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[MOM3682]奈良育英DF千田陽介(3年)_チーム支える“屋台骨”、大逆転Vアシストで結実のMVP

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奈良育英高DF千田陽介(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.14 選手権奈良県予選決勝 奈良育英高 2-1 五條高 橿原公苑陸上競技場]

 記念すべき第100回全国高校サッカー選手権の奈良大会において、最優秀選手賞が授与されたのは、奈良育英高のキャプテン・千田陽介(3年、奈良クラブジュニアユース出身)。彼の武器である精度の高い左足のキックは、10年ぶりの奈良育英の優勝を決める劇的な逆転ゴールをアシスト。103名の部員をまとめあげ、選手層の厚さから寄せられる大きな期待が重圧となっていたチームを勝利に導いた。

 奈良育英は、決勝戦の前半15分頃にはすでに主導権を持ち始めていたが得点には至らず、さらには主導権を持ち始めて間もない頃に失点し、50分以上ビハインドの状況だった。精神的にはかなり苦しい。

 梶村卓監督は、「昨年もリーグ優勝していたがベスト8に終わっていたので、精神的な部分が大きいのではないかと思い、メンタリティの部分の重要性は伝えてきた」という。梶村監督が今年2月に就任してからは、「普段の生活がピッチ内でのサッカーに繋がる」として、ピッチ外での行動を見直してきた。また、リーグ戦の終盤からは「精神的に大きな浮き沈みがあっては勝てない」とも伝えてきている。決勝でも「選手たちは精神的にきつかったと思うが、そういった行動の積み重ねから、今日の試合も戦い抜いてくれ、それが勝因となったと感じている。それができたのは間違いなく千田がいてくれたから。彼がいなければ、チームのこのまとまりはなかった」と、千田の日頃からの努力、そして決勝での活躍を讃えた。

 決勝弾のアシストは言わずもがなだが、苦しい時間帯にもチームを鼓舞し、終了のホイッスルが鳴ったと同時に喜びに泣き崩れたチームメイトたちに「最後まできちんとやろう」と声をかけて回る姿もあった。千田自身も溢れる思いがあったものの、「キャプテンなので、みんなにちゃんとやらさないと」と思い、自分の感情は抑え込んで表彰式が終わる最後まできちんとやり抜いた。

 表彰式後、「もうホッとしてしまったので、泣けないです」と笑った千田は、真面目な性格ゆえにこれまで「辛いと感じることは多かった」という。試合でもうまくいくばかりではなかったし、多い部員のピッチ外での行動まで管理するのは労を要する。「いろいろ大変だったけれど、それが今日報われた」と安堵した千田。安堵したのは束の間、「チームコンセプトは“全員攻撃・全員守備“だが、決勝戦ではそこにまだ甘さがあることも痛感したので、全国までにさらに磨き上げたい」と、次の試合へ気持ちを切り替えた。

 名門・奈良育英にとって10年ぶりの全国の舞台だ。決勝戦の立ち上がりのように相手に飲まれることなく「もっと落ち着いて、積み重ねてきた繋ぐサッカーを見せたい」(千田)。

(取材・文 前田カオリ)

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