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奈良育英が終盤の劇的2発で大逆転V! “分厚さ”דポリバレントさ”で鮮やかな選手層に…10年ぶりの選手権へ

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奈良育英高が10年ぶりの選手権へ

[11.14 選手権奈良県予選決勝 奈良育英高 2-1 五條高 橿原公苑陸上競技場]

 11月14日、第100回全国高校サッカー選手権奈良大会の決勝戦が奈良県立橿原公苑陸上競技場で行われた。決勝に勝ち進んできたのは、3年ぶりの決勝進出だった奈良育英高と前回大会準優勝の五條高。両校とも豊富な運動量とそれぞれの持つスタイルを示し、熱戦を繰り広げた。

 立ち上がりは、五條が得意のドリブルで相手陣内に攻め入り、多くチャンスを作り出す。なかなか得点に繋がらない時間が続いたが、前半24分、MF大石夢叶(3年)のCKにニアサイドにいたMF幸田愛流(3年)が頭を合わせて後方にそらし、先制。奈良育英は後方からのビルドアップでボールを繋いで徐々に主導権を握り始めていたが、五條のプレッシングも強く、前線にボールを収めることができない。五條が1点をリードして、試合を折り返した。

 後半も拮抗した試合が続いたが、終盤になるにつれ、奈良育英が前線まで繋げる機会が増え始める。時間が残り少なくなってきた後半36分、奈良育英のDF三間龍之介(3年)のクロスをゴール前中央で受けたFW山尾星翔(3年)が右足を振り抜き、ゴール。残り少なくなった時間でゲームを振り出しにした。

 後半アディショナルタイムの表示は、4分。このまま延長戦突入かと思われた4分過ぎ、DF千田陽介(3年)が蹴った低めの弾道のCKにDF瀧陽向(3年)が頭を合わせ、勝ち越し。終盤に劇的な2ゴールを奪った奈良育英が、10年ぶりに奈良の頂点に立った。

 終了間際まで目の前にあった優勝を逃した五條。吉岡一也監督も、「いつもは負けて悔しい、次は必ず勝ってやるという気持ちが湧き上がってくるけれど、今日はそのような負けん気も出てこない」ほどに、肩を落としていた。「残り時間10分ほどのところで、守りに入ってしまったことが悔やまれてならない」という。それでも「選手たちがみんなで一つになって戦ってくれていた。なかなか気持ちも切り替えにくいかもしれないけれど」と前置きしながら、残されたプリンスリーグ関西の参入戦に臨む。

 優勝した奈良育英の今年の強みは、選手層の厚さ。同点弾をアシストした三間、同点弾を挙げた山尾、逆転弾を挙げた瀧、いずれも交代出場した選手だった。今年の奈良育英は、試合ごとにスタートの選手が違う。交代で入ってくる選手たちも、スタートの選手から見劣りするような選手ではない。

 2年前の奈良県内で行われたU-16の大会には、部員数の多い奈良育英は2チームに分けて出場。その大会の決勝戦は、奈良育英vs奈良育英だった。その決勝まで勝ち上がってきたメンバーたちが、現在の3年生である。県内でも今年の奈良育英の層の厚さは認知されていて、「その分、選手たちもいろいろと言われることもあっただろうし、プレッシャーはあっただろうと思う」と語ったのは、梶村卓監督。梶村監督自身も就任1年目で、そのような世代を受け持つプレッシャーもあったが、対戦相手やどのような試合を展開したいかによって、的確にスターティングメンバーを決め、奈良県リーグ1部の優勝と、10年ぶりの選手権予選の優勝を勝ち取った。

 さらに梶村監督は、選手たちのポテンシャルをさらに引き出すべく、それぞれの特性を見ながら複数のポジションをこなせる選手をこの1年で育ててきた。後方からのビルドアップが持ち味の奈良育英だが、CBに入れる選手は本職としている選手だけではなく、試合に応じて選ぶことができる。厚い選手層をさらに厚くしてきたことが、3年ぶりの決勝と10年ぶりの頂点にたどり着く要因ともなった。

 梶村監督は「積み重ねてきたことを発揮してくれた」と選手たちを称えたが、それでもまだ「もう少し相手陣内でのボールの繋ぐこともできたと感じている。全国の舞台に向けて、いろいろと改善していかなければいけない」という。

 奈良育英もまた、プリンスリーグ関西の参入戦に出場する。「これまでなかなか練習試合をすることもできなかったので、全国大会を前に、とても良い機会となる」(梶村監督)。これからさらに磨きをかけ、10年ぶりの舞台で名門・奈良育英のサッカーを披露する。

(取材・文 前田カオリ)
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