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ラファエル2発&東2演出、大宮が柏に“下克上”。「甲府が勝って、危機感があった」

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[9.25 J1第27節 柏1-3大宮 柏]

 大宮アルディージャがJ1残留に向けて大きな白星をつかんだ。勝てば首位奪回となるため気合十分だった柏を3-1で撃破。まさに“下克上”を成し遂げて3試合ぶりの白星をつかみ、勝ち点を32に伸ばして、浦和を抜いて13位に浮上した。

 導いたのは“帰ってきたウルトラマン”ならぬ、帰ってきたエースFWラファエルとU-22日本代表MF東慶悟だった。この日はいつもの2トップではなく、ラファエルの1トップに、東のトップ下という新布陣で挑んだが、これが機能した。ラファエルは左足首負傷で前節のC大阪戦を欠場したが、リーグ戦2試合ぶりに先発復帰し、先制弾と決勝弾と2ゴールの活躍を見せた。

「このゲームの重要性は理解していた。ガンバが負けたので、レイソルが首位に立てるというゲームだったことは分かっていた。だが、我々がはやるべきことをやった。2ゴール取れたことは嬉しい。残り試合が少ないので、我々には勝ち点3は大きなものになった」

 首位獲りへ気負う相手の出鼻を、いきなりエースが叩いた。前半5分の右CKのチャンス。MF金久保順のキックを中央でDF金英權がすらし、ファーサイドのラファエルが華麗に右足ボレー。これがチームとして8月27日以来の磐田戦以来リーグ戦3試合ぶり、ナビスコ杯を入れると公式戦4試合ぶりのゴールとなり、1-0リードに導いた。

 そして後半11分には、U-22日本代表に参加していたため、リーグ戦2試合ぶりの復帰となった東慶悟の冷静な判断から、ラファエルの2点目が生まれた。ロングボールをラファエルが頭で落とし、これを東が拾う。前を向いてシュートが打てる状態でもあったが、「ゴールを狙っていたけど、チームの勝利に貢献したかった」という東はより確率の高い位置にいた後方のエースへパス。背番号10は右足できっちりと決めて2-0とリードを広げた。

 ラファエルはこの日の2得点で今季通算8得点に。残留争いの中、エースらしい仕事を果たした形だが、2点目については「半分はケイゴ(東)のゴールといえるようなゴールだった。僕を見てくれて上手く落としてくれた」と自分のゴールよりも、東の落ち着いたプレーを高く評価した。

 東はラファエルへのアシストのほか、1点差に詰め寄られたあとの後半32分には、中央左付近でMF青木拓矢のパスを、ゴールに背を向けた状態ながら、右足のアウト気味の技ありパスでDFラインの裏に出し、その後の青木のドリブル独走からのチーム3点目をお膳立てした。

 1アシスト1起点と2点に絡む活躍を見せた東は「正直、甲府が(G大阪)勝って、勝ち点が詰まってきていた。危機感があって、勝たないといけないと思った。“2アシスト”できてよかった」。試合後は笑顔ではなく、安堵の表情を浮かべた。そこには、あの日の辛い出来事があった。

 大分時代の2009年、当時、東はルーキーだったが、リーグ戦23試合に出場。しかし、チームは残念がらJ2に降格した。18歳だった東も、言葉にはできない悔しさを味わった。今季から大宮に加入したが、ここでも残留を争う状態となった。前日、16位の甲府がG大阪に勝利し、大宮との勝ち点差を2まで詰め寄ってきた。結果、大宮は勝って32に伸ばし、差を再び5としたが、東には過去の経験もあり、並々ならぬ勝利への執念があった。

 浦和を抜いて13位に浮上したが、勝ち点差は14位の浦和と15位の新潟と共に3差、降格圏16位の甲府とも5差とまだまだ予断を許さない状態にある。それだけに、優勝を争う柏を下したことは大きな意味があるが、当然、これに満足していてはいけない。

「正直、もう降格したくない。1年目のとき大分で経験したけど、試合に出ている選手には責任がある。次のゲームにも勝って、どんどん上位を目指したい」

 東は言葉に力を込めた。次節は28日のナビスコ杯・浦和戦を挟んで、10月1日に最下位の福岡と対戦する。勝ち点差は17あるが、この日の広島戦に2-1勝利しており、楽観はできない。もちろん、手を抜くつもりはない。残留のためには取りこぼせない試合となるが、エースストライカーと降格の悔しさを知る若きアタッカーが帰ってきた大宮は、今季初の連勝をつかみに行く。

[写真]2得点を導いた東慶悟。さすがのプレーを随所に見せた

(取材・文 近藤安弘)

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