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もう一度あの舞台へ帰るために。堀越MF山口輝星はゴールを奪えるアタッカーへ進化中

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堀越高の万能系アタッカー、MF山口輝星

[9.23 高円宮杯東京1部リーグ第2節 堀越 1-6 國學院久我山高]

 全国の舞台で戦った3試合の経験は、身体の中に確かな感覚として残っている。だからこそ、それをさらに更新するためには、再びあのステージに帰るほかに方法はない。

「去年は全国に出て、3年生にああいう想いをさせてもらって、自分はまた選手権に行きたいという想いが強くなったので、ここまでは選手権のことだけを考えずにやってきましたけど、やっぱりまた全国大会に出られるようにという想いはあります」。東京連覇を目指す堀越高のメインキャスト。MF山口輝星(3年=三菱養和調布ジュニアユース出身)は、自分が通るべき道を自らの両足で切り拓いていく。

「相手の運動量に負けていたのもそうですし、1対1のゴール前の対応は完全に自分たちの弱い部分が出てしまったなと思います」。山口はそう振り返って、唇を噛み締める。國學院久我山高と対峙したT1(東京都1部)リーグの前半戦ラストゲーム。あれよあれよと前半の飲水タイムまでに4失点。試合はいきなり0-4からスタートしてしまう。

 40分。左サイドをMF古澤希竜(3年)がドリブルで運び、中央へ送るパスを受けた山口は、前方を一瞬のタイミングで窺う。「やっぱり得点が欲しい中でシュートが少なかったので、枠内シュートをどうしても打ちたい状況で、『枠にはとりあえず入れよう』という意識で打ったのが上手くミートして、良いシュートになりました」。

 ミドルレンジから右足で強振したシュートは、凄まじいコースを辿りながら、ゴールネットへ一直線に飛び込んでいく。その綺麗な軌道は自らも「メッチャ綺麗に見えました」と納得の一撃。ようやく1点を返したこの一撃が、チームメイトに勇気を与えたであろうことは想像に難くない。

 後半9分。1-5と再び4点のビハインドを負った堀越に、2点目を奪う絶好のチャンスが訪れる。2シャドーの一角に入っていたMF東舘大翔(2年)がスルーパスを繰り出すと、山口が素晴らしいタイミングで裏へと抜け出したが、ループ気味に狙ったシュートは枠の左へ外れていった。

「アレは決めたかったですね。もうちょっと浮かせるつもりでしたし、横にパスする選択肢もあったんですけど、自分で行きました。あそこで決めて、流れを持っていければ、まだ勝負になっていた可能性はあったかなと思います」(山口)。最終的にはもう1点を追加され、1-6という大敗を喫することになった。

「チームの悪いところがここで出てしまったなと。攻撃ではもう少し自分も点を決めるような仕事をしたかったですけど、失点から学ぶことが多いので、この失点をどう少なくするかも含めて、理由をみんなで分析して、見直す必要があると思います」。逆に“悪いところ”をきっちりと突き付けられただけに、その改善が結果に繋がる近道だと信じて、日々を過ごしていくしかない。

 インターハイ予選では、勝てば全国大会への出場権を獲得できた準決勝の帝京高戦で、言いようのない悔しい経験を突き付けられる。「本当にあと40秒ぐらい耐え切れたら全国に行っていたという、その中でああいう想いをしたのは自分たちだけですし、あの悔しい想いを知っているのは自分たちだけだと思うので、他のどこのチームよりも悔しい気持ちはわかっていますし、最後の最後まで集中力を切らしてはいけないということは、あの帝京戦から学びました」。加えて自身のプレースタイルにも、この大会は小さくない影響があった。

「アシストは結構していたんですけど、得点をどうにか決めたいなと。今日のシュートみたいに狙えるシーンはインターハイでもあったんですけど、自分からああやってシュートを打つことが少なくて。やっぱりシュートへの意識はインターハイの時より強くなりましたし、練習の時から常にゴールを目指そうと、インターハイに負けてからは意識してきました」。ゴールを奪えるアタッカーへ。さらなる成長を自身に誓っている。

 ここから意識は嫌でも選手権へ向かっていくが、山口の覚悟は既に定まっているようだ。「3年生は最後の大会ですし、もちろん気持ちを入れてやるのは当たり前なんですけど、去年はベスト8まで行きながら、青森山田に負けた時は『こんなに差があるんだ』ってやっぱり悔しくて。青森山田と試合をしたのは、東京のチームだと堀越だけだと思うので、あの経験を生かして悔いのないようにやりたいですね。もう1回対戦したいです」。

『星のように輝いてほしい』という想いを込められた“輝星=てっせい”という名前のように、ピッチで誰よりも輝く一番星のような活躍を、家族も、チームメイトも、山口を取り巻くすべての人が、大きな期待を抱きながら見守っている。

(取材・文 土屋雅史)

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