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伝統校は「武南のスタイル」で、勝つ。新鋭・細田学園突破し、15年ぶりVまであと2勝:埼玉

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後半40分、武南高FW櫻井敬太(9番)が決勝点

[10.31 選手権埼玉県予選準々決勝 細田学園高 0-1 武南高]

 武南のスタイルで、勝つ――。第100回全国高校サッカー選手権埼玉県予選準々決勝が10月31日に行われ、細田学園高武南高が対戦。武南が1-0で勝ち、西武台高との準決勝へ進出した。

 3年連続の準々決勝進出で初の4強入りを狙う新興勢力・細田学園と、15年ぶりの選手権出場を目指す伝統校・武南との8強決戦。立ち上がりを過ぎると、「失わずに主導権を握って、どこからでも攻める」(内野慎一郎監督)の武南が攻勢を強めた。

 Jクラブも注目した才能・DF中村優斗主将(3年)をはじめ、攻守に技術力高い選手が並ぶ武南はボールを支配し、快足MF水野将人(3年)の躍動感ある動きや10番MF松原史季(1年)の果敢な仕掛け、いずれも縦への推進力ある右の江川颯軌(2年)と左の重信有佑(2年)の両WBの攻撃参加をアクセントに攻めてシュートを連発した。

 11分には、江川のクロスからFW櫻井敬太(2年)が決定機を迎えたが、シュートは枠外。1分間にシュート1本ペースの時間帯を続けたものの、ここで1点を奪い切ることができなかった。一方、細田学園は自陣深い位置から丁寧にボールを繋ぎ、3試合連続2ゴールのFW金子弘輝主将(3年)とFW滝澤夏惟(2年)へ効果的なロングボール。これによって、武南の中盤を押し下げることに成功した。

 試合は徐々に拮抗し、互いにポゼッションしながら攻撃。武南は連係ミスもあったが、この日普段の左ではなく3バックの中央に入った中村が守りを安定させる。攻めては前半だけでシュート10本。FW櫻井敬太(2年)がオーバーヘッドでゴールを狙うシーンもあった。だが、細田学園もCB島村龍生(3年)とCB吉岡陸斗(3年)を中心にゴール前で譲らない。攻撃面でも滝澤のクロスやヘッド、こぼれ球を狙ったMF田端優作(2年)のシュートなど得点のチャンスも作り出していた。

 武南は後半4分、右サイドを松原とMF内田龍聖(3年)で崩し、ニアへ飛び込んだ櫻井が1タッチで狙うも枠右。細田学園も6分に速攻から金子がゴールへ迫る。武南はこの日、攻撃のキーマンでもある中村が守備に重きを置いていたため、ドリブルで侵入する回数が減少。相手に中央を閉じられていたため、縦パスもいつも以上に引っ掛かっていた。それでも、17分のMF森田颯(2年)投入で徐々に攻撃が好転し、23分には攻撃参加した中村が個で左サイドを攻略する。

 だが、細田学園はゴール前で集中した守りを継続。武南は松原や水野のシュートがわずかに枠を外れるなど1点が遠かった。逆に35分、我慢しながら守備とポゼッションを続けていた細田学園がビッグチャンスを迎える。MF小林京介(3年)が右サイドから一発で逆サイドへ展開。左SB五十嵐隆成(3年)がファーストタッチでDFと入れ替わり、クロスを上げる。これをエースFW金子がダイビングヘッド。だが、ボールはクロスバーを叩いた後、左ポストを弾く。さらにこぼれ球を繋ぎ、交代出場MFジャハンプールラミーン(3年)が右足を振り抜くが、これは再びクロスバーをヒットした。

 細田学園は直後にも敵陣での奪い返しからPAの金子へラストパスが通るが、飛び出した武南GK前島拓実(1年)がキャッチ。紙一重の勝負となった伝統校と新鋭との対決を制したのは、武南だった。後半40分、武南は敵陣中央で相手の小さなクリアを拾った重信が左前方の櫻井へはたく。そして、背番号9がDFとの1対1から縦へ持ち出し、左足一閃。強烈な一撃がニア上へ突き刺さり、決勝点となった。

 このまま試合終了。武南の選手たちは白星を喜んだものの、緊張とスリッピーなピッチで自分たちらしいサッカーを表現できなかったことを悔しがる。中村は「もっともっと見せられると思うし、この一週間で修正していきたい。ここ15年(選手権に)出れていない。自分たちの代で出たいと思うし、テレビとかで見てくれる人や親とかにも楽しいサッカーを見せられるようにしていきたい」と誓う。

 名将・大山照人前監督の下で選手権優勝1回、同準優勝1回、3位3回など輝かしい歴史を築いた武南は、内野監督就任4年目。サイドからのワンツーやクロスによる崩しといった良さを踏襲しながら、よりじっくりとボールを保持し、遊び心やアイディアも含めた多彩な攻撃サッカーを目指してきた。

「(周囲から)そんなサッカーやっていたらダメだよと言われたこともあるし、キレイにやっていたらダメだよと。(それでも、)やっぱり武南のスタイルはちゃんと確立していきたい」(内野監督)。選手権は06年度を最後に全国から遠ざかっているが、勝ち急ぐのではなく、突き詰めてきた「武南のスタイル」で勝つこと。課題を修正し、ここからの戦いで自分たちのサッカーをより表現して、第100回の選手権出場を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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