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日本一を知る名将の圧倒的な意欲。国士舘・本田裕一郎TAは101回も、102回も、全国を狙い続ける

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テクニカルエリアに立つ国士舘高の本田裕一郎テクニカルアドバイザー

[10.16 選手権東京都予選Bブロック2回戦 駿台学園高 2-1 国士舘高]

 テクニカルエリアに仁王立ちする立ち姿は、以前と少しも変わらない。ウォーミングアップからピッチの中で熱心に指導するのも相変わらず。ただ、その光景を100回の記念大会となる今回の選手権の全国大会で見ることができないのは、やはり寂しいようにも感じる。

「特に100回だから(全国に出たい)というのはないけど、そういうふうに言われるとやっぱり『出たいな』というのはありますね。高校サッカーはちょっと関東勢が低迷しているので、ここらへんで頑張らないとね」。国士舘高を指導する本田裕一郎テクニカルアドバイザー(TA)は、いつでも未来にその目を向けている。

 1回戦で創価高を3-1で下し、勝ち上がった2回戦。国士舘の相手はインターハイ予選でもベスト4に入った、難敵の駿台学園高だったが、1,2年生が半数を占める若いチームは、前半11分に先制。見事なパスワークからFW濱田大和(2年)のアシストで、MF原田悠史(1年)がゴールを陥れる。

「あの子は凄く自信を付けていますよ」という原田を筆頭に、左サイドハーフのMF木原涼太(2年)、FWワフダーン康音(1年)とアタッカー陣は下級生が並ぶフレッシュな顔ぶれ。「1年生と2年生をいっぱい使ってきたし、いいのも出てきているので、前の選手は明るい気がするんですけどね。だいぶ馴染んできましたし」と本田TAも自信を覗かせる。

 守備面にも手応えを掴みつつあったという。「ゾーンでうまく行くようになったんですよ。凄く伸びた。セカンドがことごとく取れるようになったので。ディフェンスがだいぷ良くなってきて、みんなの戦術理解も上がってきていたところだったんですよね」。

 セカンドの回収はドイスボランチを組むMF芦田嶺士(3年)とキャプテンのMF奥崎玲音(3年)が担い、最終ラインではDF堀江翔(3年)とDF山梨滉太(3年)も長身を生かした競り合いに強さを発揮。右SB小山田銀辰(3年)も再三オーバーラップするなど、3年生も着実に成長を見せてきた。

 だが、先制の6分後に同点弾を浴びると、後半残り10分でサイドを完全に崩され、逆転ゴールを許す。終盤は相次いで交代カードを切ったものの、得点には至らず。「だいぶ良くなってきたところだったんだけど、もったいなかった。もう一つ押し切れなかったかな」と本田TA。自身2度目の国士舘で挑む選手権予選は、ベスト16という結果が残った。

「3年生にはかわいそうだったね。残念で落ち込んでいて。全部オレのせいですよ。本当に」と、これがラストゲームとなった最上級生に言及するあたりが“本田先生”らしい。ただ、その気遣いと同時に、視線はしっかりとこの先を見据えていた。

「今度のチームもタレントもそこそこいるんじゃないかなと思うんですけどね。1、2年生は良い経験をしているので、大丈夫だと思います」。今年で74歳とはにわかに信じ難いパワフルさも、柔和な笑顔を交えた語り口も、そこはやはり“本田先生”。身を投じてから半世紀近くが経った高校サッカー界を、さらに良くしたいという意欲は微塵も衰えていない。

「ここを突き抜けないとね」。短い言葉に、国士舘での挑戦への想いが滲む。101回目も、102回目も、そしてその先も、“本田先生”はテクニカルエリアで眼光鋭く、ピッチを見つめ続けるに違いない。

(取材・文 土屋雅史)
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