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[フットサルW杯2012]おめでとうソロモン、ありがとうソロモン

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 4年前、『おいおい、思い出づくりかよ…』と、絶句したことを覚えている。フットサルW杯2012ブラジル大会で、ソロモン諸島はブラジル代表に0-21と惨敗した。その2日前には日本代表も1-12と大敗していたが、肩を落としてロッカールームに下がって行った日本代表と、ソロモン諸島はまったく違う反応を見せた。ブラジル代表の英雄FPファルカンと、ピッチ上で記念撮影を始めたのである。マイナースポーツではあるが、世界最高の舞台だ。2分に1点以上のペースで得点を決められながら、記念撮影に臨んだ姿が、なんとなく残念だった。

 その後、彼らは日本に2-7で敗れ、ロシアにも2-31と記録的な敗戦を喫した。今後の数大会、ソロモン諸島を見ることはないのかな。そう思っていたが、彼らは2大会連続でW杯に勝ち進んできた。

 とはいえ、今大会も苦戦は続いた。初戦でロシアに0-16で敗れると、2戦目でもコロンビアに3-11と2試合連続で2桁失点を喫し、グループ最下位に沈んだ。ソロモン諸島が最終戦で対戦するグアテマラは、初戦でコロンビアに5-2で勝利していたこともあり、ソロモン諸島の2大会連続全敗は、濃厚だと思われた。しかし、9日に行われた試合で、彼らは意地を見せた。9分に先制を許したが、前半のうちに2点を挙げて逆転すると、後半も2点を加えて、グアテマラに4-3で競り勝ったのだ。

 この試合、多くの日本人メディアが注目していた。というのも、この試合の結果次第では、日本がラウンド16でウクライナと対戦するのか、スペインと対戦するのかが左右されたからだ。仮にソロモン諸島が敗戦、もしくは引き分けに終わっていれば、グアテマラがグループリーグを通過し、その結果、日本はスペインと対戦することになっていた。「不可能ではないが、勝利する確率は限りなく低い」とミゲル・ロドリゴ監督が認めるように、日本とスペインでは絶対的な力の差が、ある。ベスト8進出に、より現実的な相手は、間違いなくウクライナだった。

 当然、ソロモン諸島は3位争いのことなど考えず、この一戦に臨んでいただろう。試合を終えてディクソン監督は「この勝利は私たちの国にとって、非常に大きなものだ。なぜなら世界で最も小さな島国の一つが挙げた勝利なのだからね」と、喜びを語っている。グアテマラのFPジョゼ・ゴンザレスは「彼らからは1勝して帰るんだという強い意欲が滲み出ていた。素晴らしいプレーをしたと思うし、彼らは望んでいた結果を得ることができたね。僕らはとてもガッカリしているけど」と、肩を落とした。

 4年前、彼らは間違いなくお客さんだった。しかし、今回、彼らはロッカールームの中で勝者として記念写真を撮影することができた。

 かくして日本はラウンド16で、ウクライナ代表と対戦することが決まった。ミゲル監督も「現実的に勝敗を賭けて戦える」と、口にしている。4年前に対戦したソロモン諸島が与えてくれたベスト8進出のチャンスを、フットサル日本代表に生かしてほしい。チャレンジすれば、不可能はない。彼らはそんな姿勢も、日本代表に示してくれたのだから。

(取材・文 河合拓)

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