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「本当に歴史を覆そう」。大森学園は粘る日大二を1-0で振り切り、初の東京4強へ王手!

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大森学園高は堅実なゲーム運びでウノゼロ勝利!

[10.17 選手権東京都予選Bブロック2回戦 日大二高 0-1 大森学園高]

 この仲間たちと新たな歴史を築くために、これまで努力を積み重ねてきた。憧れていた西が丘のピッチにいよいよ王手が懸かる。「これまで大森学園の歴史として、ベスト4進出というのが叶わなくて、“ベスト8止まり”というのが自分たちのレッテルとしてあった中で、『本当に歴史を覆そう』と言ってみんな選手権に挑んでいるので、1年生,2年生、3年生も関係なく、勝利に貪欲にプレーしています」(若原竜貴)。

 17日、第100回全国高校サッカー選手権東京都予選Bブロック2回戦、日大二高対大森学園高は1点を争う好ゲームとなったが、前半30分にMF河合建汰(3年)が決勝PKを沈めた大森学園が、4年ぶりとなるクォーターファイナル進出を手繰り寄せている。

「相手が粘り強いチームだということは練習試合もやってわかっていたので、最初はセーフティーにやりながら、10分過ぎからボールを動かしていこうというのが狙いでした」と小川伸太郎監督が明かしたように、大森学園はシンプルなアタックを繰り出す展開の中、前半12分に決定機。左サイドを飛び出したMF緒方波基(3年)が枠内シュートを放ち、ここはボールも右ポストを直撃したものの、まずは惜しいシーンを作り出す。

 日大二もシンプルなアタックで、前への推進力を打ち出す。馬力のあるFW飯嶋寛晃(3年)とFW坂内哉仁(3年)の2トップがボールを引き出し、右のMF川島颯太(3年)、左のMF野澤真名(3年)を使うサイドアタックも。18分に坂内が放ったシュートは枠の右へ外れ、24分に再び坂内が枠へ収めたシュートは大森学園のGK今井颯太(2年)がキャッチしたものの、ゴールの匂いを漂わせる。

 互角に近い流れの中で生まれた先制機。30分。大森学園がエリア内へ侵入すると、主審は日大二ディフェンスにハンドがあったというジャッジを下し、ペナルティスポットを指し示す。キッカーは10番を背負う河合。右スミに蹴り込んだボールはGKの逆を突き、ゴールネットに到達する。「力が拮抗している時間帯に、先制点が獲れたことは良かったと思います」と話したのはCBの若原竜貴(3年)。大森学園が1点のリードを手にして、最初の40分間は終了した。

 後半も立ち上がりから、お互いにチャンスが訪れる。6分は日大二。左サイドで得たCKを野澤が蹴り込むと、ニアに飛び込んだ飯嶋のシュートは今井がファインセーブで阻止。9分は大森学園。左サイドを縦に運んだMF柴崎大翔(3年)のシュートは、日大二のGK松田大輝(3年)がこちらもビッグセーブ。12分も大森学園。河合の縦パスを、キャプテンマークを巻くFW齋藤武(3年)が丁寧に落とし、MF原田大聖(1年)が枠を越えるシュートまで。次の得点を巡る双方の熱がぶつかり合う。

 以降はやや押し気味にゲームを進める大森学園の守備陣が、高い安定感を披露する。「とりあえず1-0で勝っていて、失点しなければ勝てるという状況だったので、とにかく自分は点を取られないことだけを考えて、2点目は信頼している前の選手に任せようと思っていました」と語る若原とDF大澤郁輝(2年)で組んだCBが中央を固め、相手の攻撃の芽を1つずつ的確に摘んでいく。

 諦めない日大二も、右SBの内村良汰(3年)、DF川瀬賢輔(3年)とDF抜田胤亮(3年)の両CB、ボランチのMF吉岡雅仁(3年)と3年生を軸に粘り強い守備で追加点を許さず、MF竹山悠誠(3年)やMF岸建伍(3年)とこちらも3年生の交代カードを切って、同点への意欲を前面に押し出した。

 だが、2分間のアディショナルタイムが経過すると、試合終了を告げるホイッスルが響く。「今日の一番大事なことは勝つことだったので、それがクリアできて、今日だけは一旦褒めたいですね。ベンチの子たちも頑張ってくれましたし、特にディフェンス面は頑張ったと思います」と小川監督も選手を称えた大森学園が1-0で競り勝ち、次のラウンドへと勝ち上がった。

「実はリーグ戦でも必ず1失点はしていたんです。5点獲っても1失点、4点獲っても1失点で、1回戦も5-1だったんですけど、今日の勝因は本当にディフェンス陣が頑張って、ゼロに抑えたというところですね。今シーズンでは稀に見る失点ゼロで終われました(笑)」と指揮官が語った通り、大森学園は今年に入って公式戦2度目の“失点ゼロ”がとにかく大きかったようだ。

 ディフェンスリーダーの若原も「1回戦は5-0で前半を折り返したんですけど、後半の集中が切れたところでまた失点してしまったので、今日は1試合を通してしっかり締めていこうということで、試合前からずっと話していました」と言及。追い求めてきた完封勝利を達成した充実感が、試合後のチームには漂っていた。

 大森学園は2017年度の選手権予選でベスト8に入っており、今年の3年生はそのチームの躍進を知って入学してきた世代。ここ2年はなかなか目立った結果を残せなかったが、彼らが最高学年になったタイミングで、歴史を塗り替えるチャンスがやってきた。

「今の3年生たちはこの2年間で良い結果を残せなかったので、このベスト8がスタートラインだと思ってやってきたところがありました。1つの自分たちのノルマはもう達成したので、次の試合は今までやってきたことが発揮できるように、楽しむと言ったらおかしくなってしまうかもしれないですけど、呪縛が解けたような、攻撃的なサッカーを見せたいなと思っています」(小川監督)。

 若原も確固たる決意を口にする。「念願のベスト4、西が丘に立つという目標を掲げてチームとしてもこれまでやってきたので、無失点を継続できるように、またこの1週間しっかりトレーニングをして臨みたいです。やるからには勝つしかないので、勝ちに貪欲に、最後まで諦めずに、ゴールを目指して頑張りたいと思います」。

 進撃の続く大森学園。新たな歴史の1ページをめくった先には。西が丘の緑の芝生が待っている。

(取材・文 土屋雅史)
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