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[フットサルW杯2012] GK川原「1試合でも多く、この仲間と戦いたい」

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 過去のW杯で、誰よりも悔しい想いをしてきたのは、この男かもしれない。3大会連続で日本のゴールマウスを守るGK川原永光(名古屋オーシャンズ)のことだ。04年の初戦でパラグアイに4-5と逆転負けを喫したときも、第2戦で強烈なミドルシュートを叩き込まれたイタリア戦(0-5)の敗戦も、前回大会でブラジルに1-12と惨敗した時も、ゴールマウスには彼が立っていた。

 見たことのないような弾道が彼に向って飛んできたかと思えば、ゴールネットが揺らされる。当然、フットサルは個人競技ではない。それでも、ほとんど交代の機会もなく、相手のシュートと向かい合うGKが、孤独な戦いを強いられているのも間違いではないだろう。実際に川原自身も「どれだけ自分が止められるか。自分が全部止めたら、勝つことができる」と話していた。

 そんな中、迎えた3度目のW杯で、川原は目覚ましい活躍を続けている。「日本のGKは世界に通用しないと言われてきたけど、その評価を覆したい。日本のすべてのGKのためにも、頑張りたい」と、力を込めた。ブラジル戦を4失点で終えられたのも、ポルトガル戦が5失点で済んだのも、彼の力によるところは大きかった。いまや日本のGKは、世界でも有数と言えるだろう。

 その活躍もあり、日本代表は決勝トーナメント進出を決めた。国内で数々のタイトルを手にしてきた背番号1は、久しぶりに嬉しかったと振り返る。

「8年分の悔しい想いが一瞬でクリアーになりましたね。日本のFリーグ、プーマカップ、その後のアジア選手権に優勝しても、素直に喜べない自分がいて…。その中で、このW杯で予選を突破したことが本当にうれしかった。今まであきらめずに続けてきて、本当に良かったなと」

 新たな歴史の1ページを刻んだチームに、川原は更なる可能性を感じ取っている。決勝トーナメントという未知なる舞台に踏み出すが、「ここからは自分たちとの戦いになる」と、自分たちの積み上げた力を出し切ることが大切だと話す。

「どこが来ようが良いパフォーマンスを見せることができれば、僕らは勝てる。相手がスペインであっても、0.01%の隙があれば、そこに付け入ることのできるチームづくりをしてきましたし、そういう相手にどれだけできるか。次の試合以降の楽しみでもあります」

 これまでのW杯で悔しい想いを重ねたからこそ、良いパフォーマンスを見せることができているというGKは、「良い仲間、良いスタッフと巡り合えたから、(決勝T進出が)達成できたかなと思います」と言い、最後に「1試合でも多く、この仲間とやりたいですし、いろんな人がメールをくれるので、その期待に応えたいと僕らも思っています」と、続けた。

 多くの人の想いを背負う日本が世界に誇るGKは、さらなる活躍を誓った。

(取材・文 河合拓)

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