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[横山杯]前橋育英が2連覇。選手権登録外の下級生が悔しさを力に変え、プレミア初参戦の来季へ弾み

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「全国ユース招待サッカー大会〜YOKOYAMA MEMORIAL CUP〜」優勝を喜ぶ前橋育英高

[12.27 YOKOYAMA MEMORIAL CUP決勝 帝京高 1-3 前橋育英高 若松運動場]

 冬の「サッカータウン波崎」で強豪24校が新シーズンへ向けて力を磨く「全国ユース招待サッカー大会〜YOKOYAMA MEMORIAL CUP〜」は27日午後、決勝戦を行い、前橋育英高(群馬)が2連覇を達成した。帝京高(東京)と対戦した前橋育英は大会MVPに輝いたMF井上駿也真(2年)の2ゴールとFW青柳龍次郎(2年)の得点によって3-1で勝利。プレミアリーグ初参戦の来季へ向けて弾みをつけている。

 前橋育英は28日開幕の全国高校選手権に出場するMF徳永涼(2年)やMF根津元輝(2年)、MF小池直矢(2年)、FW高足善(2年)、GK雨野颯真(1年)が不在。それでも、チームリーダーの右SB磯村陽軌(2年)が「選手権に自分行けなかったけれど、みんな悔しい気持ちを持っていて、(選手権メンバーや対戦校に)負けられないという気持ちが出た試合だったと思います」と振り返ったように、悔しさを力に変えて目標の優勝を勝ち取った。

 4-4-2システムの前橋育英はGK小泉奨英(2年)、4バックは右SB磯村、CB斉藤航汰(2年)、CB齋藤駿(2年)、左SB山内恭輔(2年)。中盤は唯一選手権登録メンバーの杉山陽太(2年)、小川雄平(2年)のダブルボランチ、右SH山田皓生(2年)、左SH井上、2トップは青柳と山本颯太(2年)がコンビを組んだ。

 一方の帝京は、1年時から公式戦経験豊富な注目世代。今大会は怪我で不在の選手が多かったものの、決勝へ駒を進めてきた。4-5-1システムの先発はGK桑野瑠汐(2年)、右SB島貫琢土(2年)、CB大田知輝(2年)、CB田畑勲(2年)、左SB入江羚介(2年)。中盤中央に押川優希(2年)と田中遥稀(2年)が入り、右SH橋本マリーク識史(2年)、左SH山下凜(2年)、トップ下が伊藤聡太(2年)、そして齊藤慈斗(2年)が1トップを務めた。

 ともに準決勝終了から約2時間で迎えた決勝戦。3日連続2試合というスケジュールの影響もあってか、互いにやや動きが重い印象の立ち上がりだった。その中で前橋育英が相手の間延びした守備網を突く形で仕掛けて先制する。2分、左中間へのスルーパスから山本が左足シュート。ファーポストを叩いたボールに井上が反応し、先制点を挙げた。さらに10分、右サイドから仕掛け、最後はこぼれ球を再び井上が右足でゴール。序盤で早くも2点のリードを得た。

 帝京は慌てて攻めようとして奪い返されてしまい、押し込まれる時間の連続。0-2となってからようやく落ち着いてボールを動かせるようになった。21分には齊藤とのワンツーから伊藤が抜け出してフィニッシュ。だが、GK小泉に阻まれて追撃することができない。

 前橋育英は24分にカウンターから山本が独走。だが、懸命に追いついた大田のタックルによって前半3点目とはならなかった。帝京は押川や田中が上手く顔を出してボールに絡むなど“帝京らしい”パスワークによって相手のプレッシャーを打開。テンポの良い攻撃を続けたが、前橋育英は指揮を執った櫻井勉コーチが「(ボランチの2人をはじめ)相手に厳しく寄せに行ってくれた」と感謝したように、ゴール前に侵入しようとする相手選手に杉山や小川、DFラインの選手たちが素早く、厳しく対応する。各選手が球際でバチバチと戦い続け、守備から盛り返して見せた。

 帝京は後半3分、クリアボールをロングスプリントで追いかけた齊藤が相手選手からインターセプト。ボールを繋ぎ、最後は伊藤が右足シュートを放つも枠を捉えることができない。その帝京は11分、島貫をDF梅木怜(2年)へチェンジ。直後の15分、前橋育英は左サイドから狭い局面を連続で打開すると、ラストパスがDFに当たって右ポストを叩く。こぼれ球を青柳が押し込み、3-0とした。

 前橋育英は17分、青柳をFW大久保帆人(2年)へスイッチ。帝京は接触プレーで負傷した伊藤に代えてMF藤崎巧士(2年)をピッチへ送り出す。前橋育英は山内や山田らが正確にボールを前進させ、前線では山本が縦への推進力を発揮。また、ディフェンス面でも斉藤航と齋藤駿が前への強さを示すなど相手に追撃を許さない。帝京は31分、藤崎が左足アウトにかけたファインショットを決めたが、2点目を奪うことはできなかった。

 前橋育英は2連覇。昨年は現主将のCB桑子流空(3年)やFW守屋練太郎(3年)、左SB岩立祥汰(3年)、FW渡邊亮平(3年)が優勝を経験し、トップチームでの活躍に繋げている。櫻井コーチは「(横山杯は)トップの確認になる。トップへ行くための土壌を耕してくれる」。今年度の選手権出場のチャンスを掴むことができなかった下級生たちだが、落ち込んでいる暇はない。来年、前橋育英はプレミアリーグ初参戦。今年以上のチームになって来年4月の開幕を迎えなければならないことを理解する選手たちは、高いモチベーションを持って横山杯に挑み、櫻井コーチも認める闘志でライバルたちを上回った。

 磯村は「全員なんですけれども『やってやろう』と言う気持ちが強い。インターハイ、選手権はもちろんですし、プレミアも出るだけでなくて結果を残すことが大事。全て優勝できるように頑張ります。(今大会は苦しい展開の試合が多かったが、)そこで踏ん張れたのは自分たちの強みだと思うし、来年に向けても良い武器を持ったと思います。自信になる大会になりました」。選手権を戦う仲間たちに負けないような努力をして、先輩たち以上に強いチームとなって新シーズンを迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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