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仙台が千葉でキャンプ開始「東日本で活動することに意味がある」

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 ベガルタ仙台は4日、東日本大震災の影響でホームの練習施設が思うように使えないため、千葉・市原市内でキャンプをスタートさせた。初日は午前と午後の2部練習が行われ、午前中はフットパーク姉崎でフィジカルトレーニングを中心に行った。怪我のため別メニューだったFW中原貴之を含めたトップチーム全29選手が約1時間半、汗を流した。

 チームは3月29日に仙台市内で全体練習を再開させたが、ピッチ状態が悪い中で行っていた。それだけに青々と茂った芝生の感触、そしてサッカーができる喜びを感じながら体を動かしたという。GK林卓人は「久々に芝生の上でやれたので、そういう喜びをかみしめながらやりました」。主将のFW柳沢敦は「被災地の環境から比べると、僕たちはぜいたくな環境でやれています。今、ここでやっているのは再開するJリーグのため。そして被災地のみなさんのためにここでしっかり準備をしていきたいです」と意気込みを語った。

 キャンプは4日から12日まで千葉・市原市で、その後は22日まで埼玉県内で行い、23日のリーグ再開・川崎F戦(等々力)に備える。当初は仙台を離れることにチーム内で賛否両論があったという。手倉森誠監督は「選手からも『キャンプで外に出るのはどうなのか』という声はあった。地元で苦労してでも練習して、ボランティア活動もやって行きたいという選手が半分以上いた」と選手の揺れる想いを代弁した。

 しかし、ライフラインがまだ完全に復旧していないうえ、プロのサッカー選手である以上、まずはコンディションを整えてしっかりとしたプレーをすることが仕事・責任だと判断。いい試合を見せることが被災地の人々を勇気づけると考え、様々な思いを抱えながらも、3日に仙台を離れた。バズで5時間以上かけてキャンプ地入りした。

 千葉や埼玉を選んだのには深い理由がある。震災後、神戸の和田昌裕監督や新潟の黒崎久志監督、湘南の反町康治監督やライバルの山形からも連絡があり、練習施設の貸与や選手の練習受け入れを申し出てくれた。また、2月にキャンプを行った宮崎からも支援の申し入れがあったそうだが、あえて断った。

「今回の地震で東北だけでなく、東日本がダメージを受けた。自分たちが東日本で活動することに意味があるかなと思って、ここを選んだ」と手倉森監督は言う。仙台は離れても、少しでも“故郷”の近くで-という思いがあった。

 この期間を利用して再び、戦う体を作り上げる。環境を見ると、他クラブと比べて大きなハンデとなるが、指揮官は「いったんリーグ戦が中断して、もう1回上に持ってくる作業にはかなりパワーがいる。2月に九州でやっていたキャンプ以上の気持ちが必要だという話をした。出さなければいけないパワーはそれ以上だと。それをやったとき、身に付くものはたくさんあるし、地元で苦しみ、悲しみに覆われている人たちの思いを背負ってやる以上、自分たちはさらに成長し、強くならないといけない」と選手に奮起するようゲキを飛ばした。


「当初はひとケタ順位を目指そうと話していたけど、こういった中でその目標をしっかりクリアしたいと思うのと同時に、最後まで懸命に戦い抜く気持ちを持って、1シーズン戦いたいと思っている。その結果、クラブにとってこれまでにない成績を残せれば、仙台のエネルギーにもなる。今回の災害もだれも予測できない惨事になった。今年のJリーグもどうなるか分からないと信じて、あわよくばという戦法でやっていきたい」

 J1復帰1年目の昨季は14位だっため、今季もまず残留が最優先で、そのうえでひとケタ順位を目標にしていたが、被災者を少しでも勇気づけるため、確実に目標を成し遂げるという強い決意をのぞかせた手倉森監督。できれば、優勝争い、ACL出場争いをして明るい話題を届けたい-。選手もそんな想いを抱いている。ベガルタイレブンは被災地の星として戦い、必ずや“希望”をもたらす覚悟だ。

[写真]午前練習でボール回しをする仙台イレブン。中央は主将の柳沢。被災地の希望の星となる

(取材・文 近藤安弘)

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