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「サッカーって最高で、素晴らしい」。専修大松戸はとにかく楽しむサッカーで千葉4強へ!

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ゴールと同時に足が攣ってしまったFW寺島サフィールへ専修大松戸高のチームメイトが駆け寄る

[10.30 選手権千葉県予選準々決勝 敬愛学園高 1-3 専修大松戸高]

「ウチは前向きなチームだから、こういう素晴らしいピッチで、天候に恵まれて、コロナとかいろいろあったけど、やっぱりサッカーができるという幸せに、今は凄く満ちていると思います。やっぱり『サッカーって最高だな』って。ベンチに座ってそればかり考えていますよ。『サッカーって素晴らしいな』って」(専修大松戸高・野村太祐監督)

 サッカーって最高で、素晴らしい。30日、第100回全国高校サッカー選手権千葉県予選準々決勝、敬愛学園高専修大松戸高が激突した一戦は、2トップのFW石津皓太(3年)とFW寺島サフィール(3年)のゴールで、専修大松戸が2点を先行。敬愛学園もキャプテンのFW怒賀龍一(3年)が1点を返したものの、終了間際にDF飯塚琉秋(2年)が追加点を挙げた専修大松戸が3-1で勝利。千葉4強を勝ち獲っている。

 いきなりの決定機は前半4分。右サイドから今大会初スタメンのMF小川望来(1年)が放ったシュートは右ポストを直撃したものの、2トップ下に入った1年生アタッカーが好トライ。さらに23分にも左サイドで石津が決定的なシュート。ここは敬愛学園のGK秋元凌乙(2年)がファインセーブで応酬したものの、まずは「2トップからボールを奪いに行く、奪ったらシンプルにゴールルートを目指す」(野村監督)というアグレッシブさで専修大松戸がペースを掴む。

 一方の敬愛学園は「やっぱり上手いからボールを動かすのも凄く速いですよね」と敵将も認めたように、DF野﨑翔太(3年)とDF佐藤朝陽(2年)のセンターバックコンビ、GKの秋元というトライアングルを始点に、丁寧にビルドアップするスタイルを徹底。右のMF石井達也(3年)、左のMF清宮志孔(3年)と両ウイングを生かすアタックもちらつかせながら、前進する機会を窺う。前半はやや専修大松戸が手数を多く繰り出したものの、スコアは動かず。0-0で40分間を終えた。

 先制点は「昨日一昨日ぐらいから『ちょっとやってみない?』みたいな感じで練習しました」(寺島)という飛び道具から。13分。左サイドで専修大松戸が得たスローイン。MF南徹汰(2年)が投げ入れたロングスローから、ルーズボールに反応した石津はシュートにトライ。DFに当たったボールは、シューターの意志が乗り移ったかのようにゴールへ転がり込む。「ロングスローなんて初めてやったし、普段から練習しているわけではないからビックリしています」と指揮官も笑顔を見せた“選手主導”の隠し技がこの大事なゲームで結実。専修大松戸が1点のリードを奪う。

 次に輝いたのは「点を獲るのが自分の役割」と言い切るストライカー。21分。MF西野峻平(3年)のパスカットから、後半に投入されたMF角川佑輝(3年)が右足アウトで正確なスルーパスを右へ。走った寺島は「相手が結構戻ってくるのが速かったので、『止まれないかな』と思って」冷静な切り返しでマーカーを外すと、左足で巻いたシュートを左スミのゴールネットへ滑り込ませる。「本当はスタンドにも行きたかったんですけど、攣っちゃって動けなかったですね(笑)」と振り返るスコアラーは、ゴールの瞬間に両足を攣ってしまい、直後に交代となったものの、貴重な貴重な追加点。専修大松戸のリードが2点に開く。

 小さくないビハインドを負った敬愛学園は、スタイルを貫き続ける中で、カウンターから決定的なチャンス。23分。インサイドハーフのMF国井颯勇(3年)が繋ぎ、右から途中出場のFW鈴木凜生(3年)が中央へ送ると、怒賀のファインシュートがゴール左スミへ吸い込まれる。2-1。たちまち1点差。試合の行方はまったくわからない。

