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“宝物”をいつまでも忘れないように…涙の川崎Fダミアンは余韻を噛み締める「この5年間、感謝の気持ちしかない」

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喜びに浸るFWレアンドロ・ダミアン

[12.9 天皇杯決勝 川崎F 0-0(PK8-7) 柏 国立]

 その立ち振る舞いは別れを予感させた。川崎フロンターレFWレアンドロ・ダミアンは優勝決定後、サポーターの前で挨拶をした。通訳の中山和也氏は言葉に詰まりながらダミアンの言葉を伝える。「サポーターの皆さん、本当にありがとうございました。選手、スタッフ、フロンターレにかかわるすべての皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。フロンターレのユニフォームを着てプレーできたことは人生の宝物です」。その言葉から最後を感じさせた。

 試合開始前にはゴール裏のサポーターに体を向け、礼をした。先発メンバーとしてピッチを躍動。後半32分に途中交代を告げられると、MF脇坂泰斗やDF山根視来がダミアンのところまで足を運んでハグ。ダミアンに代わって出場するFW小林悠も、その瞬間を忘れないように力強くダミアンとハグを交わした。ベンチに下がる間にも鬼木達監督を始め、仲間たちがダミアンに近寄り、労をねぎらっていた。

 激戦となった試合は延長戦でも決着つかず。PK戦も10人目までもつれ込む打ち合いとなった。ピッチの外で試合を見守ったダミアンも、優勝決定の瞬間は歓喜。その目には涙が光っていた。

 試合後、一息ついたダミアンは改めて優勝の喜びを語る。「チームの力を示すことができた。自分の心に刻まれるまたひとつ大きな試合になった」。そして、2019シーズンから戦ったJリーグという舞台に思いを馳せた。

「この5年間、フロンターレには感謝の気持ちしかない。本当に、何ひとつ自分が文句をつけるところはない。心からの感謝の気持ちでいっぱいです」

 言葉にすると別れが始まる。だからまだ具体的な去就を口にすることはなかった。それでもその瞬間を忘れないように、噛み締めるように、今はじっくりと優勝の余韻に浸っていた。

(取材・文 石川祐介)
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石川祐介
Text by 石川祐介

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