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[関東大会予選]より「強い集団」へ。技術に加えて強度、選手層、一体感示した日体大柏が延長戦で中央学院撃破:千葉

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延長後半1分、FW吉田眞翔(7番)の決勝点を喜ぶ日体大柏高の選手たち

[5.2 関東高校大会千葉県予選準々決勝 日体大柏高 2-1(延長)中央学院高]

 より「強い集団」となって、千葉から全国へ――。2日、2021年度関東高校サッカー大会千葉県予選準々決勝が行われ、2017、2018年度優勝の日体大柏高と2019年度優勝の中央学院高が激突。延長戦の末、日体大柏が2-1で勝ち、準決勝進出を決めた。

 ともに怪我によって主力数人を欠いた中での強豪対決は、“千葉のドリブル軍団”中央学院が先にスコアを動かした。前半16分、左SB宇田川海翔(2年)がスピードに乗ったドリブルで左中間から大きく前進。そしてパスを受けた注目10番FW野口滉生(3年)が内側へ持ち込んでからの右足コントロールショットで鮮やかにゴールネットを揺らした。

 この日の中央学院はやや重心を後ろに置いての戦い。MF杉本圭吾(3年)がボランチの位置からスピードに乗ったドリブルで日体大柏守備網を幾度か切り裂いていたが、ボール支配は日体大柏が大きく上回った。

 日体大柏はJ1クラブへ練習参加しているDF土屋巧主将(3年)が3バックの中央でコントロールタワーに。また、攻守両面で堂々の動きを見せる右DF神野匠斗(1年)と左DF神田琉汰(3年)が積極的にボールに絡んで長短のパスを繰り出す。そして、中盤でのテンポの速いパス交換からサイドへ展開。ゴール前のシーンを作り出した。

 日体大柏は質の高い攻撃を続けていたものの、ゴールが遠い。前半終了間際には左CKから神野の放ったヘッドがクロスバーを叩き、直後にMF小村晃太(3年)が狙った右足シュートは中央学院GK笹崎翔矢(2年)のファインセーブに阻まれてしまう。

 それでも、日体大柏は後半、2シャドーを活用する回数を増やしてより押し込む展開に。そして左サイドからWB中村駿輝(2年)が幾度もクロスを上げていく。対する中央学院は期待の183cmCB大磯竜輝(2年)がよく跳ね返していたほか、GK笹崎が安定したキャッチングを見せるなど、我慢強い戦いを見せる。

 だが、後半10分の3人替えでギアを上げた日体大柏は15分、小村の左CKを中央の神田が豪快なヘッドで決めて1-1。「後半はより(守備の)スイッチ入れるところを確認したので、交代選手を含めてしっかりとやってくれた」(根引謙介監督)という日体大柏は、再三敵陣でボールを奪い返し、相手ロングボールのこぼれをMF井上貴輝(3年)らが回収していく。

 コーチを経て今年から日体大柏の指揮を執る根引監督(元柏DF、日体大柏高監督兼柏アカデミーコーチ)は、流通経済大柏高と市立船橋高の千葉2強を上回るためには「(積み上げて来たことに加えて)守備の強度を上げていけないと勝てない」と語る。2015年から柏レイソルと相互支援契約を結び、19年のインターハイ予選で市立船橋、流経大柏の2校を破って全国出場。レイソルメソッドを取り入れ、積み重ねることで力をつけてきたが、プレミアリーグに所属する2校のレベルに追いつき、上回るためにより求めている部分の一つが強度だ。意識して高めていることはこの日も表現され、ボールを奪い取る部分で効果を発揮していた。

 中央学院は杉本やMF伊達優佑(3年)がそのプレッシャーをかいくぐってゴールへ迫る。1-1で突入した延長戦では前へ出て、コンビネーションやセットプレーから相手ゴールを脅かした。一方の日体大柏はこの日6人を交代出場させたが、質が落ちない。その選手層の厚さが白星を引き寄せる。延長後半開始直後、交代出場MF{中原奏}}(2年)が右サイドを縦に抜け出してクロス。これを同じく交代出場のFW吉田眞翔(2年)が右足でゴールへねじ込んだ。この1分後から雷雨によって約23分間の中断。それでも集中力を切らさずに戦った日体大柏が勝利した。
 
 チーム全体で着実に階段を上り続けている。この日、日体大柏はメンバー外の選手が率先してピッチの落ち葉を拾い、水撒き。可能な限りのサポートをしていた。根引監督は「『強いチームというのは、こういう姿だよね』という話はしましたね。メンバー外含めてできることをやる。『強い集団』というものが少しずつ意識というか、生まれてきているのかなと」。技術や判断面の向上に加えて「強い集団」になってきている日体大柏は、千葉の巨大な壁超えにチャレンジする。

 土屋は「前はあまり主体的にできていなかったけれど、最近は僕だけでなくて周りのみんなも声とか出してチーム全体で『流経、市船を倒す』というベクトルが同じ方向に向いていると思っています。今年の目標はプリンスリーグ昇格と関東、インターハイ優勝、選手権千葉県制覇、全国制覇です」。指揮官、主将が認める通り、まだまだやるべきことはある。日常のトレーニング、ピッチ外からより「強い集団」になること。そして、2強不在の関東予選を制し、インハイや選手権で壁を「超える」。

(取材・文 吉田太郎)

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