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[MOM3491]帝京FW齊藤慈斗(2年)_名門復権のキーマンは、3度転んでも、4度目で仕事を果たすスナイパー

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先制ゴールを挙げてポーズを決めるFW齊藤慈斗(右)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.12 インターハイ東京都予選準々決勝 帝京高 2-0 大成高]

 3度も掴んだ決定的なチャンスは、ことごとく相手の守護神のファインセーブに阻まれる。それでも、カナリア軍団のストライカーを託された男は、虎視眈々と“その次”を狙っていた。「目の前にボールが転がってきて、落ち着いて決めるだけでしたけど、緊張しましたし、逆にアレを外したらもうこれから無理だなと思って…… 落ち着いて決められたのは良かったかなと思います」。3度転んでも、4度目で仕事を果たすスナイパー。FW齊藤慈斗(2年=バディーSCジュニアユース出身)が自らのゴールで、帝京高を準決勝へと導いた。

 後半11分。26分。29分。齊藤はいずれもGKと1対1のチャンスを迎えたものの、大成のGKバーンズ・アントン(3年)の好守にストップされ続ける。「詰めてくるタイミングが上手くて、コースを消されてしまって、シュートが当たってしまいました」。普通であればメンタルが折れてしまってもおかしくないような状況にも、この男にめげる気配はない。

 ヒーローになるタイミングは、唐突にやってくる。37分。左サイドを崩した流れから、DF島貫琢土(2年)のシュートはここもGKに弾き出されたが、そのボールに誰よりも速く反応する。「キーパーとの1対1を外してしまって、チームに迷惑を掛けてしまった分、点を獲らないといけない雰囲気があったので、自分を信じて、ゴールだけを意識してやっていたら、ボールが目の前に転がってきました」

 丁寧に蹴り込んだボールは、ゴールネットへグサリ。その瞬間、ゴール裏に構えていたカメラマンたちの元へと走り出す。「試合が始まる前から、点を決めた瞬間はどこに行こうかと決めていました(笑)」。カメラ目線でポーズを決める。ここにも滲む、根っからのストライカー気質。さらに1点を追加した帝京は、2-0で準決勝進出を手繰り寄せた。

 とにかく、身体の強さが際立つ。小学生時代から中学卒業まで在籍していたバディーSCで身体作りに取り組みつつ、父親からの勧めで体幹の強化にも着手。「結構上のレベルでもフィジカルは負けない気がするので、自信はあります。どんなボールでも収めて、周りを使って、最終的にゴールを決めていく選手だと思っています」と言い切るように、フィジカル勝負ではそう簡単に負けることはなさそうだ。

 昨年12月にはU-15日本代表候補合宿にも参加したが、追加招集の連絡は突然だったとのこと。「いきなり電話が来て、日比さんから代表に呼ばれたと言われて、ビックリしました。嬉しかったですけど、『やっていけるのかな』って思いましたね」と初々しい感想も。知り合いも全くいない中で、FC東京U-18のGK小林将天(1年)とは親交を深めたという。

「代表に入って練習をした中で、周りのレベルがとても高かったですし、まず“止める、蹴る”がしっかりできていて、自分はまだそこが足りないなと思ったので、帰ってきて“止める、蹴る”やフィニッシュの所をしっかり自主練してきました」。今まで味わったことのない環境で受けた大きな刺激は、齊藤の目線を1つも2つも高い位置へと向かわせている。

 参考にしている選手はバイエルンのポーランド代表FWロベルト・レバンドフスキ。「試合前には必ずプレーを見て、イメージトレーニングをしています。体の使い方や最後のフィニッシュの所がとても上手い選手なので、それを真似できたらいいなと思って、ずっと見ています」。世界最高峰のストライカーを仰ぎ見つつ、自分にできることも同時にしっかりと見つめてきた。

 10大会ぶりのインターハイ出場までは、あと1勝。意気込みを語る口調も力強い。「自分たちの力をしっかり出し切って、悔いなく戦って、勝利という二文字を掴めたらいいなと思います」。

 13番を背負ったカナリア軍団のエースストライカー。齊藤が挙げるゴールに、名門の王座復権は懸かっている。

(取材・文 土屋雅史)
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