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古巣相手に華麗なアシスト!帝京MF土本瑶留が激しいレギュラー争いに堂々と名乗りを上げる

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古巣相手に1アシストを記録した帝京高MF土本瑶留

[2.5 LIGA KANTO U-18 帝京高 1-1 横浜FCユース 帝京北千住G]

 古巣相手の一戦に、心が奮い立たないはずがない。自分の選んだ道が正しかったと証明するため、カナリア色のユニフォームを纏って、ピッチへと歩みを進めていく。「ドキドキしましたね。相手もみんな知っている先輩たちだったので、試合前は結構緊張したんですけど、いざ始まってみると楽しさの方が勝ったので、良かったです」。

 帝京高(東京)のハイレベルなニューカマー。MF土本瑶留(1年=横浜FCジュニアユース出身)はかつてのチームメイトたちを向こうに回し、確かな成長の跡を見せ付けることに成功したと言っていいだろう。

 ジュニアユース時代は横浜FCでプレーしていた土本は、「声が掛かった高校の中で、一番高いレベルでできると思って練習に参加させていただいて、雰囲気も良くて、プレーの質も高くて、『この高校に進めば将来の可能性が高まるかな』と思ったので」、帝京へと進学することを決意する。

 レベルの高い仲間たちと切磋琢磨を繰り返した1年間。「いろいろな個性のある選手がたくさんいるので、凄くプレーしていても楽しいです」という日常を過ごし、少しずつ自信を付けて迎えた“古巣対決”。楽しみと不安が混じり合う中で、この日の一戦を迎えていた。

 スタメンに指名された土本は、14番を背負って躍動する。「結構ガツガツ来ることは自分の中で覚えていたので、相手の間合いに入る前に、1つ横にずらしたりというのは意識しながらプレーしました」。前半はチームもなかなか攻撃の形が作れなかったが、後半は一転してスムーズなアタックを連発。土本がうまくギャップに潜って、前進する回数も格段に増えていく。

 とりわけ目を惹いたのは、前線に入ったFW齊藤慈斗(2年)との好連携。「慈斗くんを孤立させて、1人で頑張らせないように、距離感を常に意識して、慈斗くんにボールが入ったら、なるべく早くサポートに行けるようにというのは考えています。凄くやりやすいですし、時間を作ってくれるので、本当に信用しています」と土本が話せば、「タマルは前を向いてどんどん仕掛けてくれますし、自分が動いたところにしっかり出してくれるので、やりやすいです」と齊藤も同じフィーリングを口にする。

 2人のコンビネーションが結実したのは、1点のビハインドを追い掛ける後半31分。ペナルティエリア内でルーズボールを拾った土本は、一瞬で状況を判断する。「最後まで相手を見ていたら、グッと一瞬動いたので、そこで慈斗くんに出せば決めてくれるかなと。『足が残るかな』と思ったので、浮き球で出しました」。軽く浮かせたチップキックのパスが齊藤の足元に届くと、左足で振り抜かれたボールがゴールネットを揺らす。

「パスが来るとは思わなくて、『シュートを打つのかな』と感じた」とスコアラーの齊藤も騙されたような、クイックモーションでのラストパス。「後半で守備もハマってきて、自分たちの攻撃の時間も増えたので、のびのびプレーできた感じはありますね」と振り返る1年生アタッカーの才能が、勝手知ったる“先輩たち”の前で確かに煌めいた。

 参考にしている選手を聞くと、そのプレースタイルにも納得が行く。「自分はチアゴ・アルカンタラを参考にしています。試合の流れを理解しながら、パスを付けるところや自分でボールを持つところの判断のレベルが違うなと、見ていて感じますね」。ドリブル。ショートパス。ロングパス。この80分間でも工夫しながら、プレーを使い分けようとする意識は十分に見て取れた。

 都内屈指のタレント集団と言っていい今の帝京で、もちろん試合に出ることも簡単ではないが、そんなことは百も承知。その上で、さらなるステップアップを狙う意欲も頼もしい。「プレーに波がないように、常に良いプレーを出して、試合に絡んでいけるようにしたいですし、プリンスリーグで試合に出て、得点やアシストで結果を残したいです」。

 横浜FC育ちのキレキレ系アタッカー。『瑶留=たまる』という個性的な名前とともに、この男の存在を知っておいて損はないだろう。

(取材・文 土屋雅史)

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