前線の選手では珍しい2番を背負っている伊東はDFからコンバートされた選手。「うちでは初めてサイズがある選手が前に入って、新しい形。こういう戦い方で機能させていきたいという選択をした」と明かした指揮官は「彼は周りからの信頼もあるし、大学でも頑張ってくれる」と期待を寄せた。

 また伊東は「北海道大会でも1〜2年生に助けられてここまできた。彼らが背中を追ってというより、横のつながりでここまでこられた。そのぶん悔しさも同じだけ感じていると思う」と後輩たちに感謝。伝統をさらに上積みしていくべく「全国で感じた基準を北海道に帰っても落とさずやり続けて、差を一つずつ消していって、来年この舞台でリベンジしてほしい」とメッセージを送った。

「このようなコロナの厳しい中で行われた大会ということで関係各位、運営いただいた方に感謝したい。雪の中でやっている札幌から来て、このように天気が良くて、素晴らしい中で一緒にサッカーができた。大会は終わってしまったけど、選手たちが一生懸命やってくれた。もうちょっとやりたかったというのがあったけど、戦術や勝ち負け云々じゃなく、ここまでできたことに感謝したい」(田部監督)。

 さまざまな思いを抱いて戦った全国舞台、指揮官の古巣FC東京と同じく「強く&愛されるチーム」を目指す札幌大谷はここでの経験をさらなる成長への糧とする。

(取材・文 竹内達也)
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