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指揮官との“再会”でさらなる成長を遂げたヴェルディ育ちのアタッカー。北越MF堀野辺空は右サイドで逞しく輝く

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右サイドでドリブル勝負に挑む北越高のアタッカー、MF堀野辺空(左)

[11.3 選手権新潟県予選準決勝 上越高 1-1(PK3-5) 北越高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 上手くて、走れる。指揮官も名指しで成長を口にするテクニシャンは、攻守に高い貢献度を1試合通じて披露できるハードワーカーでもある。

「自分は結構体力があるので、最後に相手の足が止まってきた時に、自分の持ち味のドリブルで突っかけたりと、足元の技術と走力でチームに貢献できたらなと思います」。北越高の右サイドを縦横無尽に駆けるアタッカー。MF堀野辺空(2年=東京ヴェルディジュニアユース出身)のチームにおける存在感が、日に日に高まっている。

「流れを崩さないように、基本はパスを考えながら、どこか相手が嫌なタイミングで自分がタメを作ったり、仕掛けたりできたらいいなと思っています」。前半から堀野辺は右サイドで時間を作る。パスワークに加わったかと思えば、自らドリブルで勝負するシーンも。20分には右SB鈴木洸聖(3年)のパスを受けると、巧みなループシュートにトライ。ここは相手GKのファインセーブに阻まれたものの、惜しいチャンスを作り出す。

 後半も、足が落ちない。13分には優しいパスでMF五十嵐暉(3年)を走らせ、FW高橋航輝(1年)が右ポストにぶつけた決定機を演出すると、以降も鈴木、五十嵐とのトライアングルで連携を築き、右サイドから鋭いクロスを上げ続ける。

 セットプレーから先制したものの、終盤には逆にセットプレーから失点したが、堀野辺は冷静に思考を巡らせていた。「先制したのは良かったのに、そこから全体的にダレてしまったことで、『失点しそうだな』という感じはしたんですけど、失点した後にも焦らずできたので良かったと思います。自分たちも去年の秋地区の大会で負けてから、ずっと『チャレンジャー精神でやろう』と思っていたんですけど、ちょっと飲まれてしまったかなとも思います」。追い付かれたことで、改めて自分たちの立ち位置と、サッカーを楽しむ心を取り戻す。

 延長後半7分。堀野辺に千載一遇の決定機が訪れる。途中出場のDF布川楽生(3年)が右クロスを上げると、こちらも後半からピッチに入ったFW林叶磨(2年)が残したボールを堀野辺は巧みにコントロール。マーカーを華麗に外して打ち込んだシュートは、しかし相手GKのファインセーブに阻まれてしまう。「あれは決めたかったです。ナイスキーパーということで(笑)」。飄々とした話し方にも個性が滲む。

 もつれ込んだPK戦では、3人目のキッカーとして登場。左上の凄まじいコースに、豪快なシュートを叩き込む。同級生のGK内田智也(2年)もきっちり相手の1人目をストップして、白熱の好勝負を制した北越。その中でも「堀野辺空はかなりこのトーナメントで伸びてきているんじゃないかなと。非常に良いプレーヤーなので、自信を付けているんじゃないかなと思いますね」と荒瀬陽介監督も評価を口にした11番は、チームの勝利にきっちりと貢献してみせた。

 神奈川県出身の堀野辺が、この学校を選んだのは指揮官の影響が大きいという。「小学生の頃に荒瀬監督にスクールで教えてもらっていたんですけど、北越が青森山田にインターハイで勝ったじゃないですか。それで気になって調べていたら、監督がちょうど荒瀬監督だったので、『ここに行きたいな』と思って連絡して、獲ってもらいました。監督は良い人だなあというのと、サッカーが上手かったので、『この人のところに行ったらもっと上手くなれるかな』と思ったんです」。荒瀬監督との“再会”が、自分をひと回り大きくしてくれたことも。十分に実感している。

 中学時代は東京ヴェルディジュニアユースでプレー。ユースへの昇格を見送られ、新潟へとやってきているだけに、選手権で活躍して、自分の力を証明したい想いはもちろん小さくない。

「ユースには上がれなくて、高校サッカーで頑張るしかないなと思って、北越に来ました。プロになるならJユースの方が早いと思うんですけど、高校サッカーに来たからには選手権に出ないといろいろな人に見てもらえないですし、憧れていた舞台なので、絶対全国に行きたいです」。

 関東凱旋の機会はすぐそこまで迫っている。軽やかに、しなやかに、力強く。一見クールな堀野辺の秘めた情熱が解き放たれた時、北越の右サイドはピッチのどのエリアよりも、逞しく輝く。

(取材・文 土屋雅史)

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