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「いつもこぼれ球が来る」嗅覚の持ち主。専修大北上FW佐藤裕翔は“専北のアグエロ”襲名に意欲

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専修大北上高が誇るストライカー、FW佐藤裕翔

[10.31 選手権岩手県予選準決勝 専修大北上高 3-1 盛岡市立高 いわぎんスタジアム]

 9番を背負っているからには、自分の為すべきことは決まっている。とにかく、ゴール。何をおいても、ゴール。それだけだ。「自分が点を獲れればチームは負けないと思っているので、まずはゴールを獲るということを一番の目標にしています」。

 専修大北上高の点取り屋。FW佐藤裕翔(3年=奥州市東水沢中出身)はゴールで自らの存在価値を証明し続ける。

 全国まであと2勝に迫った準決勝。盛岡市立高もしっかりとゲームに入ってきたことで、ややロングボールが飛び交うような展開に。前線で構える佐藤にも良い形でパスは届かず、時折顔を覗かせる持ち味のパスワークも決定的なチャンスには繋がらない。

 前半もほとんど終わり掛けていた40+2分。専修大北上が積み重ねてきた連携の凄味が、一気に爆発する。「こぼれ球が自分のところに来て、まず見えた(阿部)翔輝は結構自分の動きをよく見てくれて、パスとか出してくれるので、落としてもらえると思いました」と振り返る佐藤は、まずMF阿部翔輝(3年)とのワンツーで1つめの“壁”を突破。

「今度は(吉武)皇雅が間に入ってきて、そのまま落としてもらってダイレクトで打とうと思ったんですけど、落としがちょっとズレて。でも、良いところにパスしてくれましたね」。少しコントロールを乱したFW吉武皇雅(3年)とのワンツーも、結果的に2つ目の“壁”を突破すると、目の前にはGKとゴールが広がる。

「あとは決めるだけでした。良い形で決め切れて安心しました」。左足で貫いたゴールネット。これで今大会は初戦から3戦連発。この1点を皮切りに、チームも3ゴールを奪い切って勝利を手繰り寄せ、3年連続となる決勝進出を勝ち獲った。

 インターハイでは大きな“転機”を手に入れる。初戦で対戦したのは優勝候補の前橋育英高(群馬)。1点ビハインドの状況で、佐藤はファインゴールを叩き込んだものの、チームはそこから失点を重ね、終わってみれば1-7の完敗。全国レベルの実力を、嫌というほど思い知らされた。

「あの負けからチーム全員で、基準をあの前橋育英よりも上というか、そのぐらいにしていかないと全国では勝ち上がれないと思って、練習に臨んできました。特に練習中の声もプラスの声がみんな出てくるようになってきたり、最近は大会前なので円陣を組んでから練習に取り組んだりして、チーム一丸となって戦えていると思います。自分もあの試合から、ゴールを獲ってチームを勝たせるという想いが強くなりましたね」。 悔しい“転機”は、チームに大きなエネルギーを与えてくれている。

「いろいろなゴールシーンを試合前に振り返ったりして、いろいろなイメージを持って、どんなところからもシュートを打っていこうという気持ちで試合に臨んでいます」という佐藤だが、とりわけお気に入りの選手がいるという。

「アグエロ選手の動きを参考にしています。身体はそんなに大きな方じゃないんですけど、シュートのセンスとか、『そこで打つか!』みたいな感じのプレーを真似していきたいなと思って、ユニフォームも買いました。みんなにはたまに練習でふざけて『アグエロだ』みたいに言われます(笑)」。

 残るは決勝。全国が懸かった一戦であっても、佐藤の為すべきことは変わらない。「決勝はそんなに簡単な試合にはならないと思うんですけど、チーム一丸となって、とにかく勝利に集中して、もちろん守備とか声とかでチームの士気を高めていくことも役割ではあるんですけど、一番は自分が点を獲って優勝を掴み取りたいと思います」。

 ふとこぼした言葉が印象深い。「よくわからないですけど、運も味方に付けているのか、いつもこぼれ球が自分のところにこぼれてくるんですよね」。ならば、次の試合でも見せてもらおう。“いつものこぼれ球”をゴールへ流し込んだ、ストライカーの歓喜の姿を。

(取材・文 土屋雅史)

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