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伝統の“14番”はレイソル育ち。前橋育英MF徳永涼は主役でも黒子でも存在感を打ち出す

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タイガー軍団の14番を背負うMF徳永涼

[7.24 高円宮杯プリンスリーグ関東第5節 前橋育英 0-0 昌平 前橋育英高崎G]

 このチームで“14番”を託される意味は、もちろん十分に理解している。その上で伝統を背負っていこうという覚悟を携えていることが、何より頼もしい。「最初は指名されてビックリしましたね。でも、(櫻井)辰徳さんも『“14番”の選手は責任や見られる目は絶対違ってくるから』と話してくれたので、あまり気負わずに、しっかり責任を持ったプレーをできるようにということは毎回思っています」。前橋育英高(群馬)のナンバー14を背負う司令塔。MF徳永涼(2年=柏レイソルU-15出身)の自覚が、上州のタイガー軍団の中でも際立ち始めている。

 全国きってのタレント集団、昌平高(埼玉)との対戦となったプリンスリーグ関東第5節。ボランチでスタメン起用された徳永は、「暑かったのでハードワークのところと、自分が目立つというよりは、チームを支えられるようにということを意識してやりました」と、いわゆる“黒子役”を自認してピッチを奔走。その仕事ぶりには山田耕介監督も「昌平の独特の推進力のあるドリブルを徳永涼が結構止めていて、アレは効いていましたね」と言及するなど、中盤で効果的なプレーを披露する。

 後半30分にはMF小池直矢(2年)とのワンツーから、右スミを狙うフィニッシュ。ここは相手GKのファインセーブに阻まれ、「最近自分が前に行けないのが課題で、ちょうどトライできそうなシーンで、あとは最後だけでしたね。GKにやられました。アレは決めたかったです。本当に悔しいです」と首をひねったが、積極的に攻撃にも絡み、スコアレスドローという結果の中でも存在感を発揮した。

 中学時代までは柏レイソルのアカデミーでプレーしていたが、「元々選手権に憧れがあって、育英は監督がボランチを育てるのが上手いというのも知っていましたし、寮生活で自分も自立できるところと、泥臭さのような高校サッカー特有のものを身に付けたいと思ったので、環境を変えました」と群馬の強豪の門を叩く。

 望んで進学してきた高体連は、良い意味で今までと違う環境。「1年生の時は宮本さん(宮本允輝コーチ)に怒られてばかりだったんですけど、自分は今まで指導される中で怒られることもなかったので、そういうところでいろいろなことを吸収できましたし、1年生の時は辰徳さんとか、今だったら(笠柳)翼さんとか、いろいろな上手い人から良いところを吸収できるので、そこは育英に来て良かったなと思っています」とポジティブな時間を過ごしている。

 中でもボランチのポジション争いは、チーム屈指の激戦区。ただ、「自分が育英を選んだ時には、絶対に2年から出るという気持ちを持っていたので、熾烈なポジション争いはわかっていましたけど、試合に出たいという想いは一番強いと思います」と言い切るように、きっちり定位置を確保。指揮官の信頼も掴みつつあるようだ。

 チーム内に最大のライバルがいることも、徳永にとっては歓迎すべき状況だ。「(根津)元輝とはバチバチです。アイツも上手いので、いつも一緒に自主練して高め合っています」。自分の中では「元輝とどっちかだと思っていました」という“14番争い”は制したものの、この日のようにピッチの中で共闘することも、お互いの成長にとっては欠かせない過程になる。

 ここから狙うのは世代別代表。かつての同僚の活躍にも刺激を受けたという。「足立凱が代表に入った時は、『アイツが入ったんだ』と思いましたし、同じレイソル出身の選手たちには絶対負けたくないですね。代表は自分を変えてくれると思うので、目指す所です」。自分で選んだ進路の正しさを証明するために、さらなる高みを目指す気持ちは強い。

「高校に入ってからカウンターの芽を潰すとか、予測の部分で相手を上回るのと、チームに気を遣えるプレーが良さになってきたと思います。もう2年生なので、プロや代表を考えると、個人としてアピールできるようにというのは大きくなっていますけど、まずはチームが勝つことに全力を尽くしていきたいですね」。

 伝統のナンバー14は、主役にも黒子にもなれる逸材。徳永の献身的なプレーが、前橋育英のチーム力をさらに引き上げていくことに、疑いの余地はない。

(取材・文 土屋雅史)
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