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「楽しいサッカー」の象徴的存在。専修大松戸MF内田龍馬は歴史を変える先導者に

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専修大松戸高の10番を託されたプレーメイカー、MF内田龍馬

[10.30 選手権千葉県予選準々決勝 敬愛学園高 1-3 専修大松戸高]

 サッカーは楽しいものだ。特にこのチームでやるサッカーは楽しい。その中でも10番を背負うこの男の躍動感は、ある意味でそれを何よりも象徴しているのではないか。

「楽しいです。サッカーなら全部楽しいので、いろいろなこともやれますし、自分のドリブルが成功した時とか、チームが勝った時とか、全部楽しいです。チームのカラーも自由な感じで、そこで技術を伸ばしたり、サッカーを楽しめています」。専修大松戸高のプレーメイカー。MF内田龍馬(3年=FCクラッキス松戸出身)は今、サッカーをプレーする意味を強く噛み締めている。

 専修大松戸の中盤はダイヤモンド型。「ゴールが狙いやすいところですかね。ゴールが中心になって、そこから攻撃的に行けるシステムだと思います」とそのメリットを語る内田が、この日の敬愛学園戦で託されていたのは、いわゆる中盤の底。“アンカー”と呼ばれるポジションだ。

「まずはスライドで遅れないように、ということを考えていますね。自分が遅れると相手と入れ替わったりしてピンチが多くなるので、スライドを最優先に意識しています」。システム上、空きがちな自分の横のスペースもしっかり管理しつつ、機を見ては積極的に前線まで駆け上がっていくプレーに、ダイナミックさが滲む。聞けば納得。本来はこの位置の選手ではない。

「1か月前ぐらいから始めました。キャプテンがケガをしているので、その時からやっています。もともとはトップ下ですね。でも、中学の時にボランチをやっていたので、何となくはできると思います」。能力の高さで十分にアンカーもこなしているものの、「チャンスがあれば1点獲りたかったですね」という攻撃性は、どうしても隠せない。

 FW石津皓太(3年)にFW寺島サフィール(3年)と、2トップのゴールで2点をリードしたものの、カウンターから1点を返され、2-1というスコアで終盤は推移していく。GK平野伊吹(2年)のファインセーブも飛び出すなど、1点差の緊張感が続いていた流れを、10番の右足が切り裂いた。

 後半40+3分。左サイドで得たCK。スポットに「終盤も自分たちらしくまずは落ち着いて、相手に飲まれないようにして、そこで追加点を獲って突き放そうと思っていました」という内田が向かう。狙ったのはインスイングでの高いボール。「だいたい狙い通りでした」という軌道に、DF飯塚琥秋(2年)が完璧なヘディングで応える。大きな、大きな追加点。内田のアシストがチームにようやく安堵をもたらし、3-1というスコアの勝利で準決勝進出を引き寄せた。

 この試合も負傷明けのキャプテン・MF藤本飛龍(3年)の投入後に、内田は2トップ下へスライド。持ち前の攻撃性を発揮していた。「参考にしているのはフォーデンですかね。持ち方とか上手いので、あのぐらいの力の抜けた感じがいいなと思います。自分もトラップやドリブルの技術には自信がありますね。得点も獲りたいですけど(笑)」。イングランド代表のヤングスターを参考に、何でもできるアタッカーを目指している。

 最近のゲームではキャプテンマークを巻くことも増えたが、トレーニングの雰囲気にも十分に手応えを感じている。「後輩とのバランスもいいと思います。言いたいことも言ってもらっているし、言い合える関係ができているんじゃないかなと。上下関係もなくて、“横関係”みたいな感じてす」。サッカーを楽しむ基本スタイルの中で、チームの一体感もより醸成されてきた。

 初の全国まではあと2勝に迫っているが、内田のスタンスも、チームのスタンスも、変わるはずがない。準決勝への意気込みも、実に軽やか。「自分たちらしくサッカーを楽しんで、その上で勝てたらいいなと思っています」。

 何かが変わる瞬間には、“先導者”が必要だ。サッカーを楽しむ気持ちを常に携えている10番が、専修大松戸の歴史を変える存在になる可能性は、十分にある。

(取材・文 土屋雅史)

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