 守護神も奮闘する。専修大松戸は29分に石津が、36分には角川が決定的なシュートシーンを迎えるも、どちらも秋元がファインセーブで凌ぎ、一縷の望みを残したままで迎えた終盤には、敬愛学園が生み出した絶好の同点機。39分。鈴木の縦パスから、怒賀がGKと1対1を迎えたが、この大ピンチに専修大松戸のGK平野伊吹(2年)が超ファインセーブ。チームの危機を救う。

 勝敗が決したのはアディショナルタイムの40+3分。専修大松戸は「相手に飲まれないようにして、そこで追加点を獲って突き放そうと思っていました」という10番のMF内田龍馬(3年)が左CKをファーまで正確な軌道で届け、舞った飯塚のヘディングがゴールネットを揺らして勝負あり。「点を入れた後にどれだけ集中力を高められるかという部分では、今日の課題の1つかなというのはあるんですけど、3点目が入ったのはチームとしても大きな1点だったので、今日の試合では点数が獲れたということが大きかったですね」と終盤に投入されたキャプテンのMF藤本飛龍(3年)も言及した専修大松戸が3-1で勝利を収め、2年ぶりとなるベスト4進出を手繰り寄せた。

「楽しいです。サッカーなら全部楽しいので、いろいろなこともやれますし、自分のドリブルが成功した時とか、チームが勝った時とか、全部楽しいです。チームのカラーも自由な感じで、そこで技術を伸ばしたり、サッカーを楽しめています」(内田)「練習からメニューはあるんですけど、全部自分たちで考えていますし、そんなに詳しい戦術とかはなくて、中で自由にやるというスタイルでやっているので、試合も楽しくやっています」(寺島)。専修大松戸は選手たちが声を揃えて、サッカーが楽しいと口にする。

「僕らはどっちかと言うと、サッカーは整理しない方がいいんじゃないかと。のびのびと選手が創造性を持ってやった方がいいんじゃないかと思っていて、サッカーは選手のモノだから、あまりいろいろなものを奪い過ぎないのがウチの良さかなと思っています」と話す野村監督は、続けて「敬愛学園さんもやっぱり上手いから、ボールを動かすのも凄く速かったですけど、ウチもそれに負けないくらいスライドも速くして、球際も負けないようにして、縦パスに厳しく行くというのを徹底して、よくやってくれたと思います。それも自分が指示として言ったわけではないんですけど(笑)、選手が言っていました。だから、素晴らしかったと思います」と選手の自主性を称えていた。

 サッカー経験者ではないという指揮官の話は多岐に渡り、非常に興味深い。内田が「いろいろな発想を持っている人です。自分たちが全然考えないようなことも思っていたりして、それで価値観が変わることもあって、気持ちの面でもいろいろな考え方を教えてもらえるので、凄く良いです」と確かな信頼を明かせば、「お互いにリスペクトし合っていると信じたいですね(笑)。でも、自由にやらせてもらっているとは感じていると思います。ウチは毎年良い子が多いから、僕は選手に怒ったことがないです。ミーティングもあまりやらないし、のびのびやっていこうと。思い切ってチャレンジしようと。それが一番かなという感じで自分はやっています」と野村監督も笑顔で選手たちへの想いを言葉にする。

 次は準決勝。それでも、彼らに気負いは微塵も感じられない。「1試合1試合サッカーを楽しんで、良いサッカーをするというだけですね。こっちは楽しく、軽やかにサッカーをやりたいと思っています。1試合1試合ベストゲームを持ってくる。それだけですね」(野村監督)。

 簡単な試合になるなんて思っていない。でも、楽しむ。専修大松戸らしく、楽しむ。その上で勝利が付いてきたら、それはもちろん最高だ。

(取材・文 土屋雅史)

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