beacon

代表でも自分がチームを引っ張っていく。DF田中隼人は“先輩との再会”も糧に飛躍の2022年へ向かう

このエントリーをはてなブックマークに追加

U-18日本代表のディフェンスリーダー、DF田中隼人(柏U-18)

[12.19 IBARAKI Next Generation Match 2021 決勝 U-18日本代表 1-2 U-20関東大学リーグ選抜 ひたちなか]

 188センチの長身に左利きという“高スペック”が、それだけで周囲の目を惹く大きな武器であることは間違いない。それでも、そのポテンシャルだけで勝負するような選手ではないことも、プレーを見れば一目瞭然。課題も明確に捉え、克服するための努力を重ねられる才能も十分に持ち合わせている。

「プロでは1シーズン目からスタメンを奪える選手になりたいですし、代表チームでは来年にU-19のアジア予選があるので、そこに向けて自分がチームを引っ張っていくという想いでやっていきたいと思っています」。

 U-18日本代表のディフェンスリーダー。DF田中隼人(柏レイソルU-18 3年)は高いレベルで経験した数々の手応えを携えて、飛躍の2022年へと力強く歩み出す。

「U-20W杯まではあと1年半ぐらいしかないということは監督からも言われていましたし、それを理解した上でこの大会で優勝するというのは全員が意識していたことですし、まずは来年のU-19のアジア予選を意識して、全員が臨んでいました」。年内最後の活動となったU-18日本代表。主軸としての活躍が期待されている田中にとっても、世界への挑戦を念頭に置きながら、高い意欲を持って合宿へと臨んでいた。

 自然と課題が口を衝くのも、向上心の表れ。「守備のところで課題があって、ボールサイドに行っているのに、ボールが取れなかったり、逆サイドに簡単に展開されてしまったり、球際の甘さも結構出て、昨日の2失点も凌げた失点だったと思います」。この日はU-20関東大学リーグ選抜を無失点に抑えた前半だけの出場だったが、やはり後半だけの出場で2失点を喫した前日の鹿島アントラーズユース戦を引き合いに出すなど、今回の活動を通した反省点もしっかりと見つめている。

 もちろん収穫もあった。今シーズンの中盤戦を越えたあたりから、以前にも増してトライする回数も、成功する回数も格段に増えた“縦パス”への意識は、代表でも十分に通用したという。「5バックのレイソルと違って、代表になると4-4-2なので、あまり縦パスを入れるチャンスはないですけど、そこで自分の特徴が変わるわけでもないので、数は減っていながらも、ロングキックや縦パスを入れられるという手応えは代表になってもありますし、自分の強みかなと思います」。システム上の関係もあり、中間ポジションへ付けるパスは多くなかったものの、ここぞというシーンではグサリと縦に打ち込むシーンも。左足から放たれる、糸を引くようなボールは健在だ。

 楽しみにしていた“再会”も実現した。相手のFWには、去年まで柏U-18で一緒にプレーしていた清水勇貴(順天堂大1年)が。ポジション的にマッチアップするシーンも多く、「勇貴とバチバチやっていたんですけど、特に負けられないと思っていたので、行っちゃいました(笑)」と自ら振り返った激しいコンタクトのシーンでは、田中にイエローカードが提示される一幕も。

「その瞬間は勇貴も『足首行った!』とか言っていたんですけど、さっきの閉会式で『ごめん』と謝っても、『ああ、全然心配しないで』って(笑)。やっぱり優しいので、良かったです。卒団以来、1年ぶりに会いました」。“先輩とのバチバチ”も十分に楽しんだ田中の笑顔には、充実感も垣間見えた。

 今シーズンは所属チームの指揮官も代わり、今までの柏U-18ではなかなか見られなかったシステムにも挑戦。酒井直樹監督と藤田優人コーチの元で、新たなサッカーの楽しさにも気付いたという。「最初の方は連敗スタートで、勝ちもなくて、失点も毎試合していて、そこは守備陣の責任だと思っていました。でも、夏ぐらいから5バックの良さを全員が分かってきて、守備の仕方が明確になりましたし、5バックの真ん中だと“潰す”役割が結構多かったので、そういう意味では自分の課題でもあった“潰す”部分は伸びたと感じています。あとは、酒井監督と藤田コーチになって、今までにはなかった走りの部分が強化されたことで、高体連に近いようなユースチームになれたことが、今年のみんなの成長にも繋がったので、アカデミーで過ごしてきた中で一番良い年になりました」。
 
 来季はプロ1年目。既にルヴァンカップでトップチームデビューを果たしているとはいえ、強烈なライバルたちとポジションを争うことになる。「レイソルだと上島(拓巳)くんだったり、(古賀)太陽くん、大南(拓磨)さんと凄いライバルがたくさんいますけど、自分には自分なりの特徴もあるので、太陽くんや上島くんの良さを盗みつつ、自分にしかない武器の縦パスもさらに磨き上げていきたいです」。

 日立台が育んだ、スケール感抜群のレフティセンターバック。田中の才能がJリーグのピッチで解き放たれる日も、そう遠くなさそうだ。

(取材・文 土屋雅史)

TOP