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「攻撃は一瞬」「守備は無失点」。ライバル対決制した鹿島学園が48番目の代表校に

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48番目の代表校の座に輝いた鹿島学園高イレブン

[12.5 選手権茨城県予選決勝 鹿島学園高 1-0 明秀日立高]

「攻撃は一瞬」「守備は無失点」。2つのテーマを表現した鹿島学園が48番目の代表校に――。第100回全国高校サッカー選手権茨城県予選決勝が5日に行われ、鹿島学園高明秀日立高が対戦。鹿島学園が1-0で勝ち、2年連続10回目の全国大会出場を決めた。これで第100回選手権の出場48校が決定。全国大会の組み合わせはすでに決まっており、鹿島学園は12月31日の2回戦で高松商高(香川)と初戦を戦う。

 最後の代表校の座を鹿島学園が獲得した。4年連続決勝で顔を合わせたライバル対決は、先に鹿島学園がチャンスを作る。前半9分、MF山口永遠(3年)の左FKからFW上野光永(3年)が決定的なヘッドを放つが、明秀日立の岡山内定GK谷口璃成(3年)の正面。鹿島学園はこの日、失点しないことを優先して普段よりも重心を後ろに置きながら、ボールを動かせた際には2年生の注目MF林結人やU-16日本代表候補MF櫻井稜(2年)の仕掛けを交えてゴールを目指した。

 一方の明秀日立はこの日圧倒的な高さを見せ続けたCB長谷川皓哉(3年)の縦パス、対角のキックを起点に右MF山田翔遥(3年)の仕掛けやクロスからゴール前のシーンを作り出す。そして、コンビネーションからMF村田楓太(2年)がミドルシュートを放った。

 だが、鹿島学園の林や櫻井を警戒しすぎた部分があったか、引き気味な相手を十分に押し込むことができない。待ち構える相手へのロングボールやクロスは跳ね返され、決定打を打ち込むことができないまま時間は経過した。

 後半、鹿島学園は林を起点とした攻撃や抜け出しからPAへ。明秀日立もCB木村海斗(3年)}が好カバーリングを見せるなど譲らない。その明秀日立は後半、サイドの高い位置を取って15分に連続クロス。18分には長谷川のフィードのこぼれを繋ぎ、交代出場FW山崎翔太(3年)の右足シュートが左ポストをかすめる。

 鹿島学園は22分にベンチスタートの10番MF鈴木仁也(3年)を投入。中軸がピッチに入ったことで一つ活力を得た鹿島学園に対し、明秀日立は左MF中沢駿斗主将(3年)のクロス、シュートなどで相手の守りにプレッシャーをかける。だが、鹿島学園の鈴木雅人監督が「真ん中と後ろが締められたことが良い意味で流れが出たと思います」と振り返ったように、この日の鹿島学園の守りはほとんど隙を見せなかった。

 左SB渕伸平主将(3年)は「自分たちは失点多いということは分かっていたので、後ろのラインの上げ下げだったりを意識して無失点で行くことは決めていました。明秀にはインターハイ、リーグ戦含めて大量失点しているので、正直無失点で行けるとは思っていなかったんですけれども……」と語っていたが、準決勝での3失点やこれまでから改善して守り続けたこと、また攻撃のテーマである「一瞬」が終盤の決勝点に繋がった。

 後半32分、鹿島学園は鈴木が右サイドからロングスロー。ニアのDFの頭上を越えたボールをFW松村尚樹(3年)がゴールを背にした状態でコントロールする。そして、ターンしながら左足一閃。これがゴール左へ突き刺さった。渕は「『攻撃は一瞬』『勝負を左右するのは一瞬』っていつも(鈴木)監督から言われているので、その一瞬で松村が決めてくれたので良かったと思います」。「一瞬」を逃さなかった鹿島学園が勝利へ近づいた。

 明秀日立は元FWの長谷川を前線へ上げて反撃。だが、前線へのロングボールやロングスローは、鹿島学園のCB佐々木輝大(3年)とCB杉山諒(3年)の両DFに跳ね返されるなどゴールに近づくことができない。明秀日立の萬場努監督は「勝負に徹することは鹿島学園の方が上でした」。大一番で守備からゲームを運び、セットプレーからの「一瞬」で決めた鹿島学園がライバル対決を制した。

 他の代表校に比べると、半月以上遅れての全国大会出場権獲得。渕は「最後の48校目で一番注目されるという点ではポジティブに捉えていたので、遅れた部分も全員で意識高め合って優勝できたので良かった」と頷く。特にライバル相手の無失点勝利は選手たちにとって大きな自信になったようだ。そして、主将はコロナ禍でサポートしてくれた人々や応援してくれた人々に感謝し、「(全国大会では)優勝できる可能性は秘めていると思う。少しでもレベルアップして臨みたいです」と力を込めた。

 鹿島学園の鈴木監督は第100回の選手権に臨む選手たちに「この限られた時間と環境の中でこういうチャンスを頂いたので、精一杯やってもらいたいなと。それだけですね」と期待。48番目の代表校は感謝の思いと、野心も持って精一杯選手権を戦う。

(取材・文 吉田太郎)
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