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生粋の明るさは魅力十分。星稜DF井上陽向大は中学時代の盟友とともに有終の美を飾る

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星稜高のポジティブDF井上陽向大

[9.26 高円宮杯プリンスリーグ北信越第7節 帝京長岡高 0-0 星稜高 長岡ニュータウン運動公園]

 3年間努力を重ねて、ようやく掴んだレギュラーポジション。チーム内のライバルも強力だが、そう簡単に譲り渡すつもりはない。

「インターハイでは、今までのサッカーキャリアで初めて全国大会でスタメンで出ることができて、あと1つ勝てば決勝というところまで行ったことで、そこからの勝負強さを付けたいなって。日本一に対する実感は前よりも湧いていますし、そこで基準が分かったので、それをトレーニングでやるだけだなと思います」。星稜高(石川)の成長著しいセンターバック。DF井上陽向大(3年=サガン鳥栖U-15出身)はさらなる飛躍を自身に課している。

 帝京長岡高(新潟)と対峙したプリンスリーグ北信越第7節。「守備がまずハマって、奪った後にシンプルに背後を突けて、そのままクロスまで行けていたので、前への奪ってからの速さが良かったと思います」と井上が振り返ったように、立ち上がりから縦への速さが生きる展開で、星稜がペースを掴む。

 ただ、なかなかゴールを奪えないうちに、少しずつペースは帝京長岡のものに。個々の上手さが際立つ相手に対し、守備に回る時間が長くなる。「帝京長岡は1人でターンして崩してくるというより、落としたりとかフリックとかで来るので、遅れたら飛び込まずに、そこは距離を空けて割り切って対応して、出された後に背後に走られないようにとか、ワンツーの対応を意識して、隙があったらボールをつついたりとか、対人ではそういうところを意識しました」。

 後半は押し込まれる時間が長い中で、井上もエリア内で身体を投げ出し、必死にゴールを守り続ける。「自分たちも決めれば優位に立てるシーンは多かったんですけど、その分相手にも決定機があって、攻守においてどちらもハードワークの激しい試合だったなと思いました」と振り返った90分間はスコアレスドロー。勝ち点3には届かなかった。

 インターハイではベスト4まで躍進。全国の強豪との距離を測る上でも、貴重な機会になった。「僕らはチームの団結力が強みで、元気が取り柄なんですけど、そこが出せて全国に通用したのは、凄く良かったと思います。でも、通用しなかった部分の方が多いですし、ギリギリの戦いが多かったので、選手権までには課題を1つでも多くクリアしたいなと感じました」。

 抽出できた課題はすぐに修正しようと、練習から取り組んできたことがあったという。「前への対応は僕らの強みなんですけど、背後というのは弱くて、たとえば米子北はワンタッチで、無理してでも入れてくるという感じだったんですけど、ノーモーションからのキックにも対応できるように、常にボールと自分のマークを同一視野に入れて守ることを今日は意識しました。そこはいつもよりはできていたかなと。少しだけ手応えはありました」。DF中村実月(3年)、DF中尾海世(3年)と昨年度の選手権をレギュラーとして経験している2人とともに、さらなる守備の強化にも余念がない。

 中学時代はサガン鳥栖U-15でプレー。U-18への昇格が叶わず、「他のユースとかも考えていたんですけど、『やっぱり高校でサッカーしたいな』と思っていた中で、九州を出たいというのがあって、実月とキーパーの田中(勇輝)が星稜に行くと聞いたので、『自分も考えてみようかな』と思って練習参加に行って、雰囲気も凄く良かったので決めました」と2人のチームメイトともに石川の地へやってきた。

 特にポジションも同じセンターバックの中村は、友人でもあり強力なライバルでもある。「実月とは普通に仲が良くて、中学生から一緒にやっているので、ある程度は実月の長所も短所も分かっていますし、お互いにそこは関係性を持ってやれているなと思います」。インターハイでは、2人が誇った抜群の連携が全国4強の一翼を担ったが、中尾の戦線復帰で定位置争いも熾烈を極めることは間違いない。

 夏の奮闘で手が届きかけた全国の頂上。当然この冬に、そこを目指さない理由はない。「高校最後の選手権は思い出に残る大会でもありますし、自分が全国でどこまで通用するかというのを知れる高校最後のチャンスだと思うので、チーム全体の意識も上げていきたいですけど、夏は実月に優秀選手を獲られてちょっと悔しかったので(笑)、個人の強さを上げていきたいです」。

「太陽に向かって大きく進んでいってほしい」という由来の次男・“陽向大=ひなた”を含め、4人兄弟全員に“陽”の字が付くという家庭で育まれた、生粋の明るさは魅力十分。井上が発するポジティブなオーラは、きっとチームが苦しい時に大きなパワーをもたらしてくれるはずだ。

(取材・文 土屋雅史)
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