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力強く、逞しく、貫く”文理サッカー”の深化。日本文理が4-1の快勝で全国に王手!

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スーパーサブのFW熊﨑開世(左から2人目)のゴールを喜ぶ日本文理高

[6.5 インターハイ新潟県準決勝 新潟明訓高 1-4 日本文理高]

 質実剛健を地で行く彼らの勢いに一度飲み込まれたら最後、そこから自分たちのペースを取り戻すのは相当困難なミッションになる。「我々の走る量とか球際、スピードという所の強さは、相手に邪魔されない所の強さなので、そういう意味では例年よりも良い水準にあるかもしれないですね。“文理サッカー”を目指す個々のポテンシャルは、深まっていると思います」(駒沢隆一監督)。5日、インターハイ新潟県準決勝、新潟明訓高日本文理高が向かい合った70分間は、日本文理が4-1で快勝。全国の舞台へ王手を掛けている。

 いきなりの先制弾は開始1分経たず。右サイドで得たスローイン。「1本目だったので、一番投げられる力があって、良いロングスローが投げられたと思います」と笑顔を見せたDF小熊優斗(2年)の“一投目”から、こぼれに反応したMF塩崎温大(2年)のボレーはきっちりゴールネットへ到達。あっという間に日本文理が1点をリードする。

 出鼻をくじかれた新潟明訓も、22分には相手ディフェンスの連係ミスを見逃さず、FW内藤大夢(3年)が同点弾。スコアを振り出しに引き戻したが、5分後には196センチの体躯を誇るストライカーが、圧倒的なポテンシャルを自ら解き放つ。

 27分。チームのキャプテンを託されたDF齋藤優太(3年)が正確なフィードを送ると、走ったFW相澤デイビッド(3年)は強烈なフィジカルを生かしてボールを収めつつ、素早く右足一閃。軌道はゴールを鋭く貫く。「ああいう形で、力で押さえてというのが自分の良い所だと思うので、うまく行って良かったです。あの距離のシュートだったら、ほぼ外さないですね」。10番のゴラッソ。日本文理が再び前に出る。

 29分。ここも196センチが舞う。GKの高橋巧(3年)が蹴り込んだボールを、相澤はシンプルに頭でフリック。走ったMF曾根大輝(2年)が左足を振り切ったボレーは、豪快にゴールへ突き刺さる。「デイビッドが競った裏側に抜け出て、ドンっていうああいう形は出ると思っていました」と指揮官もしてやったり。3-1と日本文理が2点のアドバンテージを手にして、ハーフタイムに入る。

 新潟明訓も3バックにDF角南一太(3年)、DF永冨颯大(3年)、DF加藤大貴(2年)と170センチ前後の3人を揃えており、丁寧なサッカーを志向している片鱗は見せていくものの、相手陣内でボールを動かし切れず、フィニッシュまで持ち込めない。

 交代カードを使いながら、さらなる追加点を狙う日本文理は、後半28分に途中出場のMF河合匠(3年)が枠内シュートを放ち、ここは新潟明訓のGK小関結貴(3年)にキャッチされたが、30分にもやはり途中出場のFW熊﨑開世(3年)のラストパスから、曾根が決定的なシュート。この一撃も小関が阻むも、さらに最終盤へ向けてアクセルを踏み込む。

 35+4分。ゲームを締めたのは、後半からフィールドに送り込まれたスーパーサブ。左サイドを単騎で運んだ曾根が丁寧に折り返すと、熊﨑のシュートは左スミのゴールネットへ鮮やかに飛び込む。ファイナルスコアは4-1。「もちろん簡単な試合はない中で、1試合目(帝京長岡高対開志学園JSC高)でああいう激しい試合を見て、『我々もあんな粘る展開ができるか不安だな』というのが心の中にありましたけど、『やってくれるだろう』と彼らを信じたい気持ちの方が上回っていたかなと思います」という指揮官の想いに選手たちも応えた日本文理が、3大会ぶりの新潟制覇まであと1勝に迫っている。

 17年のインターハイで全国を経験した日本文理。今年のチームには、当時を思い起こさせるような、“ある選手”がいるという。「熊﨑が今、全部途中出場で4戦連発なんですけど、4年前に全国に出た時のフォワードの亀山来駆が、今ちょうど教育実習で戻ってきているんですよ。その代の長谷川龍一とか古木雄大も来ているんですけど、亀山も夏までは途中交代のスーパーサブで、後半から出てきて点を獲って、3戦連発でインターハイに導いたことがあったんです。そんな所も、あの子たちが引き寄せてくれているのかなという、不思議なものを感じたりしていますね」(駒沢監督)。

 その頃から、あるいはそれ以前から、日本文理が持ち続けているスタイルは変わっていない。「やはり相手のボールを奪ってからという所が我々の生命線で、いかに自陣でパスを2,3本繋ごうが、何をしようが、その先に進めないとダメなので、そのパス交換をミスして相手のボールになったとしても、そのボールを奪い返した所がチャンスになるというのは、もう彼らに染み付いている部分なんじゃないですかね」と駒沢監督。1ゴール1アシストで勝利に貢献した相澤は、その内容を『トランジションゲーム』と称していたが、確かに彼らの切り替えの速さは、獲物を狙う“狩り”を彷彿とさせるような迫力に満ちている。

「いくら我々が試合を分析しようが、何をしようが、実際にピッチの中で対峙した子供たちがどんな感覚を持つかという所が一番なので、まずは今のこのスタイルに磨きを掛けて、もう一度全国の舞台に戻りたいなというのが一番ですかね」(駒沢監督)。“文理サッカー”の深化と進化を全国で証明するために、決勝のピッチでも揺るがない自分たちのスタイルを、ただ披露するのみだ。

(取材・文 土屋雅史)
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