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[MOM3630]武南FW櫻井敬太(2年)_外しても挫けず、ゴールへ。後半40分に劇的V弾!

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後半40分、武南高FW櫻井敬太が左足で決勝ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 選手権埼玉県予選準々決勝 細田学園高 0-1 武南高]

 外しても、外しても、ストライカーは挫けなかった。0-0で迎えた後半40分、武南高は敵陣中央でボールを奪い返すと、左中間で左WB重信有佑(2年)からのパスを引き出したFW櫻井敬太(2年=前橋FC出身)が縦へ持ち出す。背番号9は鋭い仕掛けでDFの前へ出ると、そのまま左足一閃。強烈な一撃をニア上へ叩き込んだ。

 アディショナルタイム突入直前の劇的な決勝点。祝福を受けた櫻井は、「ニアハイしか空いていないと思って、ニアハイに打ち込もうと。決定力はまだまだ全然課題なんですけれども、最後冷静に押し込めたので少し成長できたなと思っています」。嬉しい気持ちと同時にこみ上げてきた安堵感。前半、後半にもビッグチャンスがありながら決められていなかったが、それでも諦めずにゴールへ向かい、破って見せた。

 内野慎一郎監督は「一番シュート入っていなかったんですよ。こういう時に決めてくれましたよね。それは本当に褒めてあげたいと思います。みんな笑っていましたけどね。『アイツが決めるのか!』と」と微笑む。櫻井は特に春以降、シュートの部分で不振に。武南は練習時間の多くをシュート練習に割いてきたが、なかなか精度は上がらず、先輩からも叱咤されていた。

 指揮官が櫻井を起用している理由は、得点への期待だけではない。「調子が悪い時でも前でスピード感はあるので、前から追うとか、瞬間的にかわすとか、得点だけを求めている訳ではないです」。この日も見せていた縦への推進力や前線へのハードワークに加えて彼の魅力は最近、全国的にも減少している感のある驚くような一撃。前半にはオーバーヘッドでシュートへ持ち込もうとしたように、意外性やゴールへの姿勢も買われているところだ。

 一発で仕留められれば最高だが、それができないならばチャンスの数やシュートを増やすしか無い。櫻井は「10本打ってダメなら30、40どんどん打つ。そういう気持ちでやっていました。俺が挫けたら、チーム絶対に負けるので、是が非でも、どんな形でもゴールに結びつけてやろうと思ってやっていました」。以前は1本シュートを失敗すると、次は譲ってしまうところがあったという。だが、チーム内にもライバルがいる中、現在はFWとしての責任感を持って、決めるために何度でもチャレンジしている。

 FWとしての成長も実感している。前橋育英高(群馬)のエースストライカーとして選手権で得点王と日本一を獲得したFW飯島陸(現法政大、甲府内定)が憧れの存在。小学生時代にプレーしていた児玉ディパーチャFC(埼玉)の先輩でもある飯島のプレー動画を何度も見て、駆け引きを真似する形で磨いてきた。

 調子を崩していた夏頃に「どう乗り越えられるかで変わる」と動き出しや決定力向上と、自分の良さである推進力をより表現することを目指してトレーニング。この日、上手くスペースを見つけてボールを受け、仕掛けからシュートを決め切った部分はその成果でもあった。

 伝統校・武南の復活Vまであと2勝。「ずっと全国から遠ざかってきて、武南を全国に行かせようというのは入学した時の目標だった。強い武南を作るために、自分が活躍してチームを勝たせて上げられれば良い」。チームのために献身的に走ることを変えるつもりはない。その上で何度も何度もシュートチャンスを作り出し、決めて武南を全国へ導く。

(取材・文 吉田太郎)
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